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退屈
診察台の上、親知らずを抜かれるのも、もう慣れたもので、最初の頃の「これからどうなってしまうのだろう」というドキドキ感も消えてしまって、抜いた後の退屈になるであろう時間のことばかりを考えていた。
初回は抜いた後は何も出来ないと思っていたので、大人しく布団の上に寝転がって、動画を見ていたりした。飲む唾全てが、血の味になり、果たしてこのまま治るのだろうか?と心配になったりしていたが、1週間も経てば、元通りにご飯を食べられるようになっていた。
前回はある程度どうなるか分かっていたので、お昼にナポリタンを作って食べようとしたのだけど、麻酔のせいで全く味がしなく、どこを噛んでいるかも分からず、美味しくなかったので、食べるのを止めてしまった。
そして今回もどうなるか分かっているので、家にいるのだけど、恐ろしく退屈なのだ。安静に過ごすことが、ここまで暇だと、いずれ年を取り、不自由になった時が更に恐ろしい。アニメを見たり、音楽を聴いたりしているのだけど、どこかつまらなく、こんなに天気の良い日に山に登れないのも悔しい。
妙な予定を入れず、晴れの日に山へ飛び出して行けたら、どれだけ楽しいだろうとうずうずしている。ここ数ヶ月、本当に会いたいのかもよく分からない女性たちと会い、品定めをされ、そして僕もしている。そんなことになんの意味があるのだろうか。ご機嫌取りをし、ご機嫌取りをされ、気まずい雰囲気を過ごすことになんの意味があるのだろう。
なんのために、あなたと一緒にいるのか。メリットがあるのか、なにか恩恵があるのか、僕はそんなことは考えないのだけど、好きになれそうにない人と会うのは苦痛だ。
なにか美味しいものを食べれば、その時は美味しいとは思うが、食欲を満たした後は、なんとなく虚無になる。こんなものが食べたかったのだろうかと。ただ欲を満たせればなんでも良かったのではないのだろうかと。
食欲すら満たせない現状、ゼリーを啜っている。舌の上に乗せると半分は何かが通るだけ、半分は甘く冷たく、そしてぶどうの味を感じる。