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E.T.

カメが好きだ。
できることならリクガメを飼ってみたい。
「飼いたいと思うなら飼ったらいいのに」
と言ってくれたひとがいた。
飼ってみたいなあ、と思うたび
彼女の整った横顔を思い出す。

この前、動物園に行ったら、
リクガメのぬいぐるみが
3000円で売っていた。
一瞬欲しいかも、と思ったけれど。
ふさふさとしたリクガメは不思議過ぎて
やっぱりこれは違うな、とやめた。

動物園にいたマンネンくんという
大きなリクガメは
カメラを向けたら
のっそりと歩き始めた。
おおー、と知らない子どもと喜んだ。

ずっと行ってみたかった園芸店に行った。
動物の置物たちのコーナーがあった。
HotAntというメーカーのもので
(多分どこの園芸店にもあるのだろう)、
手頃な値段でとても丁寧に作られている。
毛並みとか目とか見とれてしまう。
そこに、リクガメがいた。
ホシガメがずらりといて、
コガメとだけ書かれた小さなカメが
1300円で一匹だけいた。
こ、これは!
園芸店でこのカメだけ買った。

今、そのカメはパソコンの隣にいる。
開いていたい本に乗ってもらったりもする。
左目が特にかわいい。
と私は思うんだけどなあ。

「きもちわるい」(娘)、
「リアルすぎる。どかして」(夫)、
「…」(息子)、
家族はこんな反応だけど、
私はそんなことはない、と思っている。
とってもかわいい。
うるんだ目をしている。

台所のカウンターが定位置で、
カメの向きを変えながら家事をする。
まるでテレビを見ているかのようにすると、
その後ろ姿もすっごくいい。

横顔を見ていたら…
E.T.にちょっとだけ似ていると思った。

「この子の名前、E.T.にするわ」
と家族に言ってみる。
「ああ、ちょっと似てるかもね」と家族。

ただの置物ではあるのだけど、
今の私にとっては有難い存在。
とにかくE.T.をながめながら
ほっとしている。
ながめていると思うのだ。
おべっかとか、余計な気遣いとか、
できるだけやめよう、って。
甲羅を見ながら思う。

映画「E.T.」の感動シーンがあった。
泣きそうになった、
ってことだけ覚えていて。
でも具体的なことは忘れている。
どこで感動したんだっけ?

うちのE.T.もコタツの上において、
一緒にE.T.を見たい。
そんな日をつくろうと思う。
置物だけど、泣きたくなるほど
E.T.はかわいい。