E.T.
カメが好きだ。
できることならリクガメを飼ってみたい。
「飼いたいと思うなら飼ったらいいのに」
と言ってくれたひとがいた。
飼ってみたいなあ、と思うたび
彼女の整った横顔を思い出す。
この前、動物園に行ったら、
リクガメのぬいぐるみが
3000円で売っていた。
一瞬欲しいかも、と思ったけれど。
ふさふさとしたリクガメは不思議過ぎて
やっぱりこれは違うな、とやめた。
動物園にいたマンネンくんという
大きなリクガメは
カメラを向けたら
のっそりと歩き始めた。
おおー、と知らない子どもと喜んだ。
*
ずっと行ってみたかった園芸店に行った。
動物の置物たちのコーナーがあった。
HotAntというメーカーのもので
(多分どこの園芸店にもあるのだろう)、
手頃な値段でとても丁寧に作られている。
毛並みとか目とか見とれてしまう。
そこに、リクガメがいた。
ホシガメがずらりといて、
コガメとだけ書かれた小さなカメが
1300円で一匹だけいた。
こ、これは!
園芸店でこのカメだけ買った。
*
今、そのカメはパソコンの隣にいる。
開いていたい本に乗ってもらったりもする。
左目が特にかわいい。
と私は思うんだけどなあ。
「きもちわるい」(娘)、
「リアルすぎる。どかして」(夫)、
「…」(息子)、
家族はこんな反応だけど、
私はそんなことはない、と思っている。
とってもかわいい。
うるんだ目をしている。
台所のカウンターが定位置で、
カメの向きを変えながら家事をする。
まるでテレビを見ているかのようにすると、
その後ろ姿もすっごくいい。
横顔を見ていたら…
E.T.にちょっとだけ似ていると思った。
「この子の名前、E.T.にするわ」
と家族に言ってみる。
「ああ、ちょっと似てるかもね」と家族。
ただの置物ではあるのだけど、
今の私にとっては有難い存在。
とにかくE.T.をながめながら
ほっとしている。
ながめていると思うのだ。
おべっかとか、余計な気遣いとか、
できるだけやめよう、って。
甲羅を見ながら思う。
映画「E.T.」の感動シーンがあった。
泣きそうになった、
ってことだけ覚えていて。
でも具体的なことは忘れている。
どこで感動したんだっけ?
うちのE.T.もコタツの上において、
一緒にE.T.を見たい。
そんな日をつくろうと思う。
置物だけど、泣きたくなるほど
E.T.はかわいい。