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歌いたい日

テスト終わりの中学生。
帰り道が一緒になってしまった。
息子と一緒の中学の子たち。

目の前に中学生女子4人組。
ある女の子が歌いはじめた。
あの子だ、と思う。

 前にも歌っているのを見たことがある。
 あまりに気持ちよさそうに歌うから、
 私はつい、ニヤっとしてしまって。
 それが良くなかった。
 『あのおばさんわらってるよ』みたいに
 隣にいた友だちがその子に教えた。
 その子はふりかえり、
 私の顔をちらっとみて、
 歌うのをやめた。そんな日があった。

なんの歌か分からないけれど、
見かけるたび、のびのびと大きな声で歌う。
それがあの子の日常なのだろう。
うちに帰っても、きっと
ずーっと歌っているのだろうなあ。
とてもいいなあ。

時々、台所で歌う。
歌っている意識はなくて、
いつの間にか歌っている日がある。

「上機嫌だねえ」

夫は私が歌っていると、
かならず言う。
悪気はおそらくなくて、
事実を言っているだけなのだろう。
でもすごくムッとする。
もう歌う気なくなったわ、
と思っている。
たった一言の返しで
息子が「あー、もうやる気なくなった」
って、言うときがあるけれど、
これに近いんだろうなあ。

でも、夫の言うとおり、
私は上機嫌だった。

小さいカメを見たからだ。

小さい子どものカメが
一生懸命、泳いでいた。
多分、カメの親は子どもの面倒を
見ることはないのですよね?
産み落とされた時から、
自分で生きていくのだよね?
そう思いながら、
小さいカメたちの泳ぎを見ていた。
気配をできるだけ消して。
私がいると分かると
さっと潜ってしまうから。

カメ泳ぎを見ていた。

小さいカメA
小さいカメB
小さいカメC

柳の木のてっぺんに何かいた。
ずーっとてっぺんにいてくれる。
うちに帰り図鑑で調べ、
モズであることが分かった。
小さな猛禽類。

モズにも会えて
私はうれしかったのだ。