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900円のメダル

キンノモリシアワセ帖、という名の
小さな冊子をつくったことがある。
小さな起業講座の最後にマルシェがあって、
そこで50円で販売した。

その講座の回がすすむにつれ、
どんどんこわくなり、
コンディションは絶不調。

「とにかくやってみて。
 やりながら、
 なりたいものになれ」
そんなメッセージを講師はくれた。

分かっちゃいるけど、
あの時は、恐怖しかなかった。
不思議と子どもが小さい時ほど、
忙しい時ほど、
そんなことをしたくなるものだ。
埋没したくなかったのだろう。
私はここにいる、
と言いたかったのだろう。
睡眠削って、いろいろやった。

今、思えば(数年もたてば)、
最後までやり遂げたからよしとしたいし、
大変だったけどおもしろかったなあ、
と思うこともある。

でも、…あの時のことを
思い出すと、
もう苦くて、
苦すぎて、
できるだけ思い出さないように
過ごしてきたところがある。

この前、物置と化した北の部屋を
片づけた。掃除した。
床をふいたら、雑巾が黒くなった。

北の部屋には私のものがたくさんある。
苦い時のものが、
ひょっこり顔を出してくる。
キンノモリシアワセ帖も出てきた。

あの日のマルシェを思い出す。
この冊子を買ってくれるひとがいた。

あの子は小学生と幼稚園生?
女の子の姉妹が、
私の冊子を見て、
「ほしい」と言った。
お父さんは『え…』って顔を一瞬した。
きっと50円だからいいや、
と思ったのでしょう。
「いいよ」と言った。

手のひらにおさまる冊子。
子ども向けでもない。
はてなブログに書きためていた、
自分の好きな記事を
いくつか選び冊子にしたものだ。
毛糸で閉じた。
つくっているときは楽しかった。

この子たち読めるのかな、と思いつつ
なにかにひかれたようだった。
冊子に自信がなさすぎて、
おまけもつけていた。
必死に見つけた四つ葉をしおりにし、
外国の使用済み切手をテーブルにひろげ、
好きなのを選んでもらい、
封筒に貼り手渡した。
姉妹は嬉しそうだった。

お父さんが私のプロフィールを見て、
「(キンノモリシアワセ帖は)
ああ、お名前からきているのですね」
と言ってくれた。
「そうなんです」
と私はわらった。

年配の女性は二冊買ってくれた。
「こういうのが好きなお友だちがいるの」
そう言って、買ってくれた。

思い出してみると、
立ち止まってくれるひと、
わりといたかも。

このシロクマに
お金を入れてもらった。

売上、900円。
へぇ、18冊売れたんだ。
と、今知りました。

これは900円だけど、
私にとってこの900円は
ものすごい価値がある。
メダルみたいなものだ。

ここにまた戻そう。

書くこと、つくりたいものに、
素直に取り組んでみようと思う。

かっこわるくとも、
まずは自分が読みたいものを、
このnoteにも書けるように。
少し意識を変えようと、
思ったところです。

少しずつ…
少しずつ…

自分を表現することを
あきらめずに
いたいと思います。