宗教2世問題から考える「マルチ商法2世」の定義
考えるきっかけになった本はコチラ。
マルチ2世問題を扱う上で参考になる宗教2世問題。
自らも宗教2世(エホバの証人2世)として、発達障害・アダルトチルドレン・宗教2世・LGBTQ+などの自助グループを運営されている横道誠さんによる著書です。
ちなみに自助グループは宗教2世であればこちらのアカウントで発信されています。希望者はDMなどで連絡を、とのことです。
まずこれだけの自助グループを運営されていることがすごいです。私はインタビュー1つするにしてもそうですが、その後インタビュー記事をまとめるときも結構力を使います。
当事者としてもそうですが、研究者として話を聞き続けられていること大変尊敬します。
本書の目的は、宗教1世の世界を内側から追体験してもらうことのようです。
マルチ2世と宗教2世
私はマルチ2世という問題を課題提起しようと思ったとき、最初に宗教2世問題が目につきました。安部首相の銃撃事件が起こる前からです。
「宗教2世」よりも私は「カルト2世」という表現の方が好みなのですがそれはさておき。
宗教2世の持つ生きづらさ、というものには共感します。比べるものではないですが、マルチ2世の生きづらさとは多少異なり、より強力で、カルト性が高いように思います。(時には暴力などを伴う、洗脳が行われている団体もあります)
詳細にマルチ商法とカルト宗教の類似性を考察したのはこちら。
横道さんには、以前私へインタビューをしていただきました。「みんなの宗教2世問題」という本であるにも関わらず、マルチ商法2世問題を取り上げてくださいました。
話を聞いていただいたとき、横道さんが普段感じられる宗教2世問題と異なるイメージをされただろうなと私自身話していて感じました。幼い頃の虐待とも取れるような強い被害が、マルチ商法2世にはないことや、宗教での教義が、マルチの場合はアップや製品になることが分かりづらい要素の1つなのかもしれません。
タイミングが少し合わなかったため収録までに読めませんでしたが、マルチ商法とカルト宗教を紐づけてガルスTVで議論する機会があったため、マルチとカルトの類似性についてお話を伺った際にご紹介いただいたのが本書でした。
なお、ガルスTVで悪徳商法ジャーナリストの多田文明さん、ガルスTV運営者の冨谷皐介さんと三者対談したのはこちらです。
※注:サムネだけ見ると私もマルチ商法会員経験があるように見えますね。1年のペーパー会員のため、その経験はなくあくまで2世から見える+インタビュー経験から知っていることを話しています。
宗教1世・宗教2世
定義としてまだ確立されていない「宗教2世」その中でも著者は宗教被害を受けたと考える脱会者に限定する考えを提唱しています。
確かに、マルチ商法の課題解決に向けた取り組みでも、マルチ会員を脱会した後の心のケアは私も課題認識をしているうちの1つです。
脱会したと思っても、別マルチを始めてしまう事例は後を絶ちません。
加えて、脱会者は信じてきたものが嘘だったことに気づき、周りに話さない。私が過去ヒアリングしたマルチ会員脱会者から共通して聞いた言葉は「黒歴史」でした。
そして、当然ながら現役マルチ会員は課題認識を持っていないため、脱会済に絞ることは納得です。
マルチ商法2世の定義を考える
本書の読書録は別途まとめるとして、マルチ商法1世・マルチ商法2世の定義を考えました。横道さんの宗教1世・宗教2世同様に、マルチ商法被害にあったと考える人を前提にすると、マルチ商法の場合は下記だと思いました。
マルチ商法1世:脱会済のマルチ会員
マルチ商法2世:(主に現役)マルチ会員を親に持ち、マルチ商法被害を受けたと考える非マルチ会員(脱会済含む)
マルチ商法と宗教の大きな違いは、自身による入会意思の有無が大きいと思います。マルチ商法の場合会員に署名するため、親から強制的に入らされたとしても、一定の自己決断が必要です。
加えて、一般的に20歳以上が契約可能となることから、そこまでに親がマルチ商法にハマっていると感じる子どもは、マルチ商法自体を拒絶し、最初から加入を拒否するケースが多いと感じます。加入している子どもは、親の気持ちを理解するために入ってみる人も一定いますが、圧倒的に前者が多いように感じます。
そのため、マルチ商法2世は、会員になっていない人が多く、マルチ商法の仕組みやマルチ会員の気持ちが圧倒的に分からない、マルチ会員との間の情報の非対称性が、宗教のそれと比べてより大きいのではないかと感じます。
その観点からも、本書を通して宗教1世の世界を追体験することは、私のような、いわゆるマルチ会員としてハマった経験を持たないマルチ商法2世にとって、親のことを少しでも理解し、脱会やマインドコントロール解除などに繋げるためのヒントとなるのではないかと期待します。
本書の中身はかなり深い話なので、並行して読みながらまとめていますが、またの機会とします。