私がモロッコに惹かれた理由
きっと映像にしたら5秒か、それよりもっと短い。
これは私が小さな頃からずっと覚えている記憶です。
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まっすぐ港へと続く道
両脇には朝採れたばかりの野菜や果物が山のように積まれている。
遠くには、新鮮な肉を焼く煙
長年の塵が重なった古い銀食器
ロバが人を乗せ、ものを運ぶ
朝に大きな市が立つ小さな白い町。
人が馬がロバが、前から後ろから溢れている。
カモメは鳴き、人は話し歌い叫んでいる。
どこかで大道芸人は楽器を鳴らしているようだ。
喧騒
うるさいはずなのに、うるさくない、心地の良い音。
港へと続くその道に、古く大きなアーチがある。
そのアーチまで、あと30メートルほどだろうか。
私は左手に赤いリンゴを。
右手で小さな子供の手を握っている。
6歳ほどの女の子
白い布の中で下を向き、静かにゆっくり歩いている。
私と同じ、白い布
頭から肩まで、肩からつま先まで
羽のように軽い白い布が肌を覆い、涼しげだ。
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3年前のちょうど今頃
カミーノ・デ・サンティアゴを歩きにスペインへ行きました。
その時に、ついでに寄ったモロッコ。
バルセロナから2時間ほど、格安の飛行機でフェズへ。
飛行機を降り、風が吹き、空気を感じた瞬間
「ここだ」と、分かりました。
白くもなく、港町でもなく、ただの小さな飛行場なのに...
不思議と「ここだったんだ。」と思いました。
たった5日間の旅でしたが、出会う人、出会う場所、経験したこと
全てが素晴らしく、美しく、幸せで、生きていることを感じました。
いつか住んでみたい、この国のことをもっと知りたいと思いました。
それから1年と半分ほど経った頃、マラケシュという都市で仕事を見つけ
1年ほどお世話になり、今に至ります。
小さい頃からの記憶と繋がる国で生きられることは、素晴らしいです。
けど、もちろん楽しいことばかりではないです。
悲しく泣くこともあるし、声を荒げて喧嘩すること、怒ることもあります。
日本で生活していた頃より、随分気が荒くなった気もします。。
強くならないと生きていけない国です。
良いも悪いもあるのが世ですし、国ですし、人ですね。
私がモロッコに惹かれるようになったのは
もしかしたらずっと昔の記憶の中なのかもしれません。