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苦手なこと。網戸の張り替え

今日は網戸の張り替えをする。苦手だ。世の中に建具屋さん以外で網戸の張り替えが得意な人はいるのだろうか。絶対いない。そうおもう。

毎度毎度うまく張れたためしがない。しかしずいぶんくたびれている。張り替え時だ。仕方ない。今日は天気もよい。ひとつやるか。重い腰を上げて張り替えることにする。

たしか前に張り替えた時の道具があったはず。枠のゴムを押さえ込むローラーとか張った後に残った余分なネットを切り取るカッターとか。

でもこういう以前に使った道具って、あったためしがない。大抵出てこない。整理整頓ができないタイプです。とてもです。

しかし今日は出てきた。奇跡だ。何気なく物置を探していたら、あった。あった。ありました。珍しいこともあるもんだ。幸先よろし。

ローラーとカッターはあったので、あと必要なのは網戸のネット(当たり前)とネットを枠に押さえ込むゴムですね。まずはホームセンターへ買い出しに。

その前に寸法を測らなくてはなりません。どれぐらい必要かな。

引き出しからメジャーを取り出し測ります。今回の張り替えは、裏庭の縁側の網戸2枚と表の縁側にある網戸2枚の合計4枚です。全部同じ大きさなので1枚測ればいいよね。メジャーで計測。180ー72、4。自分さえわかればよい。スマホのメモ帳に記録。

ホームセンターは車で5分だ。網戸売場へ。いろいろあります。まずはネットですね。張り替え用ネット。18メッシュから30メッシュまである。数字が大きくなるほど細かいらしい。細かい方がええやろ。大まかな判断(笑うところ)で30メッシュにする。

色もいろいろあるね。グレーにブラックに銀黒マグネットというのもある。銀黒マグネットは「室内から外はよく見えて外からの視線はさえぎる」と説明書きにある。ええやないの。でも値段が高いわ。やめ。

いま張ってあるのはグレー。でもねちょっと外が見えにくいのよね。その点、ブラックはまだましかな。お値段もグレーより高いとはいえ、この際ブラックで視界すっきりな縁側にしようじゃないか。決めた。

それからゴム。これもいろいろあるけど。太さは5.5ミリです。調査済み。太さはわかってるけど長さはどれぐらい必要かな。スマホには「180ー72、4」と書いてある。えーーーーーっと。とりあえず7mのが2袋あればいけるやろ。こちらもテキトーです。

レジでお勘定を済ませ家路につく。必要はものは揃った。ではさっそくと言いたいところだが今日はめちゃくちゃ暑い。とても庭先では、外ではできない。熱中症になるぞ。

ならばリビングでしようと作業スペースをつくり出すと妻が網戸の張り替えをするなら網戸で床が傷つかないようの物置にある古くなった布団シーツを持ってきて養生するようにという。

そうそう。こういうところの段取りが僕は雑なのだ。面倒がる癖がある。おもしろくないが今回は妻の言うことを黙って聞くことにする。物置に行き捨てるつもりの古い布団シーツを2枚持ってきてリビングの床に広げる。これでよかろ。

妻がキッチンの方で僕の行動をチラチラ見ている(いわゆる監視か)。見られたくないが見るなとも言えず黙って作業を続ける。

たぶん今日の網戸の張り替えは苦労するはず。モタモタするに決まっている。できれば妻には見られたくない。いろいろ口出ししてくるハズだ。イヤだ。それがイヤなんだ。まだ何もはじまっていないのに気が滅入る。

しかしやるしかない。裏の縁側の網戸を2枚外して作業場に運び込む。まずは古いネットを取り外す。ホームセンターにあった「網戸の張り替え方」という手順を書いたリーフレットを念のため持って帰ってきた。チラ見してさらっと読む。だいたいわかったようなことが書いてある。真面目には読まない。今更読んでどうするつもりだ。もうひとりの自分がバカにしたように呟く。そうですよね。僕は媚びたような薄っぺらい声でこたえる。

網戸から古いネットとゴムを取り外し汚れたそれらを丸めて縁側から庭先に放り出す。もうお前たちには用はない。出て行け。

いくらなんでもそんな冷たいことは言わない。それじゃ余りにも酷すぎる。いままでありがとう。おかげで快適な暮らしができました。ゆっくり休んでくださいね。そこまでは言わなかったけど気持ちはそうだった。一応。

さてぼやぼやしてはいられない。時間は限られている。人生は短い。網戸の張り替えばかりやってられない。何をモタモタしているんだ。早くしろ。もうひとりの自分が急かす。いえ、別にモタモタしていたわけではありません。僕はちょっとだけ逆らう。事実は事実だ。モタモタするのはこれからなんだから。この程度のことで言わないでほしい。

新しいネットを袋から取り出す。10mのものを買ってきた。十分だろう。巻物になったネットの端を持って網戸に合わせる。ちょうどよい大きさにハサミで切る。網戸の枠に合わせてゴムを押し当てて留めていく。

説明書には「右利きの人は右回り、左利きの人は左回りにゴムを入れていくと作業がラクです」と書いてあった。どうでもいいけど楽ですの表記はカタカナで「ラクです」と書いてあった。こう書くと楽な感じがするのかな。

…ちょっとする。えらいもんやね。いくつになっても素直な気持ちで生きていきたいとおもう。

右利きは右回りか。その時、妻が僕の視界に入った。僕は、右回りってこぉやね?と右腕をぐるぐる回す。すかさず妻は時計回り!と叫ぶ。かれこれ30年連れ添っている。息はピッタリだ。

やっぱり網戸の張り替えは苦手だ。1枚目は慎重になりすぎた。なんとか張ることはできたがどうもスッキリしない。それでも元の網戸のあった場所に張り替えた網戸をはめ込むとそれなりに格好がついた。おおむね良しだ。

2枚目に取りかかる。タルミがないように注意しながら張り替える。注意すればするほどタルミが出るような気がするし、実際にタルム。悩ましい。しかし続けるしかない。2枚目も出来上がり3枚目に取りかかる。

慣れないことをすると疲れる。変な姿勢になっているのかわからないが腰が痛い。しかしもう半分はできた。あと半分だ。あと2枚張り替えればここから解放される。3枚目も苦労しながら張り替える。

ネットは十分にあるが、なんだかゴムの方が怪しい。怪しいというのは長さが足りないかもしれない。あとどれぐらい必要なのか。4枚目の網戸にゴムをあわせてみる。やっぱりだ。足りない。

ホームセンターへ。急ぎ足で網戸コーナーへ行きゴムを手にレジを済ませ家に戻る。20分のロスだ。さぁやり遂げてしまおう。

この種の慣れない作業は、作業合流終わる頃に上手くなる。定説だ。はじめる前にしっかり読まなかった「網戸の張り替え方」の説明書きを今更ながらじっくり読んでみる。真新しいことは書いていないがいくつか印象的残る箇所があった。

・網を網目と枠が平行になるように置きます。
・最初の2辺は溝に網目がほぼ平行になるようにゴムを入れるのがポイントです。
・(最初の2辺のあとに)残りの2辺にゴムを押し込む際は、手のひらで枠の内側のたるみを取るように、網を少し外側に引っ張り加減にし、添えた手の長さ分のゴムだけローラーで押し込んでいきます。

当たり前のわかりきったようなことが書いてある。が、いま読んでみて、そうかと思うところもある。最後の4枚目で失敗はしたくない。3枚目まではそれなりに出来た。満足できるものであったとはいえないまでも大きなミスや事故はなかった。

4枚目。これが最後だ。

疲れているから集中力も途切れがちだ。僕は気の引き締めた。説明書きにあった3つのポイントを頭に描きながら、ネットを網戸の枠にあてゴムをゆっくりローラーで押し込んだ。素直だ。流れが素直だ。

これまでの3枚とは何かがちがう。

スルスルとローラーが進む。迷いがない。あれこれ心配することもなくネットはすんなりキレイに収まった。やっぱり最後の4枚目が一番上手にできた。

慣れだろうか。いや、今回ばかりはそうではない。そんな気がする。

説明書き、大事です。 3268文字


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