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恥ずかしくて聴けない?『チーム友達』をはじめとする最先端JHIPHOPの行方。

単調なビートに地響きの如く鳴り響く重低音…。繰り返される安直な日本語…。聴いているこちらが恥ずかしいわ…!!!

巷で流行っている日本語ラップを耳にして、こんな羞恥心を抱いたことはありませんか?

ここに宣言します。私はあります。そして、この記事を開いた皆さんなら同じように感じたことのある方も多いのではないでしょうか?

そもそも日本語は崇高な言語なのです!!!!

日本語だからこそ表現できる、情景描写や感情の機微。
文学的に見ても、きっと他言語より言葉遊びもしやすい。それなのに、SNSなどで良く耳にする曲ってなぜか耳を塞ぎ無くなるような事ばっかり言ってるんですよね。

例えば、一時期TIKTOKで大バズし、日本中のJKが踊り散らかしていたJP THE WAVYとLEXの曲。
そんな一世を風靡した曲の歌詞とはいかに…………。


『なんでも言っちゃって~~♪ 俺の名前も使っちゃって~~♪ 金とか買っちゃって~~♪ 』


エッ!これでいいの?!これがいいの!?WHY JAPANESE!!WHY JK!!そんな気持ちでした。

では、そんなJHIPHOPが廃れることなく大きなムーブメントを起こし続ける理由とは一体どこにあるのか?そしてJHIPHOPの行く先とは?

クラブで、反復横跳びかと思うほど激しく横に揺れ踊るヤリラフィー族を心に宿しながら三日三晩考えてみました。

愛おしい

📍疲れきった日本人に優しい作りがウケる


昨今注目を浴びるJHIPHOPにおける最大の共通点は、''歌詞もビートもとにかくシンプル'' ということです。

冒頭でお話したように、日本語は文学的にも優れた言語なので細かな情景・心情描写がいくらでも出来ちゃいます。

例えば、文学的な日本語ラップとしてはこんな作品が挙げられます。


こちらは約10年前の作品。日本製ポエトリーリーディング代表。リリックが生む情景描写とはまさにこのこと。人生がまるごと言葉に投影されています。
何気なく再生した私までもが「君たちはどう生きるか」いや、「私はこの先どう生きようか…」と人生の深淵に沈んでいってしまいそうな勢いがあります。

こうしたリリカルな言葉の連続により魂そのものをぶつけるスタイルはHIPHOPの原点でもあり、あるべき形の一つとも言えるでしょう。

一方で、歌詞に複雑さが増せば増すほど頭を使い、精神的・肉体的なエネルギーを消耗することになります。

学校に仕事に家庭…。毎日ありとあらゆるタスクをこなし、時間に数字に追われる日々…。''生きているだけでえらい'' なんて言葉もよく耳にするほど生き急ぐ現代人。
時に何も考えず無心で過ごしたい場面もあるでしょう。

そこで登場するのが昨今流行しているJHIPHOPなんです。

語ろうと思えば語れるが、あえてシンプルな言葉で届けます。どう受け取るかは自由。全部君らに委ねるから、気楽に聴いてくれや。

そんなスタンスで生まれた音楽は、良い意味で歌詞もビートも難しい部分がなく、私たちをふわりと受け入れてくれるのです。そんなフレンドリーさが世間に受け、バズやミーム化に繋がる。

そう。まさに聴くだけで、みんな友達。チーム。チーム友達。そっか、そういうことだったんだね。(?)

📍メッセージ性<音を重視する傾向

満を持して登場した「チーム友達」🤝🌟
2024年、JHIPHOP界を多いにザワつかせました。それもそのはず。煌々と光り輝く「天丼専門店 てん天」の看板をバックにイカつい兄ちゃんが大量集結。一体これから何が始まるのか、ゴクリと唾を飲み込んだその矢先…。

『チーム友達!』『チーム友達!』『俺たち何?え?チーム友達!』

…もうね、拍子抜けです。カツアゲとかされちゃうんじゃないかと思うくらい強面なメンバーがですよ。『俺たち!なに!え!チーム友達!』って、小学生男児が言いそうなワード第5位にでもランクインしそうなレベルのことを連呼してる。何コレ……。初めて聴いた時の感想はこんな感じでした。

ビートも、良くありがちなベース太めのトラップ。この曲はその場のノリで作られた偶然の産物なのか…?とも思わせる単調さ加減ですが、しっかり国をあげての大バズを果たしました。

それもそのはずで、『チーム友達』には流行の鍵となるスパイスがあちらこちらに散りばめられているのです。

その最も大きな要素として挙げられることが、『メッセージ性』よりも『音』を重視している部分です。

曲はじめの『チーム友達』の連呼から聴き進めていくと、次は『契り!契り!契り!契り!』『契ろう!契ろう!契ろう!契ろう!』というフレーズのループに突入します。この繰り返される『チ』音の中毒性ったらほかになく、我々の脳を確実に侵食していくのです。

そもそも『契り』という名詞は聞いたことがあっても『契ろう』なんて意思形は聞いたことがないので、そこが凄いなぁとしみじみ感嘆してしまいます。そりゃ耳に残るよなと…と。

字面だけみても中々の強烈さ。

こうしたリリカルさよりも音遊びを重視する流れは『チーム友達』だけでなく、現行JHIPHOP全体におけるトレンドとなっています。

例えば、この曲。こちらもTIKTOKで鬼のように流行りまました。

こちらは『イ』音の連続。『ギリギリ!』『ギチギチ!』『ガチガチ!』など耳馴染みの良いオノマトペを多用することで、中毒性もバチバチ!です。

合いの手で入る『ヤッバい!』『マジで?!』が遊び心満点。


最新フィメールラップもどうぞ。

空気の如く、ノリが軽い。

カタコトな日本語。独特な声質とフロウ。頭に残りやすいシンプルなビート。遊び心しかないリリック。良い意味でこの軽薄さが、視聴者の耳にスっと入り込む。

YOUTUBEやインスタでリール動画をみていても、最初の数秒が面白くなければ即スクロールじゃないですか…。この残酷なまでの大SNS時代において、短いフレーズやリズムパターンでいかに視聴者の足を止めることができるかどうかが流行の鍵となるんですよね。

その結果、メッセージ性よりも音を重視する直観的なサウンドが増えている傾向にあるのかと思ったり。

📍最先端ファッションスタイルの取り入れ

1970年代頃にニューヨーク・ブロンクス周辺のストリート文化から発生したヒップホップは、いつの時代もそのファッションスタイルに注目が集まります。

何を纏っているかで、その時代と背景まで見える。
それほどHIPHOPとファッションは密接な関係にありますが、まさにこれまで紹介したアーティストも令和の最新トレンドをふんだんに詰めこんだスタイルを披露しています。そうした点も、見る人を惹きつける重要な要素と言えます。

グランジ、y2k、indie、そういうのが最近のトレンド
NEXT STATION is SHIBUYA
GENTLE MONSTER感溢れてる
鬼ちゃんヘアで有名なスパイキーショートもトレンド
どことなく漂う90年代の香り

📍日本語ラップの世界進出(まとめ)

最新JHIPHOPの勢いはとどまることを知りません。
『チーム友達』で一世を風靡したKOHHこと千葉雄喜はその後更に大きな成功を収めました。2024年に公開されたグラミー賞受賞経験もあるUS女性ラッパーMegan Thee Stallionとの共同作品『Mamushi』は、米国のビルボードHOT 100チャートで最高36位、HOT R&B/HIPHOPチャートで最高7位を記録する大きなヒットを記録。

TIKTOKでのバイラルヒット効果も大きく、2024年12月時点で「Mamushi」を使用した動画は230万本以上投稿され、米国のTIKTOKチャートでは6位にランクインしました。

何がすごいって、これまたサビがひっくり返るくらい衝撃。

3歳児でも歌えるんじゃないか?というシンプルすぎるリリック。その後も、「大好きピカッピカのダイヤ。暗いところ輝いてる毎晩。」「ナイストゥーミーチューする挨拶。」「アイムソーハッピーありがたいな。」と脱力したフロウが続く。BPMもかなり遅い。そこらに蔓延るUSもどきの早口ラッパーも一掃する勢い。リリックのスカスカ感もあり、日本人リスナーはダサいと感じる人も多いかもといった印象。

ただ日本語特有の響きとテンポ、そして千葉雄喜が魅せる独特なフロウが、海外リスナーにとって斬新であることは間違いない。

耳馴染みの良いサウンド作りに重きを置く現行JHIPHOP。海外でもしっかりと足跡を残している。

恥ずかしくて聴けないと嘆いていた最先端JHIPHOP。実は、国内外問わず大きなムーブメントを巻き起こす理由があちらこちらにあったことが判明しました。もう、チーム友達を聴いてても恥ずかしくありません。LINEのプロフィールBGMを、チーム友達に変えてきます。

 📍余談

これだけ温度感高めにああだこうだと語ってたものの、結局こういうミニマルな音楽って一過性の流行で留まってしまうことが多いとも思うわけですよ。ファーストインプレッションは最強だけど、長く聴きたい音楽ではないのが現実…。あんた曲も作れないのに何様なんだよって話なんですが…。

サウンドやリリックのノリが軽い音楽は流行の風には乗るものの、そのままぴゅ〜っと遠くまで流されていってしまう…。だけども、重くて堅い文鎮のような音楽って長く心に残り続けるんですよね。生きている限りはずっと。いや、屍になってもきっと。

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