「‘’世界の頂上‘’はいかにして形成され、人類の挑戦を受けてきたか」世界遺産の語り部Cafe #9
本日は、ネパール🇳🇵の世界遺産『サガルマータ国立公園』についてお話していきます。
“世界最高峰”標高8848メートル
首都カトマンズの北東、中国チベット自治区との国境沿いに位置する【サガルマータ国立公園】は、標高8848メートルの世界最高峰「エベレスト」の名で一般的によく知られている山岳公園です。
ネパールで「世界の頂上」を意味するサガルマータは、またの名をインド測量局初代長官のジョージ・エベレストに由来するエべレスト、チベット語では「世界の母神」を意味するチョモランマと呼ばれます。
エベレストを始めとする「ヒマラヤ山脈」は、一帯の頂上が常に雪を冠しており、サンスクリット語で「“ヒマラヤ”(雪の居所)」の名を取るのに違わぬ荘厳な景観です。
国立公園内には、美しい毛皮を持つ「ユキヒョウ」や、オスの分泌腺で作られるジャコウが香料や漢方薬となる「ジャコウジカ」などが生息しています。
‘’世界の頂上‘’ヒマラヤ山脈はいかにして形成されたのか?
世界最高峰のヒマラヤには、7000メートル級の峰が100以上も存在していますが、これ程の山脈はどのようにして形成されたのでしょうか。
ドイツの気象学者「アルフレート・ヴェーゲナー」が唱えた「大陸移動説(continental drift theory)」によれば、約2億年ほど前に「パンゲア大陸」から分裂した「インド大陸」は北上を続け、5000万年〜4000万年前の間に、ユーラシア大陸に衝突したといいます。
さらには、大陸同士の衝突から陸地が押し寄せてきたことにより、インドとユーラシア大陸の間にあったテチス海が押し上げられ、ヒマラヤ山脈が形成されます。
その痕跡として、海底が隆起して形成された山脈の頂上付近の地層(テチス層)ではアンモナイトなどの化石も発見されており、このような海洋生物を含む地層を「イエロー・バンド」と言います。
現在でも、インド亜大陸は年に5cmのペースで北上し続けていて、エベレストは毎年数mmずつ高くなっているそうな。
そこに“エベレスト”があるから
世界最高峰のエベレストは、古くから多くの登山家たちを魅了してきました。
前人未到であったエベレスト登頂を試みた「ジョージ・マロリー」は、「そこにエベレストがあるから(Because it's there. )」の有名な言葉を残した人物です。
しかしながら、1924年に編成された遠征隊に参加したマロリーは、エベレスト登頂にアタックし、頂上目前の8000メートルを越えた付近で行方が分からなくなります。
1999年に75年越しでマロリーの遺体は発見されますが、「果たしてマロリーは、当時まだ未踏であったエベレスト登頂に成功していたのか?」という疑問は、未だ議論の的となっています。
公式でエベレストの初登頂に成功したとされる人物は、1953年に登頂に挑戦した「エドモンド・ヒラリー」と、そのサポート役となった“シェルパ族”の「テンジン・ノルゲイ」です。
もともとチベットにルーツを持つ民族である「シェルパ」は優れた登山技術に加え、登山に適した驚異の身体能力を持っていると言われています。
アメリカで行われたシェルパ族の研究によれば、ヘモグロビン結合酵素が常人とは違い、低酸素状態でも効率的に機能する驚異の肺を持っており、ペルー高地の先住民よりも、遺伝的に高山地帯に適した身体を持っているそうです。
“特殊体質”を持つシェルパの多くは、エベレスト登山者のサポートを兼ねて同行する山岳ガイドを務めており、『世界の果てまでイッテQ!』の登山企画でもその名が知られました。
これだけの身体能力を持っていながら、シェルパは古来より信仰する「チベット仏教」のアニミズム的な思想から、神聖な存在であるエベレストの登頂を志す者はいなかったそうです。
エベレストに登るには登山許可が必要で、料金は1人あたり「1万1000ドル(円安で約164万円!)」と超高額ですが、山岳ガイドたちはその危険度に見合うほど高給とはいえません。
しかし、命懸けでガイドを務めるシェルパは、エベレストの登山者にとって欠かせない存在であるといえます。
気が遠くなるほどの長い年月をかけて形成されたヒマラヤ山脈は、いつしか人々を魅了して止まない存在となり、人類からの挑戦を受けて来ました。
マロリーが残した言葉のように、多くの登山家たちが山に挑む理由は、理屈や論理では語ることが出来ないのかもしれないですね。
【サガルマータ国立公園:1979年登録:自然遺産《登録基準(7)》】