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Meety Diversity Policy『Belonging』策定への思い

こんにちは。カジュアル面談プラットフォーム「Meety」で組織開発を担当している五木田(ごきた)です。

Meetyは2022年8月22日に、Meety Diversity Policy『Belonging』を公開しました。

Meety Diversity Policy『Belonging』

プレスリリース

この記事では、プロジェクトオーナーのわたしが、どんな思いを持って進めてきたのかを綴ります。また、DEI(Diversity, Equity, Inclusion)やBelongingについて、わたしなりの解釈も説明していますので、DEIの概念や取り組みに少しでも関心のある方に読んでいただけたら嬉しいです。

Belongingとは

Meetyでは『Belonging(ビロンギング)』をテーマにDEIに取り組んでいます。

Meetyが定義するBelongingとは、あらゆる特性・価値観・バックグラウンドを持つ人が同じ会社の中に等しく存在し、関わり合っている状態のイメージです。
最近は、DEIB(Diversity, Equity, Inclusion and Belonging)という表現もあったりします。

属性など関係なく、全員が「一人の人」として存在し、関わり合っているイメージ

Meetyの事業や思想に共感し、プロとして仕事を共にするメンバーに対して、どんな属性であれ全員が当たり前に持っている人権を保障し、心地よく所属できる環境を作る。その意思表示のために、今回のポリシーを公開するに至りました。

なぜ動き始めたか

DEIBの領域には、もともと個人的な関心がありました。Meetyの外でも、いま自分が住む町(神奈川県の真鶴町という、小さな港町です)でLGBTQ+に関するイベントを主催したり、社会について話す場づくりをしています。

上の記事でも書いたのですが、わたしが結婚したパートナーは戸籍は男性ですがノンバイナリー女性を自認していて、さらに外国籍。日常的に大小さまざまな問題や葛藤を抱えていたり、マイクロアグレッション(小さな攻撃:悪意なく誰かを差別したり傷つけること)を受けることもあります。

わたしも当事者として、自分なりの形で社会に対するアクションをしたいと思い、プライベートでは趣味のような形で動いているのですが、2022年6月に週3正社員になったMeetyで、思いがけず仕事としても取り組めることになりました。

最初のきっかけは、ある特集の企画内容に対して、ジェンダーの観点で「このまま進めるのはよくない」と思った際に、CEOの中村さんやBizDevメンバーに意見したときだったと思います。

業務委託でご一緒し始めて1ヶ月くらいのタイミングだったので「面倒な人だと思われないだろうか」と、かなり緊張した覚えがあります。でもその時のお二人の反応が素直かつ柔軟で、この組織は「大丈夫」だと心の底から安心しました。

「声を上げる」って勇気がいるし精神的負担も大きい。それを受け止めてくれたお二人のオープンな態度に感激しました。今回のポリシーのなかで「心理的安全性を担保する」という意思表明を入れているのは、このときの体験から来ています。違和感を率直に伝えられる関係性が、DEIB実現のカギのひとつだと思います。

Meetyは役員・正社員・業務委託あわせて15名程度の小さな組織です。職場環境やメンバーの特性的に、顕在化したクリティカルな課題感があったわけではありませんでした。

ですが、この組織規模のうちからDEIBについて学び、考え、対話し、行動することの重要性については中村さんとも思いを共有していました。意識的・無意識的に現在できていることも含めて考えを言語化して、ステークホルダーの皆さまや社会に対する意思表示をすべきと考え、今回のプロジェクトを始動しました。

多様性ってなんだろう

MeetyでDEIBに取り組むにあたって、まずは改めて「多様性」について考えることから始めました。

なぜなら、「多様性」と言うときには「違い」に目が向きがちだけど、本当にそれがいいのだろうか?という問いを持っていたからです。

例えばわたしのパートナーは8年前に来日して、日本語のコミュニケーションは全く不自由していません。でも、日本国内のコミュニティにどれだけ馴染んでいるように見えても、日本語でどれだけ語り合えても、「日本語すごい上手だね」「どこ出身?」「いつ日本に来たの?」などと言われる瞬間に、「あなたは私たちとは違う人」と線引きされるように感じるそうです。

これはマイクロアグレッションの典型的な例で、相手からすると全く悪気はなく、むしろ称賛や興味の気持ちを持っての言葉だというのは理解できます。また、相手との関係性や文脈次第では受け取り方も変わります。
ただ、どれだけ長く日本に住んでその国の言葉が話せても、こうやってふとした瞬間に「自分は相手から”異質なもの”と見られている」と感じることがあるのも、事実なのです。

外国人だから、ノンバイナリーだから、特別扱いしてほしいわけではない。むしろ「違い」を感じない環境に、他の人と同じように身を置きたいだけなんです。

男女、LGBTQ+、障がい者、外国籍…など、カテゴリがあるからこそ、社会に多く存在する差別や偏見、格差、機会の不均等といった問題に目を向けられる側面もあります。特定のカテゴリに働きかけることの意義もあるでしょう。

でも同時に、ある属性の人たちを区別して扱うことの危うさにも目を向けて、この取り組みを進めなければならないと思います。

こういった考えから、Meetyではできる限りカテゴリや属性を取り払って一人の人と向き合い、Meetyに関わる人が心地よくこの組織に所属する状態を作りたいと思うようになりました。それを『Belonging』と表現して、取り組んでいこうと決めました。

余談

余談ですが、中村さんは、わたしがDEIBに関する話を社内でし始めてから、自身が持つアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込みや先入観)に今まで以上に自覚的になって、言動が変わってきています。中村さんの吸収力、素晴らしい…!

わたしは「世界を一瞬でガラッと変えるのは難しくても、自分が常に変化し続け、それが身近な周囲に伝染し小さな変化の連鎖が生まれれば、世界はよい方向に進むはずだ」と信じています。

中村さんを見て、それを改めて実感できたのは嬉しかったです。

👇 中村さん視点でのお話はこちら

今後の展開

今回のポリシーは、公開してからが始まりです。これをきっかけに、アクションと情報発信を継続的に進めていきます。

その第1弾として、8月にアンコンシャス・バイアスに関するトレーニングを実施し、私たちなりのアンコンシャス・バイアスへの捉え方が言語化できたり、興味深い問いが出てきたりしました。この内容はまた後日公開予定です。
その他、DEIB/Belongingに関する様々な考え方や取組みの紹介のほか、国内外の動向や参考文献の共有なども随時更新していきます。

ポリシーにも書きましたが、一つひとつのアクションとしては派手で大きなものではないかもしれません。でも、社内で日常的にどんな言動がなされるかが重要だと思うので、ポリシーを体現できるように日々の積み重ねを大切にしていきます。

おまけ

Belongingというキーワードに至った過程で、いくつかの記事や書籍を参考にしました。
最後に、おまけとして参考文献を紹介して終わりにします。ここまでを読んで「さらにMeetyのBelongingの考えを知りたい」と思ってくださった方には、ぜひ最後まで読んでいただきたいです。

1: ダイバーシティー&インクルージョンの制度充実の落とし穴

わたしは、D&I/DEIの社会的な取り組みの多くに、「特別な人のための特別なもの」という印象を持っていました。

例えばインクルージョン(Inclusion)とは本来、「あらゆる人が排除されないように、その社会・組織のなかに包含する」といった意味合いです。
一方で、下図のように「マジョリティ(中心)の中に、マイノリティの人たちを配慮して入れる」という社会的なイメージがついてきてしまっているのではないか。取り組みかた次第では、逆に分断を生みかねないのではないか。世の中には素晴らしいアクションも多くありますが、本来の意味とは少しズレた印象が広がっているのでは、という気持ちがあったんです。

右の図は、よくあるイメージ・解釈です。

この記事では、それが見事に言語化されていました。

現在の数々の制度にはマジョリティーが「基準(スタンダード)」だという暗黙の前提がある。「基準」との差分を「あなた方は違う属性だ」と認め配慮する、けど、スタンダードは変えないよ、という前提。

これだと、下手するとむしろ分断を強調し、インクルージョンから遠ざかるリスクさえある。

(中略)

目指すべきは組織における従来の「スタンダード」の前提がなくなることではないか。様々なマイノリティーに合わせて制度を増やしていくのではなく、あらゆる人がその人にあった働き方ができる制度1本に集約することを目指すのではないか。それがインクルージョンではないか。

ダイバーシティー&インクルージョンの制度充実の落とし穴


2:【IWAKAN】 Volume 04|特集 多様性?

次に、この記事の本編にも書いた、ある属性の人たちを区別して扱うことの危うさについて。

「互いの違いを認め合う」と言うときに、「普通なものと異質なもの」という分断をより目立たせてしまうことになってしまわないか? 本来すべての人は「違う」のが当たり前なのに、バックグラウンドなどわかりやすい「違い」だけに目が向いてしまわないか?

……こんな考えがまさに書かれていたのが、この雑誌でした。IWAKANは他のVolumeも含め、超おすすめの雑誌です。

「多様性?」を特集にしたVolume04では、冒頭から次のように語られています。

IWAKAN Webサイトより

本来、人は全員「違う」のに、「多様性」というときには「普通」ではない異質なものにスポットがあたってしまうことが多いように思います。文中にあるように、多様さが描かれることによって救われる人がいる一方で、普通vs異質の二項対立を生み出してしまう懸念にも、丁寧に目を向けたいと考えます。


3:現代思想入門 (千葉雅也 / 講談社現代新書) 

近代のフランスの哲学者 ジャック・デリダの「脱構築」という考え方も、この本を読んで参考にしました。

二項対立の枠組みを疑い、崩し、問い直す「脱構築」。
これは「男か女か」「マジョリティかマイノリティか」「障がいがあるかないか」といった二項対立やカテゴリで語りすぎない、というここまでに書いた思想と重なります。

また、本書で解説されていたジル・ドゥルーズの「リゾーム」からも、Belongingのイメージの着想を得ました。存在・事象は独立しているわけではなく、すべて複雑に絡み合っていて、その関係性には中心がなく多方向に広がっている、というイメージです。

リゾームのイメージ
The Philosophical Concept of Rhizome
BY NASRULLAH MAMBROL on APRIL 26, 2017

G.ドゥルーズは,「永遠に同一的な」有機組織の典型をツリー tree (樹木) ,「生成する異質性」のモデルをリゾーム (根茎) と呼び,人間の思考や国家などの社会組織の持つ,超越的「一者」=幹を中心とし,原則的に二項対立で進行するツリーを批判し,中心を持たず異質な線が交錯し合い,多様な流れが方向を変えて延びていく網状組織のリゾームの復権を呼びかけた。

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「リゾーム」の解説

(哲学は専門ではないので浅い理解だと思いますが、そこは見逃してください)

この他にも多くの記事や書籍で学んできているので、今後また少しずつ紹介できればと思います。
この領域には絶対的な正解はないと思いますし、考えれば考えるほど難しい領域だなとも感じます。だからこそ学び続け、対話し続けることが大切。これを読んで質問・意見・感想などがある方とMeetyでお話できたら嬉しいです!

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最後に、取材やイベントのご相談、その他企業間でコラボレーションできそうなことがありましたら、下記よりお問い合わせいただけますと幸いです。

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