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たぬきの恩返し

はじまりはじまり~
 
私は庭師です。
この秋、ふとした想いから学校の校庭ぐらいの大きさの庭を作って、ある人にプレゼントすることにしました。
全体のイメージとしては、校庭いっぱいにちょっと冒険して歩けるくらいのくねくねした道を作ること、そこは決まっています。
さて~このお庭、一体誰にプレゼントするかというと・・・
それは、、まだナイショにしておきます。
 
せっかくなので、庭に名前をつけようかと思います。
何がいいかなぁ・・思いあぐねていると、でできたのが
『たぬぽんガーデン』でした。なんだかなぁと思ったりもしましたが、これでよし!とします。
 
ここに育てたいのは大きくは2つ。
1つは、あの懐かしいビオトープです。
ビオトープ、皆さんはご存じですか?
ギリシャ語の「bios(生物)」と「topos(場所)」を合成した言葉で、生物が自然な状態で生息している空間、そのことを意味します。グリーンいっぱいの優しい空間、これを作って育てていきたいなと思ってます。ちっちゃな池には私が大好きなめだかさんたちにもきてもらって。そして端っこには、たぬきがおります。
そしてもう1つは赤いバラ。
優しさの中に凛とした赤いバラを咲かせたいのです。
赤いバラの花ことばは、愛情、情熱、感謝、希望、尊敬、信頼、真実、
そしてI love you💓
ムフっ、言葉にだすとちょっと恥ずかしいものですね。

そうそう、バラが咲くくねくねした道の奥には、こそっとたぬきがおります。
そしてこのたぬきたち、微妙に表情が違うんですよ。
見つけてくれるかなぁ・・・
わかってくれるかなぁ・・・
1つ見つけたら、もう1つもう1つと見つけて歩くのが楽しみになるといいなぁって思います。
さてさて、そんなことをイメージしていたら、急に大切なことを思い出しました。

それは、この庭を仕上げるために欠かせないアレ、アレがないのです。
アレとは、でっかいプロペラ付きの噴射機です。
一体どこにあるのか。とにかく探さなくちゃ!
私は「よし!」と気合をいれた瞬間、びょんと1回飛び跳ねました。
するとどうでしょう。
「あっち」
「えっ?」
「あっち」
どこからともなく指示がとんできたのです。
「えっ?」
戸惑いながらも、もう1回跳んでみました。
すると、
「あっち」
「違う、こっち」
その度にあっちだこっちだと指示がとんでくるではありませんか。
これはありがたい。
私は調子に乗って、どんどんびょんぴょん飛び跳ねました。
すると、
「痛ッ」
瞬間、足をとられてしまいました。
足元にはぐじゅぐしゅした穴が開いていました。
「あぁ、捻挫するところだった」
そんなことを考えていると、強い視線が目に入ったのです。
真っ赤な顔をしたモグラくんでした。
じーっとこちらを睨みつけています。
そして言いました。
「何するんだよー、ここは跳んじゃいけないところなんだぞ」
もぐらくんは怒ってました。
 
「おぉそうかそうかそうだったね。ごめんね。」
私はモグラくんに心から謝りました。
そしてひと声をかけたのです。
「一緒に見つけに行くかい?」
もぐらくんは黙ってうなずきました。
そこで、私はもぐらくんをひょいと抱っこしました。
今度はスキップして、ぴょんぴょん飛び跳ねます。
腕の中のモグラくんは、何事もなかったかのようにニコニコです。
“あぁよかった”
私はまたぴょんぴょんぴょん跳ねてあっちだこっちだと進んでいきました。
 
ふと気がつけば山のてっぺんです。
遠くに目をやると、ずっとむかーしの記憶が蘇ってきました。
そう、あの時助けてくれた校長先生との思い出です。
しばし思い出に浸っていると、モグラくんが私の顔を覗き込んでいるのに気がつきました。どうやらおりたいようです。
そっとおろしました。その途端、勢いよく駆け出したんです。
「おーい、待ってくれ~」
私は大慌てで追いかけました。
そして、やっと追いついたと目をあげた瞬間、
「わ、でかっ!」
そこには探していたアレがありました。
プロペラ付きの噴射機です。
私は駆け寄って直ぐにスイッチオン!
エンジン全開で庭までひとっ飛び、もぐらくんと一緒に無事、降り立ちました。

するとどうでしょう。
その噴射機は勢いよく周りはじめ、キラキラッの光のつぶが庭一杯に広がったんです。「わぁきれい・・・」
その光の中に入った私たちはそこに大きな大きな虹を見ました。
「わぁ・・でかい虹・・きれい🌈」
 
そしてその大きな虹は、校長先生の目にも止まりました。
校長先生は思いました。
「あぁ、あそこの庭のあの道、歩いてみたい」

 
そのつぶやきは私のところにもはっきり聞こえました。
「あぁよかった」
「そうだ、先生がいらしたら、私もたぬきに戻って道端に立とうかな。
どんな顔しようかなぁ。校長先生、元気になるといいな。」
 
おしまい


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