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宅建士試験合格講座 債権各論 > 賃貸借契約 #2
■ 7 不動産の賃貸人たる地位の移転
(1) 不動産の賃貸人たる地位の移転
① 不動産の賃貸人たる地位の移転
民法、借地借家法その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転します。
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賃貸人たる地位は、その譲受人に当然に承継される。その際に賃借人の承諾は不要である。
② 賃貸人たる地位の留保
不動産の譲渡人および譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨およびその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しません。賃貸人たる地位を譲受人に移転させたくない場合には、このような特約をすればよいということです。
この場合において、譲渡人と譲受人またはその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人またはその承継人に移転します。
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(2) 合意による不動産の賃貸人たる地位の移転
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができます。
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賃借人が賃借権の対抗要件を備えていない場合であっても、不動産の譲受人が賃貸借契約の継続を希望し、合意によって譲渡人から賃貸人たる地位を譲り受ける場合がありうるが、その際にも、当然に承継される場合と同様に、賃借人の承諾は不要ということである。
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(3) 賃貸人たる地位の対抗要件
賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができません。
[事例](復習)
BはAからA所有地を賃借し、その土地上に自己名義で保存登記をした建物を所有している。その後、Aが、その土地をCに売却した。
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(4) 賃貸人たる地位の承継に伴う債務の承継
賃貸人たる地位が譲受人またはその承継人に移転したときは、必要費および有益費の償還に係る債務および敷金の返還に係る債務は、譲受人またはその承継人が承継します。
■ 8 不動産の賃借人による妨害の停止の請求等
不動産の賃借人は、民法、借地借家法その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、次の①または②に該当するときは、下記の請求をすることができます。
① その不動産の占有を第三者が妨害しているとき
請求の内容・・・その第三者に対する妨害の停止の請求
② その不動産を第三者が占有しているとき
請求の内容・・・その第三者に対する返還の請求
■ 9 賃借権の譲渡および転貸
(1) 賃借権の譲渡および転貸の制限
① 賃借権の譲渡・転貸の制限
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができません。
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「賃貸人の承諾」は、実際に承諾の意思表示があった場合のほか、賃貸人が黙認している場合でもよい。また、承諾の意思表示の相手方は、賃借人でもよく、また、譲受人・転借人でもよい。
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② 賃借権の無断譲渡・無断転貸による解除
賃借人が賃貸人の承諾を得ないで、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸して、第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができます。賃借人に対する賃貸人の信用に背く行為だからです。
したがって、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸した場合であっても、賃借人のその行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は契約を解除することができません。
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「背信的行為と認めるに足りない」とは、「当事者間の信頼関係が破壊されたとまではいえない」という意味である。
(2) 適法な賃借権の譲渡の効果
賃借人がその賃借権を譲渡すると、賃借人は賃借人たる地位から離脱し、譲受人がその地位に代わります。
[事例]
AB間の賃貸借において、賃貸人Aの承諾を得てBが、賃借権をCに譲渡した。
この場合、Bは賃貸借契約からは離脱して、新たにAC間の賃貸借契約となる。
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(3) 適法な賃借物の転貸の効果
賃借人がその賃借物を転貸すると、賃貸人と賃借人との間の賃貸借関係は存続し、賃借人と転借人との間に新たな賃貸借の関係が生じます。本来であれば、賃貸人と転借人との間には、直接には何の関係も生じないはずですが、賃貸人を保護するために、次のような特則があります。
すなわち、賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負います。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができません。
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1. これは、賃貸人は、転借人に対して直接に、賃借人に支払うべき賃料の支払いや、賃貸借終了の場合の賃借物の返還などを求めることができるということを意味する。なお、これによって、賃貸人が賃借人に対して有している本来の権利を失うものではない。
2. 転借人は賃貸人に対して債務を直接履行する義務を負うだけで、転借人が賃貸人に対して転貸借上の権利を主張できるわけではない。
[事例]
AB間の建物賃貸借において、賃貸人Aの承諾を得て賃借人Bが、賃借建物をCに転貸した。
この場合、AはBに対して、賃貸借契約に基づき賃料を請求することができる。また、Aは、Cに対しても賃料を請求することができる。
なお、Cは、Bへの賃料の前払いをしていたとしても、Aからの請求を拒むことはできない。
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転借人が賃貸人に対して直接履行する義務を負うのは転貸借に基づく債務であり、しかも賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲が限度です。したがって、賃貸料の額と転貸料の額が異なる場合に、賃貸人が転借人に直接請求できるのは、いずれか少ないほうの額となります。
[事例]
賃貸料の額が15万円で、転貸料の額が20万円である場合、賃貸人Aが転借人Cに直接請求することができる賃料は15万円である。
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[事例]
賃貸料の額が15万円で、転貸料の額が10万円である場合、賃貸人Aが転借人Cに直接請求することができる賃料は10万円である。
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