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行政書士試験合格講座 天皇 > 天皇の地位・皇位の継承・天皇の権能・皇室財産と皇室の費用

第1節 天皇の地位

 旧憲法では、天皇は主権者であり(1条)、元首かつ統治権の総攬者とされていました(旧憲法4条)。これに対して、日本国憲法では、天皇は、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とされています(1条)。
 こうした旧憲法と日本国憲法との規定の違いを踏まえて、日本国憲法における天皇の地位をどのように理解すればよいのでしょうか。先ず、天皇が主権者(国政の在り方を最終的に決定する権利の保持者)や統治権(国土および国民を支配する権利)の総攬者でなくなったことは疑いありません(1条、4条1項)。それでは、元首でもなくなったのでしょうか。この点については、天皇元首説、内閣総理大臣元首説、元首不在説などが対立しています。およそ『元首』を、対外的に国を代表する資格のある国家機関の意味に解するならば、全権委任状や大使および公使の信任状の認証(7条5号)、批准書および法律の定めるその他の外交文書の認証(同条8号)、外国の大使および公使の接受 (同条9号)といった国事行為を行う天皇が 『元首』であるともいえるし、こうした国事行為も内閣の助言と承認を要するというかたちでその実質的決定権が内閣にあることにかんがみれば(3条)、内閣ないしその代表者である内閣総理大巨が『元首』であるともいえます。
 いずれにせよ、旧憲法から日本国憲法になって天皇の地位に大幅な変動があったことは間違いありません。そこで、天皇に裁判権が及ぶのか否かという問題も議論されるようになりました。
 この点について日本国憲法は触れるところがありません。従来、ほぼ一致していわれてきたのは、摂政や国事行為の臨時代理がその在任中訴追されないことを根拠に(皇室典範21条、国事行為の臨時代行に関する法律6条)、天皇に刑事裁判権は及ばないということです。その一方で、天皇に民事裁判権が及ぶか否かについては争いがあります。
 この問題について触れた最高裁判例は、次の一件のみです。

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