見出し画像

宅建士試験合格講座 債権各論 > 請負契約

第2節 請負契約

 請負契約は、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生じます。
 土地の造成工事や家屋の建築工事などは、ほぼ、この請負契約によって行われます。

■ 1 請負人・注文者の義務

(1) 請負人の義務
① 仕事の完成義務
 請負人は、仕事を完成させる義務を負います。
 
② 目的物引渡義務
 請負契約の目的が家屋の建築の場合など、仕事の目的物の引渡しが必要な場合は、請負人は、完成した仕事の目的物を、注文者に対して引渡す義務を負います。
 
(2) 注文者の義務(報酬支払義務)
 注文者は、仕事の結果に対して、請負人に報酬を支払う義務を負います。
 報酬は、仕事の結果に対して支払われるものであるので、仕事が完成しない場合は報酬を支払う必要はありません。つまり、請負人の仕事の完成義務と注文者の報酬支払義務は同時履行の関係に立つのではなく、請負人の仕事の完成義務のほうが先履行となります。
 それに対して、仕事の目的物の引渡しが必要となる請負契約の場合は、報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければなりません。つまり、請負人の目的物引渡義務と注文者の報酬支払義務は同時履行の関係に立ちます。


■ 2 仕事が完成しなかった場合の請負人の報酬請求権

 前述の通り、原則として、請負人は、約束した仕事が完成した後でなければ、報酬を請求することができません。しかし、例外的に、仕事が完成しなかった場合であっても、既に行われた仕事によって注文者が利益を受けるときは、その利益に対応する部分の報酬の請求が認められる場合があります。
 すなわち、次の①または②に該当する場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなされ、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます。

① 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき
② 請負が仕事の完成前に解除されたとき

 なお、注文者の責めに帰すべき事由によって仕事を完成することができなくなった場合は、請負人は報酬の全額を請求することができます。
 
[事例]
A工務店はBから家屋の新築工事を請け負った。しかし、工程の50%を施工した段階で、Aの経営困難により完成時期までに全工事を完成させることが不可能になってしまったため、BはAの債務不履行を理由に請負契約を解除した。その後、Bは既施工部分を引き取って、別の工務店によって建築工事を続行し、家屋を完成させた。
 この場合、Bは既施工部分については利益を受けているので、その部分については仕事の完成とみなされ、Aはこの部分に対応する報酬を請求することができる。


■ 3 請負人の契約不適合責任(請負人の担保責任)

(1) 請負人の契約不適合責任
 請負契約において、仕事の目的物が契約の内容に適合しない場合は、売買契約における売主の契約不適合責任(売主の担保責任)と同様のルールが適用されます。
 すなわち、契約不適合を理由として、注文者は請負人に対して①履行の追完の請求、②報酬の減額の請求、③損害賠償の請求および④契約の解除をすることができます。
 
(2) 請負人の契約不適合責任の制限
 契約不適合の原因が、注文者側の事情に基づく場合は、請負人は責任を免れます。
 すなわち、請負人が種類または品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合)に、その不適合が注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じときは、注文者は、①履行の追完の請求、②報酬の減額の請求、③損害賠償の請求および④契約の解除をすることができません。
 ただし、請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、注文者は、上記の①~④をすることができます。このような場合は、請負人が注文者にその旨を通知していれば、契約不適合の発生を防止できたからです。
 
(3) 目的物の種類または品質に関する担保責任の期間の制限
 請負人が種類または品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡した場合において、注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除をすることができません。
 ただし、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人がその不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、上記のルールは適用されません。このような場合にまで、期間制限によって請負人を保護する必要はないからです。

ここから先は

1,637字
この記事のみ ¥ 300

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?