解決すべき課題を見出す“問い”のお作法
こんにちは!
合意形成ラボ研究員のゴウイケイコです。
梅雨が明けてから連日暑いですね。こういうときはエアコンのきいた部屋で読書が一番。ということで、今日は書籍『問いのデザイン 塑像的対話のファシリテーション』(安斎勇樹、 塩瀬隆之)をご紹介します!
問いのデザインで合意形成の次の一手を引き出す
なぜ合意形成ラボで、書籍『問いのデザイン』を取り上げるのか、まずはそれを簡単にご説明したいと思います。
ビジネスシーンで問題になるのは、現状と目標の間にギャップがあること。そのギャップこそが「問題」であり、そこに「解くべき課題」があります。
何を問題として捉えるのか、その問題をどのようにして関係者の間で共有し、解くべき課題として合意を形成するのか。「問い」についての対話を通して思考を深めることがより良い相互理解と合意形成につながります。
さて、ビジネスシーンではインタビューやヒアリング、上司への確認など、さまざまな問いかけを行っていることと思います。「ここはどうしたらいいと思う?」のように、部下の意見や真意を引き出すこともあれば、「これは本当に正しいのか?」と自分自身に問うこともあるかもしれません。
書籍『問いのデザイン』ではこういった問いかけを「質問」「発問」「問い」の3つに分けて比較整理しています。
①質問=問う側は答えを知らない、問われる側は答えを知っている。
②発問=問う側は答えを知っている、問われる側は答えを知らない。
③問い=問う側も、問われる側も、答えを知らない。
①質問は一般的なインタビューのように「情報を引き出すトリガー」として、②発問は部下に問いかけるような「考えさせるためのトリガー」として、③問いは誰も答えを持たないなかで「創造的対話を促すトリガー」として、それぞれ機能する、というのが著者の見解です。
この分類、私にはすんなりと入ってきました。ワークショップでファシリテーターを務めるとき、最初のアイスブレイクでは「今日はどの駅を使いましたか」のような質問をします。ワークのチュートリアルでは「今回は何が適切だと思いますか」と発問をしますし、ワークショップでは参加者が自由に発言し、活発な意見交換ができるような発信を心掛けています。それがまさに対話を促す「問い」です。
みなさんはいかがですか。普段の仕事や周囲とのコミュニケーションで、自然とこれらを使い分けているのではないでしょうか。
「問い」を武器に対話を重ねて解くべき課題を鮮明化
私たちが研究している「合意形成」も「問い」が非常に重要だと思っています。合意形成の対象は未来のあるべき姿やありたい姿。それが1年後なのか5年後なのか、あるべき姿は会社や組織なのか、プロジェクトや製品なのか、あるいは個人のことなのか。参加者それぞれの現状認識やスコープが違っていては合意ができません。
書籍では架空の高校1年生A君と母親の事例で解説をしています。A君はテストの成績が悪いと、お小遣いが減らされることを嫌だと思っていました。そこで、設定した問いが「楽して稼げるバイトはないだろうか?」。
一方、母親は勉強も遊びも大切だから、お小遣いも渡したいと思っていますが、お小遣いはゲームに浪費されて成績も上がらない。「どうすれば、息子が勉強してくれるだろうか?」という問いを立てます。
A君が自分の問いを解こうとすると、母親の問いは解決が難しくなりそうです。母親の立場に立てば、A君には「どうすれば学校の成績が上がるか?」という問いを立ててほしいところですが、そもそもA君は勉強したいと思っていません。
著者は「この問題の本質は、親子の「関係性」にある」と指摘。母親はA君の中長期的な人間形成に重きを置いて、何のために勉強するのか、家庭の学習環境をどうすべきかといった問いを設定して、じっくりと「対話」すること必要だと述べています。
このような場面はビジネスシーンでもよくあるのではないでしょうか。たとえば、部下は販売数を伸ばすためには広告宣伝費が必要だと申請をする。しかし、上司は広告宣伝の効果を認めつつ、個人の営業力があってこそ効果があると考えている。部下は「どうしたら予算が下りるのか」、上司は「どうしたら営業力が高まるのか」、それぞれに問いを立てていますが、両者がかみ合っていなければ、事態を打破することはできません。
課題を解決するためには関係者の間で解くべき「課題」で合意形成する必要があります。書籍では課題設定のコツやヒントがたくさん紹介されているので、詳しくは書籍をご参照ください。
書籍ではさらにワークショップのデザインやファシリテーションの技法なども紹介されています。お時間ありましたら、ぜひお手に取ってみてくださいね。
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