80_生誕の湯① -杉の井ホテル棚湯(観海寺)-
2月末、歳を重ねた。
誕生日はお湯屋を巡ろうと決めていた。それもちょっぴり贅沢なお湯、もしくは行ってみたい温泉に行こうと。生誕の湯と名付けて、3ヶ所巡ることにした。
1ヶ所目は杉の井ホテル「棚湯」。塩化物泉。午前中にも関わらず、多くの人が訪れていた。特に若い層が目立っていたが、それもそのはず。2月下旬、全国の大学生にとっては春休み真っ只中。旅行のひとつやふたつしたくなる。
棚湯に入るのは2度目だった。
1度目は数年前に家族旅行で宿泊したときのこと。はじめての家族旅行で別府を訪れ、のちに別府で数年過ごすことになるなんて、これっぽっちも想像していなかった。
棚湯の横には、水着着用で利用できる温水プール「アクアガーデン」がある。遠い昔の記憶を辿っても、水と光が融合した噴水ショーのことや、アクアガーデンで遊んだことしか思い出せなかった。棚湯は夜遅くにバタバタ入っただけだったからだろうか。今日は晴天。やや風強し。少しでも身体が風に触れると、ひやりとする。
棚湯は、その名の通り棚田のように階段状に浴槽が作られており、内湯含めて5段ある。上から1段目が内湯、2段目は外に浴槽があるものの、屋根がある半露天式。3段目以降は完全露天で、段数が下がるごとに浅くなり、5段目は寝湯になっている。
棚湯から眺める別府湾や市街地はまさに絶景そのもの。昼と夜、どの時間に露天風呂に入りたいかと聞かれたら迷わず「昼です」と答える。夜の静かに光る街景色も良いが、青空や別府湾の美しさを堪能できるのは、明るい時間の特権だ。圧倒的な開放感に身を委ねていると、いつの間にか時計の歯車からも解放される。
湯加減はさほど熱くないため、ふらっと訪れた観光客でも、しっかり別府温泉を満喫できる。ただし、樽風呂は少しあつめだった(はず)なので、やや注意。棚湯のあとは、ほぐし湯へ。円形の浴槽には、側面から中心に向かって、あちこちから水流が出ている。肩や腰に水流を当てると、凝り固まった身体が徐々にほぐれる。ほぐし湯の浴槽は、昔ながらのモザイクタイル柄で、肌触りがつるんとする。青ベースのデザインだから、空の青さでいっそう映える。
すぐそばに展望サウナもあったが、あいにくサウナは苦手なため、最後はやはり樽湯に落ち着く。やや大きめのヒノキの樽湯。肩まで浸かると、ざぶんと音を立てながら、多量のお湯が溢れ出る。ごくらく、ごくらく。
2ヶ所目までのバスの運行間隔は1時間に一本のみ。ひとつ逃すと、1時間待ち。ちらちら時計を気にしつつ、もう一度棚湯に入り、脱衣所へ。
着替えるうちに、受付でバスソルトをいただいたことを思い出す。別府にいる間は使わずじまい。上京して、はじめてお湯をはったときに使った。
新しい浴槽にふわりと甘い、香りが広がる。