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ごひゃお流・周波数帯域との付き合い方

私です。

先日、Steinbergのページをダラ見していたら、
セールで結構な数の音源がお安くなっているところを目撃しました。
(12/11まで)

前の記事で二胡の音源が欲しいと言いましたが、
残念ながら今回のセール対象ではなかったので、
代わりに他の音源を一つ買って諦めようと考えました。

で結構悩んだんですよね。

ジャンルだけ見れば色々と魅力的な音源はあったんですが、
使う人次第で当たり外れが大きい予感のあるものばかりだったんです。

いやあね、ウェットな音源って自由度が低いんですよ。めちゃくちゃ。
特に一部箇所のメインフレーズを担当させようと思うと、
他の楽器の空間まで全部そっちに寄せる必要が出てきます。
ドライ音源をウェットにできても逆は無理です。
向こうが合わせてくれや。

あとこれはオーケストラやボーカル系にはありがちなのですが、
そもそも自由に奏でさせてくれないパターンもあります。
リアルを追求したが故に各キーの質感がバラバラだったりとか、
奏法やときにはリズム、サンプルの長さが限定的だったりとかね。

散々学校でも思っていることですけど、リアル志向ってホントに嫌ですね。
音源はそこまでリアルじゃなくていい。
リアルに寄せるのは使う側の仕事です。
まあそれで言うと私は職務放棄してますけどね、それは置いておいて。

そういった懸念事項が頭に浮かんでいましたので、
音源のジャンル、想定される使用場面や頻度、値段、サンプルや紹介映像から判断できる情報などを考慮して、
もし失敗だったとしても比較的ダメージの小さそうな音源を買いました。
いつかさり気なく披露できればと思います。


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さて今回はDTM話です。

予めお断りしておきますと、
この記事はお役立ち情報を売るための記事ではありません。
あくまで、ごひゃおがこれまでDTMをやってきた中で感じたことを書いているだけです。
情報の価値は保証できません。

が。
音楽に限らず、感じたり気付いたことを自分の中で理論化するというのはとても大事なことです。
作業や問題解決の速度が格段に上がりますからね。

もし今回の記事の内容について今まで考えたことがなかったという方は、
これを機にご自分でも考えてみては如何でしょうか。


DAWを用いるDTMerの皆さんはイコライザー(EQ)って使いますか。
使いますよね。基本ですからね。

改めて説明しますと、イコライザーとは、
音の周波数特性を操作して、ノイズ等により発生した音質変化を補正したり、
音の印象を変える音作り等に用いたりするエフェクトです。

皆さんはどちらの用途で使うことが多いのでしょうか。
私はどっこいどっこいといったところです。

ただ、基本的にはカット方向で使いますね。
そもそもの話、EQにおいて「ブースト」とは、「その他の帯域のカット」をも指すケースが多いわけですから。
これを忘れていると、「EQで特定帯域をブーストしたけど、その分フェーダーを下げたらなんかスカスカで残念な感じに聞こえる」というミスを犯してしまいます。
完成形から余計な部分を引いていくのが安牌です。

ではどの周波数をカットすればどういった音が取り除かれるかについてはご説明できますか。
別に、これは他人を納得させるものである必要はありません。
あなた自身が納得できるものであればそれで構いません。

今回は、そういうお話。


皆さんお好きなEQはありますか。

なんでもいいですよ。
よくあるところだとPro-Q3(私も大好き)とか、Renaissance EQとか、
ちょっと飛び道具的なところだとSplit EQとか。
(あれ? 意外とメジャーなEQってパッと思い浮かばないな?)

あとはアナログ系、コンソール系、グライコなんかも良いですね。
例えばPultec EQ、SSL系、Neve系、Mäag EQ等々。
すんません、グライコは今学校で目にする実機ぐらいしか知らんです。

この内後ろで挙げたグループは、
操作できる周波数がある程度固定されていることが多いですよね。

例えばPultec EQなら低域は20、30、60、100、みたいな。
Mäag EQに至っては40000Hzなんて周波数にも対応してますよね。
聴こえないはずなんですが、振動としては確かにそこに“ある”からか、
全体の響きは確かに変わるんですよ。
面白いですね。

話を戻しまして、特にグライコは完全固定です。
デジタルEQのように細かく周波数を探る必要がないという点で、
初心者におすすめしている人をたまに見かけます。
私もEQの勝手がわからないうちはそのへんを使うほうが良いと思うな。

ただ、厄介なことに、
操作できる周波数が固定されているのは良いのですが、
その周波数が機種ごとに全然違うという問題点があります。

仮に、普段と違う機種のグライコを使うことになった時、
或いは普段デジタルEQを使っている時、
どうやって操作する周波数を見つけると良いのでしょうか。


対処法といたしましては、
普段から周波数と鳴る音をセットで覚えておき、
操作したい音に最も近い周波数から動かすというものがあります。

デジタルEQ(パライコ)であれば、
バンドをドラッグしながら当たりをつけるのではなく、
グライコと同じく操作する周波数を一点に絞り、
まず縦(音量)の調節から行う
のです。
横の微調整は後でいい。

ここで大事なのが、
よく説明で用いられるような「○○~○○Hz」という範囲ではなく、
「○○Hz」とハッキリ数字一つで覚えてしまうことです。
範囲だとその境界線に対応できなくなりますからね。

「じゃあどの機種を基準に覚えれば良いんだよ」って?
機種で覚えるのはおすすめしません。
バンド感覚がバラバラなEQというのもありますので。

ここは機械的に、ヒトの可聴域である20~20000Hzを均等に24分割し、
その分割点である25個の数値で覚えてしまいましょう。
これならば、多少バンド位置の違うEQであっても対応できます。

ダァン! 「25箇所の周波数だと!?」
確実にカットしたいのです。それぐらいは必要。

まあまあそう震えないで下さい、
今回は機械的ゆえに法則性がありますから。

ヒトの可聴域の均等分割については以下の記事を参照。

ここから24分割を引用しますと、こうなります。

・20
・27
・35
・47
・63
・84
・110
・150
・200
・270
・350
・470
・630
・840
・1,100
・1,500
・2,000
・2,700
・3,500
・4,700
・6,300
・8,400
・11,000
・15,000
・20,000

お分かりですね。
覚える数字は「20-27-35-47-63-84-110-150」の8つで良いのです。
あとは後ろのゼロの数が違うだけ。
簡単ですね~。

まああとは取り扱う頻度を考えて、
48分割バージョンから97-550-730(73)-1700Hzの四つ(五つ)の周波数をオプションとして加えると、
もうちょっと対応しやすくなるかもしれません。
そこはお好みで。

以上25(+5)の周波数について、
自分の中で「こういう音が鳴る」と言葉にして覚えると良いです。

覚え方は単簡単。
ホワイトノイズ(或いはピンクノイズ)を流し、その帯域のみを聴く。
これだけです。

この時、Q幅(或いはカーブ)をあまり絞らないようにすると良いですね。
そもそも正弦波ではなくあくまでもノイズから聴くこととしたのは、
その周波数を中心とした領域の音を覚えるためです。

だってそうでしょう?
普段EQ使っていて、例えばQ幅が91とかいうアホみたいに鋭いバンドで操作することなんていうのは滅多にありませんよね。
もちろんEQは補正をするエフェクターであり全くのゼロとは言い切れませんが、
もし仮に、毎回同じ周波数をその幅で補正しているのなら、
そもそも録音環境が悪いか使っている音源が悪いのでそっちを改善しろという話になります。

なのでQ幅は緩やかに、領域の印象で覚えたほうが良いのです。
おすすめの幅は2.1辺り。0.7の倍数で覚えると良いかもしれません。
基本的にQ幅1.4が1オクターブであることが多く、
これもまたQ幅を操作する際の一つの基準になるのではと思います。


さて、ここからは完全にごひゃお流の話になります。

私はあの25の周波数について、
「どの帯域がどう不快か」で認識するようにしました。
人は悪いもののほうが記憶に残りますから、
そのほうが覚えやすいでしょう。

前に触れた通りEQの基本はカットです。
では何をカットするのか?
一つはトラックごとの被り、特に低域で他のトラックと被っている部分。
そしてもう一つが、不快な音です。

では「不快な音」の中で主たるものは何か。
そう、ノイズですね。
音を覚えるのにホワイトノイズを用いた理由はここにもありました。
不規則に出される音に快も不快もあったもんじゃないですからね。

各帯域の不快さを一つずつ覚えておき、
流している音に同じ不快な要素があった場合、
それに対応した周波数をカットすればよいのです。
微調整はその後。

逆にいえば、
不快な要素の少ない帯域は、ブーストするのに美味しい帯域ということでもあります。


では、お待たせしました。
各周波数帯域に対する私ごひゃおの認識はこうです。

  • 20Hz
    聴こえない。心臓への振動として聴く音。
    低音楽器の20Hz以下を残すかは割とケースバイケース。

  • 27Hz やや不快
    ギリギリ音として聴こえる領域。
    若干締め付けるような感じがする。

  • 35Hz 心地よい
    超低音唸りが効いてくる美味しい帯域。
    ここまではっきり鳴る音色であれば残したい。
    (或いはサブベース系プラグインで補強したい)

  • 47Hz 割と不快
    胸の底に伸し掛かるような感覚がする。
    基本的に超低音の中では中途半端な音で、あまり操作することはない。

  • 63Hz 譲り合いの起点
    不快感はないが特別な印象もない。
    ブーストしてもあんまり旨味は感じない。

  • 84Hz ごひゃおがこの世から消し去りたいもののひとつ
    低域が籠もっていると感じるときの元凶。ドコォーという不快な籠もり方をしている。
    ここが出ているとめちゃくちゃ気持ち悪い。
    主にベースが「ここは俺の領域だ」と言わんばかりに占有することが多いが、一刻も早くこの世から消えて頂きたいので容赦なくカットするようにしている。
    ここが出ているとめちゃくちゃ気持ち悪い。もうホントとにかくキモい。
    やめてくれってレベル。

  • 110Hz ブースト起点
    やや息苦しさはあるが、不快ではない。

  • 150Hz 不快
    周囲より若干音が遠いくせに頭と胸を締め付ける感じがする。
    不快度は200Hzよりも勝る。
    ベースのために少し残してやっても良いかな程度の認識。

  • 200Hz 割と不快
    頭の奥を締め付けるような感じで、基本的にはカットしたい。
    ここを残して良いのはスネアだけ。

  • 270Hz 少し不快
    胸にのしかかってくるようで不快。
    次の350Hzが音色イメージを大きく左右帯域であるため、
    そこを残す場合はこのラインがローカットのラインとなる。

  • 350Hz きわめて不快
    耳に対する強い圧迫感があり、基本的には残したくない。
    ただし、ここは音の温かみを担当する帯域でもあり、
    安直に削ると音全体の印象がガラリと変わってしまうので、
    付き合いが難しい。

  • 470Hz 少し気になる程度
    このあたりでは最も音が聞き取りやすいが、
    若干喉に伸し掛かる帯域でもある。

  • 632Hz 少し不快
    頭や喉に対する締め付けを感じる。

  • 840Hz ブースト起点
    全く不快さのないクリアな帯域。
    ベースやスネアのブーストでお世話になることがある。

  • 1100Hz 少し不快
    まだ耳障り感はないが、圧を感じる。
    遠い音を近づける際に少しだけブーストすることがあったりなかったり。

  • 1500Hz ブースト起点
    このあたりから高域特有の耳障りさが増してくる。
    とはいえ1100Hzよりはクリアに感じ、
    2000Hz手前をブーストする際はここが起点になる。

  • 2000Hz 少し不快
    まだ比較的スッキリしているものの、耳障りさもそれなりにある。
    汎用的なブースト起点は1500Hzに譲り、
    ここぞというトラックでのみブーストする必殺技のような帯域。

  • 2700Hz 不快
    キンキンしている。

  • 3500Hz 不快
    めちゃくちゃビブラートの細かい音で和音を鳴らしたときの「ビヨビヨビヨビヨ」というゴムみたいな音の不快な共鳴が主にこの帯域。
    そもそもそんな音を出さなければ良い話。

  • 4700Hz ブースト起点
    不快さがないわけではないが、このあたりでは最もクリアに聴こえる。
    「音の高さ」を意識して操作する最終ラインがここ。

  • 6324Hz とても不快
    眉を顰めるレベルで不快な音。

  • 8400Hz ブースト起点
    高域グループの中では最も不快さがない。
    恰好良くしたいトラックがあれば片っ端から雑にブーストしていくことが多い。
    そしてあとで高音過密に悩む。

  • 11000Hz きわめて不快
    主に金物系の領域。
    ハイハットはハイハットであるが故にここでのカットを免れているだけであり、
    本来ならばジリジリとした不快なノイズしか聴こえないこの帯域は根こそぎ亡き者にしたい気持ちでいる。

  • 15000Hz 少し不快
    耳鳴りノイズの部類。
    とはいえ11000Hzほどの不快さはないため、
    ミックスの中で通りを良くしたいメインどころのトラックではブーストすることがある。

  • 20000Hz
    聴こえない。

以上がごひゃおの各帯域に対する印象です。

上の方で挙げた「97-550-730(73)-1700Hz」については、
私は25個の周波数をQ幅を広げて操作しても対応できなかった場合にのみ扱うことにしています。
例えば、「1500Hzでは籠もっているように聴こえるが2000Hzでは逆に耳障り感が際立つ」といった場合に、
Q幅が3.5~4.9ぐらいのバンドで1700Hzを試してみる、といった具合です。


如何でしたでしょうか。
共感できるところもあれば、
「そこを削るとは勿体ない」と感じたところもあったかと思います。

そのあたりはリスニング環境や使用している音の違いにもよりますので、
私の感想に頼らず、是非ご自分で言語化してみることをおすすめします。
可能であればこの記事のようにネットに公開して頂きたいですね。
人ごとの印象の違いに触れるのは大好きですので。
是非々々お願いしたいですね。

最後になりますが、一番大事なのは「耳で判断する」ということです。
画面を見てはいけない。

これだけ散々数字で話してきたのに最後はそれか、
という感じもしないではないですが。
我々が扱っているのは「音」でありますので、
最後は聴覚を使って判断しなければ意味がありません。

数字とイメージをから操作帯域を決めた後は、
忘れずに、実際の音を耳で聴きながら微調整してあげましょうね。

……ま、その微調整がいつも上手く行かないんですけど。

では、今回はここまで。

宜しければチップを送って頂けると励みになります。
なんならあれです、
「任意」の欄から普段よく操作する周波数と同じ額のチップを投げて頂いてもいいんですよ?

ほらそこのMäagユーザー。
あなた、40000Hzブーストするの、好きでしょ?


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ごひゃお
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