釣りをする顔面にともしび

橙々とした叢雲を掻い潜る月光下、銀色流るる川に竿のぶら下げたのがひとりふたり。やれ鱸が跳ねる、鯉が口をぱくぱくさせる、水面の無に立ち騒ぐ原は竿から伸びた釣り糸で。おっと、こりゃあ大物だぜ、月色の艶を纏った竹竿のしなり、足をぐっと踏み込んで恍惚。えいやっ。竹の節がぎしぎし。腰を低くして引き上げると、ずるずると暗闇の釣れに釣れて、引きずり込んで、星に舞い、月に謡い、蒼い魚の流れ星。お猪口に淡水、酒をつぎ、袖を透かした愛の渡し船で惚れ惚れ、波に揺らして、顔面に。川端には、破れ障子の芥の散らちら。背を伸ばし仰ぎ見、囁き、せせらぎ、ひっそりランデブう。

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