竜田姫
※ボツ作品です。最近駄目なものばっかなので、取り敢えず出してみよう、と思った。
春は佐保、秋は竜田
ぞろぞろあまたのお人
折々織り織り、からくれないない
暑きが過ぎ、佐向のまだ来ざる時なり。
おい、きいたか、あっちのね、西の山、
ついに出やがった
出たって、一体何がでたのさ
見りゃわかる、行ってみやがれ
ねえあんた、出たってね
そうよ、あたしなんか、
手握ってもらいました。
ほんと美しいお方よ
西の山へ向かうあまたの人の列
赤や黄が、舞う舞うひらひらにぎやかな、
おにゅうの縮緬、柔柔、乳乳
屋台がやあやあ、どんからり
菊色のきらりと光る。はらりぽろり、
残る菊。残らざる菊。
西山のね、道中にいるんだってさ
たつたつ立つ裁つ竜田姫。
今年も実りをお届けに。
真紅の布地、黄金の単帯、
公孫樹のかたちの髪飾り
はっとするほど白い肌
照れるお天道、つやの蜜柑は未だ酸い
かたかたはたや、打ち出る衣の爛々なる。
七夕には、織姫はんが来なすったでしょう
会いたいわねえ
さっぱりした中にも、どこか艶やかな。
きれいな声を吹かして秋をいろどる。
虫熟し、蒸し蒸し、無視、虫も惚れちまう。
あら、いやな蚊ねえ
いけません、殺生なんていけません。
きれいなおことば。
遅れ蚊、おくれがれがれがレガシー
山はもみじが九十九折おり織りなす、
赤にこがねにうつくしき
ああ
秋が来にけり。