太陽のパスタ、豆のスープ
恋人と別れてから心の隙間を埋めるため失恋に関する小説を読み漁っている。
その中のひとつで『太陽のパスタ、豆のスープ』という本を先日読み切った。
婚約をしていた人から急に別れを告げられるところから始まるこの話は失恋をしたての私にはとても胸が痛かった。
フラれた翌日の明日羽の描写は、私みたいだなと思うと同時に、この世の中にフラれて目が開かなくなるほど辛い別れを経験してこの本を読んでる人もいるのかな…とも思った。
そういう人がいるかもという安心感のあとに、いやそんな辛い人は私だけでいいのにと思う。
あらすじを読んでいたから最終的に前向きになれそうな本だと思って手に取ったけど、今の私にとって“前向き”という言葉は全く対極のところにある言葉で、もしかしたら前を向く明日羽を羨むだけで前を向けないんじゃないかと不安になった。
が、結果的にこの本にはすごく救われた。
私の場合、ドリフターズリストを作る明日羽にではなく、私にも心配してくれる友達や家族がいて、私の元を去っていった人よりその人たちがいちばん大事だと気付いたからだ。
辛いと連絡をしたら「簡単に忘れる相手だったら初めから同性と付き合おうと思わないでしょ。初めて付き合ってみてもいいと思った相手だったんだから特別だったんだよ」とずっと話を聞いてくれた友達、失恋のおススメの本を聞いたらそれとなく察してくれて「ゆっくり忘れていけばいいよ」と言ってくれた友達、何かを察してるけど踏み込まないで「ご飯食べてる?」とだけ聞いてくれた友達、別れた次の週に一晩中お酒に付き合ってくれた友達、友達と飲み明かした飲み屋に居合わせて「泣けるくらい好きな人に出会えたことは幸せだからその気持ちを大事にしなね」と言ってくれた常連のお客さん、「同性も好きになる可能性を広げることができてよかったと思ったらいいよ」と言ってくれ、帰り際抱きしめてくれたバーの女店長さん…たくさんの人がそれぞれの優しさでそれぞれの言葉で優しさをくれた。
姉は、私がやむを得ない理由で終電を逃し、今まではこういうとき彼女の家に行っていたな…と思い出して泣きそうな時に家に泊めてと連絡をしたら快く迎えてくれてお湯を溜めて待ってくれてあたたかいココアを淹れてくれた。姉がそばにいると別れてから全然寝れなかった夜もすぐ寝ることができた。
一晩中お酒に付き合ってくれた友達に付き合ってくれてありがとうと言ったら、「それも今まで〇〇が私に優しくしてくれなかったら私も優しくしてないし、いいことも悪いことも自分に返ってくるようになってんのよ」と言ってくれてその言葉を大切にしようと思った。
別れてから悲しい自分にばかり気を取られ、戻れない過去だけを振り返り周りが見えていなかったけれど、たくさんのひとが私に優しい言葉をかけてくれたとても大切なことをこの本を読んで思い出して今まで流してた悲しいとは違う種類の涙が出た。
まだ完全に失恋を忘れられないし、また思い出して泣いてしまうかもしれないけど、私には私を大切にしてくれる人がいて、私も大切にすべき人がたくさんいて、その人たちにひとつずつ優しさを返していけたらと思う。
もっと心が落ち着いたらまたこの本を読み直してドリフターズリストを書いてみようと思う。
きっとまた違うところに共感ができるかもしれない。
太陽のパスタと、豆のスープありがとう。
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