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今よりもKYだった頃の話

まだまだ寿司屋に入ったばかりだった頃、仕込みとか教えてもらいながら毎日を忙しく過ごしていた。

その頃、大将からよく「もっとシュッとしろ」と怒られていた。関西独特の言い回しかどうかはわからないが、要するに「もっとうまく立ち回れ」ということでいいと思う。

いまいちピンと来ていなかったが、ある日やっと納得できる事例が起きた。

その日は日曜日でお客さんが早々にいなくなり、大将と2人で近所の飲み屋に行こうということになった。働いていた寿司屋は飲み屋街の中で夜遅くまでやっているということでお水系の方によく利用してもらっていた(同伴、アフター、出前等)、なのでたまにはこちらからも行こうとのことだった。

1件目は隣にあるショットバーに行き、お店のマスターとみんなで景気の話などしていたと思う。こちらのバーも日曜日の夜23時を過ぎて他のお客さんも帰ってしまったのでもう閉店するとのことだったでので店を後にした。

2件目はラウンジ。誰もいないと思っていたが、見覚えのあるお客さんが。当時寿司屋に毎週顔を出してくれていた社長さんが珍しく1人で盛り上がっていた。

「おー、誰かと思ったら寿司屋の大将と坊主やないか」

ちょっと怖い常連さんだったが大将はサッと隣に座り「いやー、いつもありがとうございます」と自然に一緒に飲む流れに、常連さんもいつもカウンター越しと話す大将と隣で話すのが嬉しそうだった。

こういう女の人が隣に座って接客するラウンジは風営法で24時までしか営業はできない。なのでその時はすでに早く帰りたいと思っていたが1時間くらいだからいいかと思っていた。

だが、1時間たっても常連さんが帰る気配がない。

常連さんは珍しく出来上がってしまい、若干面倒くさい感じになってしまった。お店のママさんも困った顔をしており、とりあえず女の子たちを先に帰らせる始末。

ここで大将が口を開いた「○○さん、もう一軒行きましょう!」

マジか、と思った。しかも1件目のバーを提案している。思わず「いや、店もう閉めるって言うてましたやん」と突っ込んだ。

結局バーではなく、朝までやってる近所のうどん屋さんにママさん含めたみんなでタクシーで向かい、そこでも飲んだり食べたりして解散したのは3時を過ぎたころだった。

常連さんをタクシーに押し込み、ママさんと別れ、大将と帰りのタクシーに乗りながらしこたま怒られた。



なぜか?



答え

1.常連さんは飲みすぎてたからもう一軒行かせるわけにはいかなかった。

2.1件目のバーが閉まっているのは知っている。あのまま閉まったバーに行けば解散の流れになった

3.ママさんも昼間の仕事があるから本当は帰りたがっていた。


すごくショックだった。

大将の考えを汲み取れなかったことも、ママさんに気付かなかったとはいえ迷惑をかけていたことに。

飲食店をやるということは料理が美味しいだけではなく、ここまで空気を読んで動かないと駄目なのかと考えさせられた日でした。

シュッっとしろというのはお客さんに可愛がってもらうだけじゃなくてある程度コントロールできるようにもなれ、ということかもしれない。

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