本の感想④
誠実な嘘
著マイケル・ロボサムの海外小説です。
二人の女性、メガンとアガサの交互語りで物語が進む形式。アガサ視点では、メガンは上流階級で王道な人生を歩んでいる女性。アガサはアガサで闇を抱える女性。
ストーキングしつつ、遠くからメガンを見ているだけのアガサが実際にメガンの友人となるシーンは、私にとってそれまで単調だった物語の起点になりました。
アガサには、かつて愛する弟を事故で失い、牧師からの性的虐待、また前夫と別れる原因となった不妊などなど…闇てんこもりの過去…。
メガンのような人生をなぞりたいアガサ。
アガサの過去は同情に値するものですが、それと同時にやってきたことが極悪で、筆者が引っ張られないよう上手くバランスを取っていると感じました。
ラスト、メガンのしたたかさはまぁ、そうなるか、という感じ…。私自身、近々結婚する身だけれど、普通に子供ができる自信なんてもちろんありません。
結婚後妊娠して産休育休復帰を滑らかにしている人が一定数いる一方で、アガサのように子供ができないことが原因で陰を落としている人もいるかも知れない。もちろん、アガサ自身は不妊のみが原因でこのような事態を起こしたわけではないけれど…。
アガサのように、鬱屈した人生しか送れていないと感じたとき、私は吹っ切れるだろうか。自分が子供の頃から想像していた人生を歩む人の周りで、私は私の陰を認めることができるのだろうか。光が強すぎて、焼けてしまいそうに感じるこの感覚を愛していくことができるのだろうか。
読みながら、特別なことを期待しないことの難しさを痛感しました。当たり前に過ぎていくこの平凡がずっと続けば良いなと思う反面、絶対にそれはできないと諦めに近い感覚も抱いたり…。
女性特有の生々しさを題材にする小説、昔は好きだったけど最近は読むのつらいですね。
久しぶりにバッテリーとか夜のピクニックとか読みたくなってきたな
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