【🎃ハロウィン🎃】【696文字】【Trick or Treat】
アコーディオンの音と小さい女の子の笑い声
***
ジャック・オー・ランタンかざして、みんな仮装して、
街外れの荒れた、不気味な死んだニワトリの首が、軒にずらりと吊るしてある家のドアをノックした。
ドアは割とすぐに開き、途方もない、なんだか数百年も経っているような黴臭さが鼻腔を刺激し、皆、くしゃみをした。
ドアには男が立っていた。手には鋏と包丁を持っていて、血だらけだった。
皆は、勇気を振り絞って、
「トリック・オア・トリート!」
と、叫んだ。
男はしばらく考えているような、恰好をし
「トリック」、と。
僕らは何か男が怖くて、本物の卵は辞めといて、水風船を男にも玄関にも投げつけた。
「あーあーあー、たのしー、たのしー、マスターーー!!」
「何かね?玄関も、お前も、ずぶ濡れじゃないか。
頭の回路がショートしてしまうぞ」
「おい、フラン。お前が、朝焼いた、スコーンをあげなさい」
「はい、マスター」
「どぞー」
男は、フランというのか、は、僕らにスコーンを差し出した。
僕らは、その家から離れると、みんなで騒ぎ立てた。あの町一番怖い家を制覇したのだ。意気揚々と家に帰り、みんな、さぞかし、楽しい、勇ましい夢を見たことだろう。
それから何年かして、不気味な男、フランの家には雷が落ちて、誰も居なくなり、廃墟となった。
ハロウィンの前は、少し想い出すことがある。もう何十年も前の話。元気にしているだろうか。なんか子供心もあったが、人間とは思えなかったのは確かで、どこかで暮らしているかも知れないな。
タイトル画像の著作者:Sketchepedia/出典:Freepik
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