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(連載92)あの「スパークス」の前座をやる事になった:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2017-18
そ〜、そうなんです。
このタイトルに嘘はありません!
あの、スパークス様ですよ。
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自分が神様より スゴいと尊敬してやまないバンドの前座!!
この夢のような事が起こったのでした。
(これまでの成り行きは前回、前々回に書いております。)
おそらく、、、、
私の人生は、これで、幸運を使い切ったでしょうね〜。苦笑
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さっそくお話にはいりますよ。
この我々の前座のお勤めは、2017年と18年、2回、その間に関連のイベントも1件させて頂きました。
この頃は、まだ、ドキュメンタリー「スパークス・ブラザーズ」や、カラックスの映画「アネット」が、上映される前です。
それどころか、
「スパークス・ブラザーズ」は、監督のエドガー・ライトがこの2017年のコンサートを見にきて感激し、「彼らのドキュメンタリーが撮りたい!」となり、トントン拍子で事が運んだらしいです。このスピード感はさすがですね。
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最初のこの2017年のコンサートですが、場所はエル・レイ・シアターという会場。キャパが770人の、コンサート・ホールにしたら、そんなに大きくないのですが、アールデコでめちゃくちゃかっこいいんです。
こんなですから!
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そして、実は昔、何を隠そう!私はここのステージに立った事があったのです。
あ、前に書きましたね。セックスロバの時です。2000年頃。
この時はベルリンからきたピーチーズという、これまた女性アーティストの前座で、相棒のケビンがブッキングの人と知り合いという縁で、お声がかかったのでした。
私は、この時はバンドでヌンチャクをやっていた頃で、
(ギターじゃなくて。汗)
前にも書いたので、繰り返しになりますが、、、
いきなり、舞台でヌンチャクを出して、ぐるぐる振り回したら、
会場の700人の人々が一斉に、
おおお〜〜〜と。
なり、
その瞬間、何かが体におりてきたような、
精神と肉体が相互作用しながら別の場所へ立ち登ってゆくようなような、
衝撃的なシャーマン的経験をしたのでありました。
こんな事はこれが最初で最後で、、、
やがて時は流れ、その後は、こんなデカ箱で何かやる機会も無くなってしまい、アンダーグラウンド界に真っ逆さま、、、ですわ。
なので、このエル・レイ・シアターの前を通るたびに、「昔、ここのステージでやったな〜、あの体験はスゴかったな〜」と、遠くを見ながら細い目になって思い出し、
「おそらくもう、2度とここのステージに立つ事はないだろう」と
涙ぐんだり(うそ)してたんです。
ところが、、、、。
人生は本当に何がおこるかわかりませんね。
スパークスの会場がこのエル・レイだったのです!!
なので、嬉しさもひとしお!!
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思えば、ここは、舞台の両脇に楽屋があって、それもまた素敵だったんですよ。
ゆったり感溢れるスペースに、ふわふわのソファ、大きな鏡、飲み放題のビール、、、、。
セックスロバの頃の、いつもやってたローカルのライブハウスにあるのは、
酒と嘔吐の染み付いた壁に、美意識のかけらもないグラフィティーがこびりついた楽屋!
そんな小さいスペースを、当日出演するバンド全員でシェアしなければならず、ほとんどは男性なので、私の着替えはトイレ。うす暗くて、しかも鏡もなく、メイクもできないので、ランプのついた手鏡持参などなど、、、、。そんな劣悪なブラック環境。。。(ただそれが当たり前になってたんで、とくに不満もなかったのですが)
それが、このエル・レイでは、いきなり天国のような贅沢な、ワンランク上のオサレな楽屋!!
もうその時はうれしくてうれしくて、ゆったりソファに寝転んで、そこに用意された無料のビールをごくごく何本も頂き、至福を味わったのだった。
そんな経験があったので、
たしか、あそこの楽屋は素敵だったよな〜と。
またそれも待ち遠しく、ワクワク気分に拍車をかけた。
さてさて、我々は、本番までに!と、綿密な計画を立て、さおりちゃんと連日のリハ。音をどうだすか?バックトラックと生音のバランスなど実験したり。なんせ、基本、ノイズですからね。ミックスによっては最悪になります。
当日来てくれるサウンド・デザイナーのベンジーにもいろいろ相談して、機材をそろえていった。
ちなみに、ベンジーの仕事は、アーティストのテクニカルなサポートから、でっかいスタジアムやテーマパーク(なんと、長崎のハウステンボスも!)の音響デザイン! そんな音のエキスパートが、自分をバックアップしてくれるのも、本当に心強いです!!
当日の機材確認。
ラップトップに、ミシンは2台持ち込もう。
私はミシンを何台も所有しているので、いちいち名前をつけているのですが、それは全部、映画の「仁義なき戦い」の登場人物にしてます。笑
次回の出動は、この二人に決めた。
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広能 と 武田、よろしゅう頼むわ!
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私と広能の昌ちゃんは、長い付き合いのなので、お互いの癖などもわかってで、操作しやすいのであった。
さて、準備もできて、いよいよ当日であります。
いろんな機材そろえて、車を駐車して、会場に近づいたら、入口ではすでに、運搬係みたいな兄ちゃんが台車を持って、待機していた。
さすがです! 彼が愛想よく我々の荷物を全部を台車に移し替えた。
いちいち、車から行ったり来たりしなくていいんだ。
もう、レベルが違うなー。と、感心していたのも束の間、、、。
楽屋の方に荷物と運ぼうとしてると、「あ、君たちはそっちじゃないですよ〜」と、奥からでてきた会場のステージ・マネージャーみたいな人が登場。
え?
「私、ここで、昔やったことあるんで、楽屋の場所はわかりますけど?」って言ったら、
「楽屋が二つしかなくて、一つはスパークス、もう一つはバンドが使うんで〜。」と言われた。
そうか、スパークスは二人で、バックパンドのメンバーがいたのだ。
「君らの楽屋はこちらだよ。案内するから。」と言われて、後について行ったら、なんと!
入口すぐの事務所のとなり。それは。。。
小道具の収納部屋だったのだ!
(物置ともいう)
そこは日本でいうと2畳半くらいの大きさで、舞台で使う小道具やセットのあれこれ、在庫のペットボトルが山積みになっていて、
見るからにそれらを避けて、無理矢理小さいスペースにテーブルと椅子がおいてあった。
もちろん、鏡もなければ、トイレもありません、、、、。
しかも、ステージまで、ものすごく遠い、、、。
え???ここ???
先ほどまでの夢は、ガラガラとくずれていった、、、、、、。
そんな私の失望にも気が付かないのか、気が付かないふりをしているのか、そのマネージャーさんは、異常なほど、ナイスで。
「ドリンクは何?今すぐ持ってくるよ!!
何本いる???
何本でもいいよ〜。」
やたら、ノリもよく気前もいいのだが、、、なんせ、、、、。
ここかよ〜〜。
と。
しかし、所詮、前座なんで、あまり我儘もいえないしなあ。
ただ、一番、不都合なことは、コスチュームに着替えてから、ステージまでどうやっていけばいいんだろう?って事であった。
集まった群衆の中を、こっそり抜けていくしかないのか???
しかし、我々の衣装は、サングラスに頭に針山乗せてマス。
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こんな姿で、聴衆の中を歩いていようものなら、怪しい人きわまりない。
さすがに、この件は聞いてみた。
「あのーー。我々は衣装を着るので、ここで着替えてから、集まった群衆の中を、抜けていくのは、ちょっと、、、、、。」というと。
「オッケー。わかった。ちょっと調整してみるね〜。」と
何やら、またしても、底抜けにポジティブな返事!
そうこうしてるうちにベンジーがやってきて、
「楽屋は?、、、 キョロキョ え?ここ??」って。
「そう。」って言うと、吹き出した。
私も吹き出した。
さおりちゃんも吹き出して、三人で大笑いした。
私は、無邪気にも、あのファンシーな楽屋を想像して、それにふさわしい高級なお寿司を三人前用意して、楽屋でゆったり食べようと思ってたのだった。いきなりそれが、「場違いなメニュー」となった。
しかし、まあ、ユニークな楽屋と思えば、そう見えなくもない。
こんなです。
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やけくそで、ここはゴスな茶室だと「見立てて」高級寿司を広げ、三人で乾杯した。笑
そしたら、先ほどの人が戻ってきて、
「舞台の横にスペースがあったよ!!鏡も用意しておいたので!!」と、
報告にきたので、ああ、よかった、よかったと、それを見に行ったら。
そしたら、再度、なんと!!
今度は、ただの廊下だった。爆笑
楽屋と舞台の間の廊下の、人が行き来する場所の、隅っこだった。
その角のところに鏡がうやうやしく、三種の神器のひとつであるかのように設置してあったのだった。
もう感謝と笑いが込み上げて泣けてきた、、、。
もう、これで十分です。 ネタは出来ましたんで〜。笑
結局、我々は小道具部屋で、用意した手鏡でメイクし、服だけ着替え、その上からジャケットを羽織って、ライブが始まる直前に人々の間をぬけて、「廊下部屋」に移動して、帽子とメガネはそこで鏡を見ながら、調整した。
それで、、、なんとかなった。
なんでも、なんとかなるもんよ! 苦笑
そして、いよいよショーは始まり、幕は上がった!!
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大きなトラブルもなく、照明もすばらしく、聴衆の反応はすこぶるよかったし、スパークスのふたりも楽しんでくれたようだった。
上の写真もシアター専門のフォトグラファーがいて、撮影してくれた。
さすがプロ!!
全てが、レベルアップ!!(楽屋以外、、、)
やれやれ、無事終わった!!
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そして年があけて、2018年の関連イベントはスパークスのカバーをいろいろな人がやるという企画。
だいたいこういうカバー曲のイベントというのは、おきまりのヒット曲をやって、テキトーにこなすという人が多いのですが、
我々がやったので、一押しは「ホワイト・ウーマン」という曲。
今だと、ちょっと出来ないでしょうね。政治的に。。。
ただ、ウチらは日本人なので、(つまりホワイトじゃないので)あえて出来た。(と、勝手に思っただけですが)
他にも「シャーロック・ホームズ」「Batteries Not Included」「I Married Myself」「ドロチェビータ」をやりました。
とくに「ドロチェビータ」は日本語の歌詞を自分で作って、成り上がってゆく女の歌にして、演歌風なアレンジにしてみました。
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全部、ミシンのノイズでイチから作ったアレンジでやったので、かなりユニークな音源で、聴衆はかなり盛り上がった。
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そして、次の年は、今度はパラスというダウンタウンのシアター。
キャパが2000人!ここもすごいですよ。
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この時はもう鏡もテーブルも全部持っていきましたよ。
エル・レイで学んでますからね。
会場のプロデューサーは「なぜ、鏡なんかもってきたの?」とふしぎな顔だったんで、
「just in case…. (万が一。。。って事もあるかと)」と答えておいた。汗
そしたら流石にパラスは、楽屋が5つくらいある、劇団設定になっていた。
すべては用意されていたのだった。。。。笑
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サウンドチェックも問題なく、セッティングもあっという間に終わり、、、
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スパークスのカバーもやったし、人々の反応もよかったですよ。
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スパークスのファンは本当に我々をあたたかく、迎えてくれた。
もちろん!
ヘッドライナーのスパークス様のショーは、素晴らしかったのは、申すまでもありません。
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アフターパーティで、パチリ!!
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前座のバンドの決定は、レコード会社やレーベルの政治的なものもあるのに、我々のような、無名のバンドを選んでくれたスパークスに、深く深く感謝いたしました。涙
これ以降のスパークスは、皆様のご存じのように、新しいファンを獲得し続けて、再びブレークして、爆走しております。
彼らの、いかなる時も妥協せず、自分らのクリエイティビティをその場、その場で全力でぶつけている姿勢には、本当に脱帽します。それを長く続けられる持久力も凄い!
こういうスパークスが目の前に存在してくれた、それだけで、なんてラッキーなんだろうと思います。
私はそのふたりの背中を見ながら、これからも彼らからいろんな事を学んでいくんだろうなあ〜と、しみじみ思いました。
おわり。。。。
長々読んでいただいて、有難うございました。
L*