勘違いや誤解から生じる相手とのズレ「漫才の相方」とは 「ネタとガチ」の区別
昨年末12月31日、約7年6ヶ月間組んでいたコンビをついに解散した。
7年半もアマチュアとして組み続けていたが、お互いに笑いの価値観のみならず、コンビというものに対する考え方のズレが生じていながら我慢してコンビという形で続けていたが2021年12月31日についに互いに限界が来たのだ。
解散のきっかけになったのは1冊の漫画本。
その漫画本は障害や病気をテーマに描かれたものである。
オレは一昨年仕事で適応障害を発症し6ヶ月間休職をしていた。
なんとか自力で復職するも最終的に業務に耐えられず自主退職し、その後自閉症スペクトラム障害を持っていたことが判明した。
それを元相方に伝えると元相方はどうやらその漫画本が大好きであり、オレに勧めたくて仕方が無かったようだ。
オレが発達障害があることがわかった瞬間ほぼ毎日のように電話してきて本の話を持ち出すようになり、オレのSNSのコメント欄にもその本の内容の話題ばかり引用したコメントを残してくるようになった。
オレは元相方に、最初は気を遣って、電話をかける頻度を週1回にしてほしい、20分までにしてほしい、急ぎならラインしてほしい等と伝えた。
だがあまりにも漫画本に対する思い入れが強かったのか、そういう態度を取るオレを怒るようになった。
漫画本を貸すから取りに来るように言われ、忙しくてなかなか行けないことに対しても怒られた。
他の人に貸してたのを、お前に貸すために、その人から取り戻したんだと事情を説明してこられたのだ。
また借りたら借りたでなかなか返却しないことに関しても不満を述べられたりもしたので気を遣って急いで読んで返したが、そもそも貸してほしいとこちらから頼んでいないのにオレに確認もなくその方から取り返したのはおかしいと元相方に伝えた。
また早く返してほしいくらい大切な本なら安易に貸すべきではない、オレは物のやりとりはやはりトラブルのもとだから今後は貸し借りはやめよう、本当に行き詰まってたら自分でその本を調べて買いに行ってるし特に発達障害や適応障害と診断されたことはオレは悩んでいない、自分は自分で前向きに生きていけるから、とも伝えた。
しかしそれに対して元相方は「そんな言い方されて傷ついた」「本をバカにしやがって」等と怒り心頭で、コンビを解散しようと持ち出してきた。
オレは、本とお笑いコンビは全く関係ないから解散する理由にはならないと伝えたが元相方は納得がいかず、一度言い出したら彼は変更しないため、我慢して組んでやってたんだと怒りの言葉を浴びせてきた。
もはやこれはダメだ、ここまでだとオレは思って解散を了承したのだ。
で、プロの方々はどうなのかわからないが、一番勘違いしないでほしいのは、アマチュアお笑い芸人としてのオレ個人的には漫才の相方は所謂、友達や恋人ではないということ。
勿論例えばカラオケ、ボーリング、ごはんに行くなどを通じて互いを知っていくことでそれがネタになる場合もある。
しかしそれが全てではないし、それありき、あって当たり前だと考えてはいけないと思う。
あくまでも最終目的はプロならお笑いでごはんを食べていくこと、アマチュアだったらプロにどこまで太刀打ちできるか腕試しだとか、自分を知ること、人生での挑戦を目的にしてる芸人もいる。
一緒に遊んだり上述したような物のやりとりをすることはあくまでもその目的のための手段に過ぎない。
オレはそういう手段は互いに相当共通項があるだとか、前の記事「相方に求める7つの要素」にも書いたように、なんていうか、物や思想を人に押し付けないっていう前提を持っている人が相手じゃない限り使いたくないと思っている。
お笑いコンビがそのようなやりとりをすることを批判するつもりは毛頭無いが、勘違いだけはしてほしくないということ。
遊ぶことや物のやりとりをすることで相手の良い部分はそうだが、残念ながら嫌な部分も同時に見えてくる。
ましてや相方を友達、恋人と誤解している人が相手だとすごく気を遣うし、言い方を気をつけないと上述したように「傷ついた」などと言われてしまうので説明が難しい。
お笑いコンビとはこういうものだ、こうあるべきだとこちらがいくら持論を展開したところで所詮そんなもんおめえの主観に過ぎないだろと言われてしまえばそれまでだし、理解してもらうことはほぼ不可能なのだ。
コンビが互いにプライベートで遊ぶ中で面白い部分を見つけてネタにすることを互いが望んでいるならそれで良い。
しかし全てのコンビがそうではない。
相方はあくまでビジネスパートナーだと考える人もいるだろうし、本業またはバイトが忙しくて遊ぶ暇が無い人もいる。
そこを互いの考えを擦り合わせられる者同士であれば、多少価値観が違っていてもやっていけるし、擦り合わせられなければ解散することになる。
8人とコンビを組んでいたので8通りのぶつかり合い、そして解散があったが、8人目の相方とのぶつかり合いは互いの勘違いや誤解から生まれたものとなってしまった。
あるお笑いライブにピンで出たときに、この人は破天荒で面白い芸風だと思ってオレから組みたいと声をかけたのが7年6ヶ月前。
当初は飯やジュースを度々奢ってくれと言われていて、オレは貴方の所謂金づるではないと伝えたこともあったのだ。
また彼はネタとガチの区別がつかなかった。
あるお笑いライブのフリートーク中に、彼が喋っているときに滑舌が悪いことを他の芸人から指摘されると、裏でその芸人に対して怒っていたのだ。
滑舌を悪く言いやがって、バカにしやがって、傷ついた等と言ってきたのでオレは、あの人は観客から笑いを取るためにネタとしてお前をいじってくれたんだと伝えたが、納得はいっていなかったようだ。
その芸人も本人を傷つけるつもりなど無かったと思うが、そういう区別のつかない人はお笑いの舞台に立つ前にまずネタとガチの区別をつけられるようにならなければならない。
自分がいじられた、いじってくれた、お客さんが笑ってくれたと正しく捉えてリアクションしていけるかどうか。
バカにされたとガチに捉えてしまってストレスになり傷つくようでは、自分が苦しくなっていくだけである。
このようにそれの区別を上手に認識できない芸人が現実にいる。
なるべく、相方申請したオレがバカだったとは言いたくないが、相方は先月31日、本をお前に貸さなきゃ良かった等と言ってきたのだ。
そういう人間であることをオレが見抜くことができなかった。
やはり人を見る眼って大事なんだなと思い知らされた。
同じ生命でも、脳味噌の作りは同じではないことを改めて理解させられた2021年であった。