訪問着の仕立は技術的に難しい、小紋の仕立はセンス的に難しい
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本日のお題:訪問着の仕立は技術的に難しい、小紋の仕立はセンス的に難しい
呉服のきくや本店:https://www.kikuya.shop/
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楽天のことだったら公式本店サイトは関係ないやん、と思われそうですが、在庫連動のシステムを組んでしまっているので、1つの店の仕様変更が全て影響してしまうんです。もししばらく商品登録が滞ったら「あ、何かトラブってるんだろうな」と察してください汗。
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■訪問着の仕立は技術的に難しい、小紋の仕立はセンス的に難しい
今週のお題は「訪問着の仕立は技術的に難しい、小紋の仕立はセンス的に難しい」です。当店はリサイクル店なのでお仕立ての依頼を受けることはそれほど多くはないのですが、一応呉服業界の端くれですのでたまに仕立てを受けることもあります。正直あまり儲からないんですが、当店のある大阪市内大正区では唯一の呉服店ですのでやめるわけにもいかないんですよね。
インターネットで仕立てを受けている和裁士さんもたくさんおられるのですが全く着物のことがわからないお客様からすれば、メールだけでの打ち合わせで身丈、裄、袖丈などサイズを伝えるのも一苦労ですので対面でお仕立てを依頼できる、というのはやはりやめるわけにはいかないな、なんて思っています。
ところで、訪問着と小紋はだいたいどこの和裁士さんも訪問着の方が高い値段設定になっていると思います。確かに訪問着は縫い目で柄をピッタリ合わせるなど、高い技術が必要なのは確かなのですが、一方で小紋も訪問着とは違った別の難しさがあるんですよ。
訪問着はあらかじめ反物を裁断して仮絵羽(仮に粗く縫って着物の形にしている)状態になっています。これは染める段階でも柄をぴったりと合わせるために裁断してから合口を見ながら染めていくためです。もちろん縫製の時にもその緻密な柄をピッタリ合わせて、その柄の色ごとに糸の色を変えたり、和裁を本格的に習ったことのない私でも面倒くさい作業であることは想像できます。
それでは一方、小紋(紬も)はいかがでしょうか。同じ柄が数十センチごとに出てくるだけで訪問着と違ってどこにどんな柄がくるかなんて全く計算されていません。もちろんどこで裁断しても決して間違いではありません。
が!!
違うんですよ。普通に考えると別にどこにどんな柄がくるかなんて想定して染められていないからどんな風に仕立てても着物の形になるしどうでもいいやん、なんて思いがちですがそうではありません。どこにどんな柄がくるかなんて全く想定されていないからこそ、和裁士さんのセンスが問われますので訪問着以上に難しい面もあるのです。
全く話は飛びますが、私昔ジャズバンドなるものをやってまして。私はベースだったんですけど、音大在籍のトロンボーンやサックス、トランペットなどと一緒にやってました。私1人だけ超のつく凡人で音大の管楽器は全員天才肌でして、今やプロで活躍してまして、なんであんなところに私がいたのか、今でも不思議です。
それはさておき、その中のトランペットがクラシック科の所属しておりまして、誰でも考え付くようなこんな質問をしたことがあるんですよ。
「ジャズとクラシック、どっちが難しい?」
今から考えたら答えのわかりきっているつまんない質問だと思うんですけど、その人はこう答えました。
「ジャズはほとんど何も決められていないところで自分を出すところが難しいし、クラシックはガチガチに決められた中で自分を出していくのが難しい。どっちも難しいよね」
まあ当たり前の答えというかなんというか…。真剣に音楽に向き合ってるからこそどっちが簡単、なんてことは絶対言わないんですけどそのとおりでどっちも難しいと言いました。
ここから無理やり着物の話に持って行きますと(笑)、訪問着はいわばクラシック、どこにどんな柄を持っていくか完全に決められていて、綺麗に柄をつなげて仕立てるのが大事、一方で小紋はどんな風に柄を出すこともできるけれど、何も決まっていないだけに和裁士のセンスによって着物に全く違う表情が生まれます。
例えば左右で色が染め分けられている反物ですと、着物の仕立て方の性質上、一方で衿の部分を取るともう一方の違う色の方で衽を取ることになります。また、背縫いで同じ色を合わせるのか、それとも互い違いにもっていくのか(いわゆるおっかけの柄)。まあこの程度は和裁士のセンスというよりもお客様と話し合って好みの仕立て方を聞くことが多いでしょう。
横段の縞の柄なんかだとどうでしょう。横段の柄をつなげた方がいいか、わざと互い違いで柄が繋がらないようにするか。これもお客様が比較的簡単に想像できるのでお客様に聞いて判断してもらう方が多いでしょう。
じゃあ例えば飛び柄の猫の柄などですとどうでしょう。飛び柄ですから衿に柄がこないようにすっきりとした衿元にするか、それともワンポイントのように衿に柄を持っていくか。何も考えずに裁ってしまうと掛衿部分に来る猫が逆さ向いていたり、ということにもなってしまいます。動物の柄のように上下のある柄で飛び柄なんてのは和裁士泣かせ…いや、和裁士さんの腕の見せ所かもしれません。
結城紬の産地問屋、奥順さんの社屋に併設されている結城紬の資料館に13mの長い反物の対角線で染め分けられている反物を見たことがあるんですが(つまりめちゃくちゃ縦長の直角三角形の柄・おそらくまだ展示されていると思います)、あの反物を目の前にして呉服屋としては頭を抱えましたね。裁断の仕方によってガラッと表情が変わってしまいますのでどこをどんな風に持っていけばいいのか、私の和裁の知識では頭の中では想像ができませんでした。あの反物を持ち込まれて仕立てて欲しいと言われたら、まずは長さ130cm、幅3.8cmの対角線で染め分けた紙を用意して、お客様と和裁士さんと一緒に何度も「ああでもない、こうでもない」と予行演習してから仕立てないと頭の中だけでは無理だろうな、と思いました。
お仕立てを依頼するとき、細かい柄の場合はどこにどのように柄が出てもあまり変わらないのでそれほど細かい指示をする必要はありませんが、特に飛び柄や大きく染め分けられているものの場合は注意が必要です。もちろん呉服店側のスキルが高く、お客様の好みを完全に把握している場合はお任せしてもいいとは思いますが、そうでなかった場合、裁って仕立ててしまってから「え?こんなはずじゃなかったのに」というのを防ぐためにもご自身の好みはしっかりと伝えた方がいいと思います。
「そんなこと言っても和裁なんてわからないもん」なんて心配は無用です。せっかくお仕立てするなら、細部までこだわって要望をおっしゃっていただいていいと思いますよ。そのために呉服店や和裁士さんがいるんですから、物理的にできないことはできないと言うでしょうし、できることならばなんとか頑張ってくれるはずです。むしろできることできないことを完璧に把握してるお客様なんておられたら「お、お主何者???」なんて驚きますよ笑。
というわけで、訪問着は訪問着で難しい、小紋は小紋で難しい。結局和裁は難しくて和裁士さんはすごい、というお話でした。
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発行:新品とリサイクル着物 呉服のきくや
住所:大阪市大正区泉尾3-15-4
電話:06-6551-8022
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