[日刊]内閣府と日銀の物価見通しからYCC修正の有無を考察する
7月20日(木)の東京株式市場は3営業日に反落した。機械、電気機器、精密機器が下落幅トップ3となった。
前日の米株式市場では英国のインフレ鈍化が好感されたものの、住宅関連指標が底堅く、CPI発表から安堵感のあった利上げ懸念がまだくすぶっていることが警戒された。また、テスラが決算発表を受けて時間外取引で売られていたことも重しとなったようだ。
こうした流れを受けて東京株式市場でも半導体銘柄を中心にハイテク株が売られた。
内閣府の経済見通し、物価の伸びが2.6%へ上方修正
政府の経済財政諮問会議が開かれ、政府の経済見通しが示されている内閣府年央試算が公表された。
まずは内閣府の公表した資料をそのまま貼り付けておく。
実質GDPは0.2ポイント下方修正され、1.3%となった。そして気になる消費者物価(総合)の見通しは2023年度で2.6%、2024年度で1.9%となった。今年の国内経済指標を見ていれば見通しを上方修正したことに驚きは無いだろうが、これが日銀の見通しと乖離があるのかがポイントになる。
4月末の日銀、展望レポートの物価見通し
4月末に日銀が公表した展望レポートでは、2023年度の生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)は1.8%、2024年度は2.0%と予想されている。
内閣府年央試算は総合であり、日銀の展望レポートは生鮮食品を除いているため、単純比較はできない。しかし総合CPIとコアCPIは過去1年では平均して0.1~0.3ポイントほどしか差が無いことを考慮すると内閣府の総合2.6%に対して、4月末の日銀によるコア1.8%の見通しはかなり乖離しているように見える。
日銀も来週の日銀会合で物価見通しを多少なりとも上方修正すると予想されているわけだが、おそらく内閣府の見通しに近い数字になるだろう。
来週の日銀会合で見通しはどの程度修正されるか
というのも、昨年12月の内閣府による2023年度の総合CPIの見通しが1.7%、今年1月の日銀による2023年度コアCPIの見通しが1.6%だったのだ。この時の乖離はわずか0.1ポイントで、総合とコアの差異を考慮すれば試算はほぼ同じだったと予想できる。
・内閣府 2022年12月見通し:2023年度 総合CPI 1.7%
・日銀 2023年1月見通し:2023年度 コアCPI 1.6%
今回も同様に試算の根拠となったデータや見方に大きな変化がなければ、両者で試算が大きく変わるとは思えない。そのため、先に公表された内閣府の見通しから0.1~0.2ポイント前後の幅まで日銀のコアCPIは上方修正されるのではないかと見ている。
つまり、日銀の物価見通しは、
・2023年度 生鮮食品除く消費者物価指数:2.4%~2.8%
・2024年度 生鮮食品除く消費者物価指数:1.7%~2.1%
の範囲内となると予想できる。
コアCPIの見通しが2.4%~2.8%ならYCC修正はどうなる?
仮に私の予想が正しく、コアCPIの見通しが上記のレンジに収まったとしたとする。さて、結局のところYCC修正はあるのかないのかが問題だ。
結論としては、本日8:30に発表される6月のCPIを見てからにはなるが、CPI発表前の時点では引き続き7月の会合では修正をしないのではないかと思っている。
日銀はもう少し物価目標を安定的に達成できると確信が持てる材料を欲していると思われ、次の会合までの時間稼ぎをしたいと考えているはずだ。
CPI発表前の段階では、今会合でYCCを急いで修正する逼迫した理由はないため、出来ることなら、持続的、安定的に2%の物価目標を達成できる地盤が固まるまで待つと予想できる。
そして、YCCを急いで修正する理由となる可能性があるのが、本日8:30に発表されるCPIなわけだ。もし仮に、6月のCPIが一気に跳ね上がるようなことがあれば、ムードは一転してYCC修正へ傾く。
逆に、大きく上振れることがなければ、予想通りの展開となりこのまま7月会合を通過すると見て良い。
そして、7月会合で今後のYCC修正を匂わせる発言の温度感を把握しておけば、ある程度の修正時期というのはわかってくるはずだ。
ひとまずは、朝8:30のCPIを見てみることにしよう。
私は普段10時ごろに起きるため、速報は出さないが明日か週末にCPIを受けての展望を書く予定だ。興味のある方はぜひフォローしてほしい。
ニュースメモ
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