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[日刊]想定以上の無風っぷりで日銀会合閉幕、ドル円は週明け以降150円にトライか

9月の日銀会合は事前予想通り、金融政策は維持された。

一段の円安への警戒から植田総裁が記者会見でタカ派姿勢を打ち出すかと思っていたが、意外にも会合ごとにデータ次第で議論をしていく方針を繰り返し強調するに留まった。

質疑応答ではあしもとの物価上昇率を見てもまだ基調的なインフレ率は目標に達していないのかという、当然誰もが疑問に思う質問がいくつも出たが植田総裁は繰り返し「持続的・安定的な物価目標が達成できる見通しはたってない」と回答した。

これを受けて為替相場では円安が加速する可能性も高かったが、既に織り込み済みだったようで、動きは限定的となっている。

タカ派な内容となったFOMC会合と比較し、データ次第ではあるが少なくとも来春闘まで緩和政策を維持しそうな雰囲気をにじませた日銀会合だっただけに、しばらく日本株は米国株をアウトパフォームしそうだ。

■米国

昨晩21日の米株式相場ではS&P500種が続落し、6月以来の安値を付けた。

毎週発表される新規失業保険申請件数が今年1月以来の低水準だったことから、労働市場の底硬さが意識され、FOMC後に高まった高金利長期化がさらに現実味を帯びてきた形だ。

米新規失業保険申請、1月以来の低水準-労働市場の底堅さ浮き彫り

また、高金利下でローンを借り換えてまで持ち家を手放す必要のない住宅保有者たちは当然ながら現状維持の姿勢のため、中古住宅販売の在庫は1999年のデータ収集以来の低さとなった。

米中古住宅販売、7カ月ぶりの低水準に落ち込む-高金利と在庫不足

ここ1ヶ月半ほど、米国長期金利が上昇する中で大きな株安の流れが来ると予想するアナリストが増えているのだが、その中でも説得力のある材料として、債券の損失を補填するために含み益のある株式を利益確定売りに出す流れがある。

米債券はどの年限も年初から利回りが上昇(価格は下落)しているので、早期の利上げ打ち止め、早期利下げを想定して債券を購入していた投資家は全員含み損を抱えている。

そして8月からの金利上昇を受け、この先もしばらく高水準がキープされるという認識が広まったので、見切りを付けて損切する投資家が増えているようだ。

一方で、株式はあしもとでは調整が入っているが年初からは上昇しており、含み益を抱えている投資家が多い。

結果として、債券の損失を株式を利確して埋め合わせようという動きがあるようだ。

今後しばらくはこの動きが続くかもしれず、やはり米国株は警戒が必要だろう。

■日本

日銀会合の内容はほぼ何もなかったため、特に振り返りはいらないだろう。現状維持、それだけだ。

会合以外では岸田首相がニューヨークで投資家向けに講演し、資産運用特区を創設すると表明した。

資産運用特区の創設表明 首相講演

記事では英語で行政手続きが完結するといった特色が上げられていたぐらいで、もっと具体的な施策については不明なのだが、ひとまず岸田首相の資産運用に関する取り組みの本気度は伺える。

来年の新NISAは勿論のこと、金融リテラシーはそっちのけで大量の個人投資家マネーが市場に溢れることが予想される。

高PERでも何でもとにかく一般消費者の知名度が高い銘柄は業績が伴わなくとも、今後2,3年は上げ続けてバブルが起きるかもしれない。

また、8月のCPIも発表されている。

最新のデータでも国内の物価上昇は止まらず、前年同月比でコアCPI 3.1%、コアコアCPI 4.3%となっている。

サービス物価は2.0%、公共サービス以外の一般サービスは2.5%の上昇率だ。

そろそろインフレ対策をしないと取り返しがつかなくなりそうだが、今日の植田総裁の会見を見る限り、全くその気配はない。

8月の消費者物価は3.1%上昇と伸び横ばい、市場予想上回る

■中国

連日不動産企業のデフォルト懸念が報道されているが、今日は上海と北京で外資系企業誘致の取り組み強化を発表している。

中国、上海と北京で外国人向け資本規制を緩和-外資系企業誘致の一環

外国人投資家の資金移動を容易にするといった緩和策のようだ。

■為替

記事執筆時、17時前のドル円は1ドル=148.34円で推移している。

日銀の政策維持を受けて若干円安が進んだものの、冒頭で述べた通りある程度織り込み済みだったため、急激な変動は起きていない。

日銀会合前に鈴木財務相と岸田首相が揃って「過度な変動には適切に対応」といった牽制発言をしていたことも寄与しているだろう。

為替の過度な変動にはあらゆる選択排除せずに適切に対応-鈴木財務相

首相「円の過度な変動には適切に対応」

しかし、それらの発言による円安抑制がどこまで効果があるのかは疑わしく、本日の日銀会合で日米金利差はしばらくこれ以上埋まらないことがわかったため、一度は1ドル150円に進む流れがありそうだ。

仮に150円で為替介入をしても根本的な円安要因が解消されない限り、同じことの繰り返しになると予想される。

■債券

米債券市場では昨晩10年債利回りが16年ぶりの高水準となる4.49%を付けた。

このnoteでは以前から指摘している通り、米長期金利が低下する要因は少く上昇する要因の方が多い。

利回りが低下したとしても4.0%を早期に下回ることは考えにくく、米住宅市場を中心とした長期金利に左右される業種は厳しい環境が続く。

日本国債は日銀の政策維持の報道があっても長期金利は横ばいで終えた。10年債利回りは0.745%と0.75%の節目を前に利回り上昇は一時停止。

債券15時 長期金利、0.745%で横ばい 超長期債には売り

植田総裁の発言内容から、来週明けは少し落ち着いた展開になるかもしれないが、米国債の状況によっては売り圧力がさらに高まる可能性も否めない。

0.75%を越すタイミングで臨時オペが通知されるか否かもポイントになりそうだ。

■コモディティ

中銀の会合が続いているため、今週はコモディティの情報がおそろかになっているのだが、オーストラリアで続いてたLNG施設のストが終了するようだ。

オーストラリアLNG施設スト終了へ、シェブロンと労組が合意

米ガス大手シェブロンと労働組合の対立からストライキが起こっていたが、ようやく合意に至ったもよう。

オーストラリは世界のガス輸出の約21%を占めており、オーストラリの主要なLNG施設3つでストが起きると世界全体のガス輸出10%が止まると算出されていただけに、ガス価格高騰の要因が1つ解決されたことになる。

それではまた!

ニュースメモ


■米国

米新規失業保険申請、1月以来の低水準-労働市場の底堅さ浮き彫り

米新規失業保険申請件数(9月16日終了週)は前週比2万件減の20万1000件
ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は22万5000件
前週は22万1000件(速報値22万件)に修正
先週の米新規失業保険申請件数は1月以来の水準に減少した。健全な労働市場が引き続き米経済を支えていることを示している。
失業保険の継続受給者数は9月9日終了週に166万人に減少した。こちらも年初以来の低水準となった。

フィラデルフィア連銀製造業指数、9月はマイナス13.5-予想マイナス1

9月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数はマイナス13.5に低下した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値はマイナス1だった。前月はプラス12。

米中古住宅販売、7カ月ぶりの低水準に落ち込む-高金利と在庫不足

8月の中古住宅販売件数は減少し、1月以来の低水準となった。在庫不足と飛び抜けて高い住宅ローン金利が影響した。
中古住宅販売件数(季節調整済み)は前月比0.7%減の年換算404万戸
エコノミスト予想中央値は410万戸
前月は407万戸
前年同月比(季節調整前)では15.4%減少

米住宅ローン金利、6週連続で7%上回る-2週続けて上昇

フレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の21日発表によると、30年物固定住宅ローン金利は平均で7.19%。前週は7.18%だった。7%を上回るのは6週連続。

ソフトランディングにはまり込むFRB、想定外の展開も-サマーズ氏

サマーズ元米財務長官は、米連邦公開市場委員会(FOMC)が示した最新の経済予測について、政策当局者は楽観的過ぎると指摘。当局者の予想以上にインフレ加速と成長鈍化の両方が進行する恐れがあると警戒感を示した。

米高金利は長期化、または恒久化するのか

一部当局者は見通しやコメントで、高金利は単に長引くだけでなく、恒久的に続く可能性を示唆している。より専門的な言い方をすれば、長期的にインフレ率と失業率を安定させる、いわゆる中立金利が上昇した。

米国株の「脆弱性高まる」、モルガンSのトレーディング部門が分析

■日本

日本の銀行株、割安感と将来の日銀政策修正期待で投資家の強気継続

銀行株は今年に入り既に40%上昇しているものの、強気派はさらなる上昇余地があるとみている。日銀が利上げに転じるのは時間の問題で、近いうちに貸出利ざやの拡大が期待できるとの見方からだ。

資産運用立国へ特区創設、海外投資家の参入呼びかけ-NYで岸田首相

訪米中の岸田文雄首相は21日、世界の金融関係者が集まる「ニューヨーク経済クラブ」で講演し、日本の資産運用業に新規参入するよう呼びかけた。特区創設を柱に規制改革を行い、ビジネス環境を整えると表明した。

資産運用特区の創設表明 首相講演

岸田文雄首相は21日午後(日本時間22日未明)、訪問先のニューヨークで投資家向けに講演した。日本の資産運用業の強化へ海外勢の参入を促すための「資産運用特区」を設けると表明した。講演後の対談でも投資を呼び込む姿勢を強調し、参加者からは「首相の本気度を感じた」との声が上がった。

8月の消費者物価は3.1%上昇と伸び横ばい、市場予想上回る

8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、食料品やガソリンの値上がりを受けて前年比3%台の伸びが続いた。上昇率は12カ月連続で3%超と日本銀行が物価目標に掲げる2%を上回り、インフレ圧力の根強さを示している。
コアCPIは前年同月比3.1%上昇。伸び率は前月から横ばいで、市場予想(3.0%上昇)を上回った。
生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは4.3%上昇。1981年以来の高水準だった5月と7月に並んだ。市場予想と一致した。

サービス物価、人手不足で上昇 30年ぶり2カ月連続2.0%

新型コロナウイルス禍からの正常化や人手不足で、サービスは約30年ぶりに2カ月連続で2%を超えた。
全体をモノとサービスに分けると8月はモノは4.2%のプラスだった。
サービスは2.0%上昇し、7月と同じだった。2カ月連続で2%を上回るのは、消費増税の時期を除くと1993年9〜10月以来、29年10カ月ぶりだ。公共サービス以外の一般サービスは足元で2.5%の上昇率だった。

日経平均150円安、日銀会合結果後の買い戻し一巡

ピクテ・ジャパンの松元浩シニア・フェローは「いったん金融緩和の維持で買い戻しが入ったが、今回の記者会見でマイナス金利解除などへのトーンを確認したいという雰囲気が次第に高まっている印象だ」

経済対策「規模ありきではない」 鈴木財務相

岸田文雄首相は来週前半に経済対策の指示を出す。物価高対策や賃上げ・投資拡大の流れを強化する。
鈴木俊一財務相は22日の閣議後の記者会見で、10月中をメドにまとめる経済対策について「規模ありきではなくて真に必要で効果的な政策を積み上げていく。その結果、規模も決まってくる」と述べた。

■中国

中国、上海と北京で外国人向け資本規制を緩和-外資系企業誘致の一環

中国は海外からの投資低迷と景気減速の中で外資系企業を再び誘致する取り組みの一環として、主要2都市での厳しい資本規制を緩和する措置を講じている。

■ユーロ圏

スイス中銀、予想に反し利上げ停止-成長への影響回避

スイス国立銀行(中央銀行)は21日、予想に反し金融引き締めを一時停止した。失速しつつある経済への一段の悪影響を回避することを選択した。

ECBの金利、ピーク宣言は時期尚早-ナーゲル独連銀総裁

欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのナーゲル・ドイツ連邦銀行総裁は、当局が依然として頑強なインフレに直面しているため、金利がピークに達したかどうかを断定するのは時期尚早だと述べた。

英中銀、2年ぶりに金利据え置き-政策委員会が僅差で決定

イングランド銀行(英中央銀行)は21日、政策金利を5.25%で据え置いた。インフレ率の低下と景気後退懸念の中で、過去30年余りで最も積極的に進めてきた利上げサイクルを停止した。

■為替

円の実力レートが53年ぶり低水準、固定相場時代に戻った日本の購買力

円の総合的な実力を示す「実質実効為替レート」が1970年以来、53年ぶりの低水準となった。円が1ドル=360円の固定相場制だった時代と同水準で、日本の対外的な購買力の低下が鮮明になっている。

為替の過度な変動にはあらゆる選択排除せずに適切に対応-鈴木財務相

「相場の過度な変動に対しては、あらゆる選択肢を排除せずに適切な対応をとっていきたい」

首相「円の過度な変動には適切に対応」

訪米中の岸田文雄首相は21日午後(日本時間22日未明)、投資家向けの講演で、円相場の過度な変動は望ましくないとの考えを示した。「引き続き高い緊張感を持ち、過度な変動に対してあらゆる選択肢を排除せず、適切な対応を取る」と述べた。

■債券

NY債券、長期債続落 10年債利回り4.49%、16年ぶり高水準

21日のニューヨーク債券市場で長期債相場は3日続落した。長期金利の指標である表面利率3.875%の10年物国債利回りは前日比0.08%高い(価格は安い)4.49%で終えた。4.49%を付けるのは2007年11月以来、およそ16年ぶり。

クレディSのAT1債、法的請求権の価格上昇-和解期待で回収狙う

額面1ドル当たり約15セントでの和解を目指していると明らかにした。大口投資家グループが起こした訴訟に関与している別の人物によると、原告側はそれを大幅に上回る額での和解を目指している。

グロース氏が警告、債券投資家は前例ない3年連続の損失に直面

グロース氏は21日公表した投資見通しで、債券市場は前例のない3年連続のマイナスリターンに向かっていると指摘。根強いインフレや財政赤字拡大が理由だとし、政府支出について「ヘリコプターからマネーを投下している」も同然だとの考えを示した。

米10年国債利回り、4.5%に上昇-2007年以来

アジア時間22日午前の取引で、米国の10年国債利回りが一時0.6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、4.5003%と2007年以来の高水準を付けた。

債券15時 長期金利、0.745%で横ばい 超長期債には売り

22日の国内債券市場で長期金利は横ばい。指標となる新発10年物国債の利回りは前日と同じ0.745%をつけた。日銀が22日まで開いた金融政策決定会合で現行の大規模な金融緩和政策を維持し、国内債相場を支える場面があった。だが、日銀がいずれ金融政策の修正に動くとの観測から債券買いは限られた。

■コモディティ

オーストラリアLNG施設スト終了へ、シェブロンと労組が合意

オーストラリアの液化天然ガス(LNG)主要施設で行われていたストライキを巡り、米シェブロンと労働組合側がこれを終わらせることで合意した。

■その他

農業投資戦略の運用会社、「不安定な気候」巡るリスク管理を重要視

世界的な気温上昇は、予測可能な天候に頼る農作物に打撃を与える恐れがあり、食料価格上昇につながり得る。それにより食料安全保障の確保に向け政府が輸出を抑制するリスクも高まる。

サポートを頂くことがありましたら、主に投資資金としてありがたく頂戴しますm(_ _)m