[日刊]9月FOMC会合のドットプロット予想、植田総裁のインタビューの意図
主要な国・地域で金融政策決定会合が開かれる8月第3週がスタート。東京市場は敬老の日の祝日により、1日遅れで始まった。
米CPIを終え、FOMC会合を控えての前週末は反落した米株式市場だったが、昨晩はほぼ変わらずの小幅高。様子見ムードが流れる展開だったが、ロイター通信がTSMCが半導体向け装置の納入を遅らせるよう求めたと報道があり、東京株式市場は半導体関連株を中心に下落。
しかし、原油高を背景に海運業や鉄鋼業が買われた他、マイナス金利解除を見込んだ銀行株の上昇もあり、日経平均は前週末比-290円の33,242円で取引を終えている。
以下、項目ごとの所感。
■米国
20日に終えるFOMCではドットプロットが公表される。毎回のFOMC会合でドットプロットが公表されるようなことを書いている某インフルエンサーは無視するとして、ドットプロットは四半期ごとに公表される。
前回公表された6月のFOMC会合では年内残り2回の利上げをドットプロットに示したことがややサプライズとなった。
今会合では利上げ予想はほぼなく、とりあえずは政策金利据え置きがコンセンサスとなっており、焦点はこのドットプロットが年内残り1回の利上げを残したままか、と来年以降の利下げがどの程度のペースで行われる予想なのかになる。
6月のドットプロットでは年内残り2回の利上げでターミナルレート(最高到達点)は5.625%、2024年末の政策金利4.625%、2025年末 3.375%となっていた。
※ドットプロットのグラフィックはロイターのページが見やすい:http://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/rngs/USA-FEDFUNDS-LJA/01005028054/index.html
つまり、来年1.0ptの利下げをFOMCメンバーは見込んでいたことになり、再来年末までには2.25ptを見込んでいた。
これが最近の経済指標を受けてどう変わっているかが焦点だ。
もはや次の会合であと0.25ptの利上げがあろうがなかろうがそれほど問題ではなく、こちらの方が気になっているのがほとんどの投資家の本音だろう。
私の予想では、今会合で公表されるドットプロットでは、
・2023年:残り1回を変わらず。5.625%
・2024年:4.625%も変えず
・2025年:3.35%or3.5%に上方修正
になると思っている。
また、今回初めて2026年末のドットプロットも追加されるため、FOMCメンバーが3年半後の政策金利をどう見通しているかを知れることになる。市場予想では2.6%近辺となっているようだ。
一部の債券ファンド(アライアンス・バーンスタイン)は来年にも米長期金利が2.5%へ低下するという強気予想を出しているが、どうなることやら。
参考:米10年債利回り、来年は2.5%に低下も-アライアンスバーンスタイン
■日本
8月末から上昇を続けていた日本株は日銀会合を前に高値圏で一時小休止となっている。
先週は読売新聞に掲載された植田総裁のインタビューからマイナス金利解除が年内にもあり得るという観測が広がった。
ただ、その後ブルームバーグには植田総裁の発言と市場との認識にギャップがあるという記事が配信されている。
注意しなければならないのは、ブルームバーグの記事を書いている記者2名(伊藤純夫氏、藤岡徹氏)はYCC修正があった前会合の直前に日銀関係者による発言だとして「YCC副作用の対応の緊急性乏しい」という記事を書いている方々な点だ。
個人的には今回は読売もブルームバーグもどちらも信頼できると思っていて、ようは植田総裁は行き過ぎた円安を止めるためにインタビューでタカ派発言をチラつかせて為替市場を牽制しつつ、長期金利上昇圧力が高まり過ぎてしまうので、認識にギャップがあるとして緩和政策の維持方針も再度強調しておきたいということだろう。
円安はこれ以上進めたくない、だけど長期金利上昇も0.75%以上へはいくにはまだ早い。といった所だろうから、今週の日銀会合ではそれを踏まえた発言だということを頭に入れておいた方が良さそうだ。
いずれにせよ踏み込んだ発言はしすぎないだろうが、それでも為替市場で円安がうんと進んでしまうようなハト派発言はできないため、さじ加減が難しい会見となりそうだ。
■その他
その他、中国では相変わらずカントリーガーデンを中心にデフォルト回避のために承認を得たり何だりを頑張っておられる。
新たに融創中国という不動産会社が広州恒大が申請した米連邦破産法15条の適用申請をしたようで、規模感はこれまでほどではないが、それでもさらに中国不動産企業の信頼は下がる一方だ。
先週お休みを貰って復帰したてのため、中国やコモディティなどの所感については割愛させて頂く。
これら細かいニュースは下記にまとめてあるので、気になる方はカテゴリーごとにチェックしてほしい。
それではまた明日!
ニュースメモ
■米国
モルガンSのウィルソン氏、来年は「リスク資産に厳しい年」になる
S&P500種株価指数は年初から16%上昇しているものの、ウィルソン氏は今年の弱気見通しを変えていない。リセッション(景気後退)は完全に回避されたのか、それとも来年以降に押し出されたのか、という議論が顧客の間で広がっていると同氏は指摘する。
「当社が話を聞いている限り、投資家の過半数は『押し出された』派であり、来年はリスク資産にとって今年よりも厳しい年になりそうだと考えられている」とウィルソン氏はリポートで説明した。
米NAHB住宅市場指数、5カ月ぶり低水準-ローン金利上昇響く
米住宅市場指数は45に低下
ブルームバーグ調査のエコノミスト予想全てを下回った
前月は50
同指数は50を上回ると、事業環境を悪いとみるよりも良いとみる住宅建設業者が多いことを示す
「より高くより長く」が株式にリスク、JPモルガンのコラノビッチ氏
株式市場は減速しつつある景気循環の現実から切り離されており、実質金利と資本コストが一段と景気抑制的な領域に動く中で、S&P500種株価指数の年初来16%という上昇は脅かされていると、JPモルガン・チェースのチーフ市場ストラテジスト、マルコ・コラノビッチ氏が18日指摘した。
米大手銀借り入れ再び増加、準備預金巡る警告サインか-預金流出続く
米連邦準備制度のデータによると、大手銀行の借入額は6月と7月に減少したが、8月に700億ドル(約10兆3000億円)増と、9%膨らんだ。同時に、銀行の一般的な流動性供給元である連邦住宅貸付銀行(FHLB)制度で債務残高が1兆2490億ドルと、7月の1兆2450億ドルから増えた。
■日本
ゴールドマン、日本株見通しを引き上げ-円相場の安定推移を予想
ゴールドマン・サックス・グループのストラテジストは、今後数カ月の円相場は大きく上昇しない可能性が高いとの見方を基に、日本株の見通しを引き上げた。
三井住友銀行、ドル定期預金の金利上げ 年0.01→5.3%に
三井住友銀行は25日から米ドル建て定期預金の金利を現在の年0.01%から5.3%に引き上げる。引き上げは5年ぶりで、5%台のインターネット銀行と同等の水準にする。2022年3月から始まった米利上げに伴う市場金利の上昇を反映する。他の大手行も金利の引き上げで追随する可能性がある。
政策正常化への植田日銀総裁の手法、「衝撃と畏怖」とは違うアプローチ
【日銀プレビュー】植田日銀総裁、緩和策維持のため円安抑制目指す
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、日本銀行の植田和男総裁が22日の金融政策決定会合の終了に際し、多少のタカ派トーンを打ち出すと予想する。
割安・高配当に個人マネー アクティブETF上場1週間余り
アクティブ(積極運用)型と呼ばれる上場投資信託(ETF)にマネーが流入している。東京証券取引所に初めて上場してから1週間以上が経過したが、事前に見込まれた機関投資家の売買だけでなく個人投資家の買いも入っている。中でもバリュー(割安)株や高配当株をテーマとした銘柄の人気が高い。
日銀マイナス金利解除「25年度を想定」日本生命の大沢氏
日銀の植田和男総裁が示唆したマイナス金利解除の可能性を巡り、日本生命保険で運用を統括する大沢晶子常務執行役員は「メインシナリオでは2025年度を想定している」と話す。「今後の春闘(春季労使交渉)で、持続的な経済成長とともに賃上げやインフレ動向を確認する」のが条件という。
「金利高乗り越える体質強化必要」 経産相、中小企業に
西村康稔経済産業相は19日の閣議後の記者会見で、政府が10月にまとめる経済対策について「やがてくるであろう金利高を乗り越えていける中小企業の体質強化も必要だ」と述べた。日銀の政策動向に備え、中小の賃上げをはじめとした取り組みを支える対策を検討する考えを示した。
検索・SNS大手6社指定へ 総務省、行政指導しやすく
総務省は19日、米グーグルや米メタなど検索サービスやSNS大手6社を、電気通信事業法を適用する指定事業者にする方針を決めた。10月上旬に告示する見通し。指定した事業者はサービス停止や個人情報漏洩などがあった場合、総務省が行政指導しやすくなる。
政府、資産運用業の海外勢参入促進 首相がNYで表明へ
■為替
ドル・円は147円台後半、日米の中銀イベント控え方向感欠く
19日朝の東京外国為替市場のドル・円相場は1ドル=147円台後半で推移。18日は東京市場が休場で、海外時間では米連邦公開市場委員会(FOMC)や日本銀行の金融政策決定会合を週内に控え、狭いレンジでもみ合った。
中国人民元に一段の圧力か、8月の資本流出は15年以来の大きさ
中国はここ数年で最大の資本流出に見舞われており、当局者の間では低迷する人民元への圧力が強まるとの懸念が浮上している。
■債券
ハイイールド債の発行ラッシュは始まったばかり-ブラックロック
米資産運用会社ブラックロックのアマンダ・ライナム氏は、ジャンク(投機的格付け)債発行の回復は加速するとの見方を示した。2025年に始まる満期の壁を前に、企業が先手を打とうと努めるためだという。
ジャンク債の発行は10-12月(第4四半期)を通じて増える可能性が高いと、ライナム氏は指摘。地政学リスクや「より長くより高い」金利見通しを背景に、最高財務責任者(CFO)や財務担当者は資金調達の機会を模索するようになると、同氏は付け加えた。
「負債による資金調達のコストは年内あるいは24年始めにかけてこれ以上良くならないかもしれないと、企業は考えるようになってきている」
安全なはずの米国債、ドル当たり50セント割れ-投資家の痛み浮き彫り
債券の世界では、額面1ドル当たり50セントという価格は非常に安い。多くの場合、発行体がデフォルト(債務不履行)に陥りかねないディストレス状態にあるという投資家の見方を反映する。
米10年債利回り、来年は2.5%に低下も-アライアンスバーンスタイン
債券ファンドが4カ月にわたる米国債売りに動揺する中、アライアンスバーンスタインのマネーマネジャーは、今が買い時との見方を示している。
10年国債利回りは来年、米金融当局の利下げに伴い2.5%から3%の間に低下する公算が大きいと予想した。
UBS持ち株会社が起債、クレディS合併発表後で初-45億ドル相当
4.25年債と6年債、11年債の3本のトランシェで構成し、発行総額は45億ドル(約6650億円)。
11年債の利回りは米国債に200ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上乗せに設定されたという。
債券15時 長期金利、0.715%に上昇 日銀修正の思惑根強く
長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.015%高い0.715%に上昇(価格は下落)した。日銀のマイナス金利の早期解除の思惑や日本が連休中の米長期金利の上昇が国内債相場の重荷になった。
■中国
碧桂園、18日にドル建て債利払い期限と元建て延長投票終了-試練続く
中国不動産開発大手の碧桂園は18日、新たな試練に直面する。ドル建て2025年償還債で実質的な利払い期日を迎えるほか、同社が提示した人民元建て債の償還延長案に関する債権者の投票も同日終了する。
仮に否決されれば、碧桂園は来月に元本残高4億9200万元(約100億円)を返済する必要がある。
碧桂園、人民元建て債の償還延長で新たに承認取得-元本100億円相当
中国不動産開発大手の碧桂園は、人民元建て10月21日償還債の返済延長案に関して保有者から承認を得た。今回の債権者による投票期限は3度延ばされていた。
中国恒大の債務再編、「クラスC」債保有者が鍵握る-来週債権者集会
恒大が「クラスC」とのみ記している社債の債権者グループはこの種の債権者としては2番目に多い債権150億ドル(約2兆2200億円)を保有。直近の公開情報開示によると、恒大が債務を巡る計画で十分な支持を得られなかった2つの債権者グループのうちの一つだ。
融創中国、米連邦破産法15条の適用申請-オフショア債再編近づく
中国の不動産開発会社、融創中国はニューヨークで米連邦破産法15条の適用を申請した。オフショア債の再編が確定しつつある中で、資産の保全を図る。
中国不動産危機の発端となった中国恒大集団は先月、連邦破産法15条の適用申請を行っており、これに続く動きとなる。
碧桂園のドル建て債保有者、まだ利払い受けず-30日間の猶予あり
中国の不動産開発大手、碧桂園が発行したドル建て2025年償還債の保有者2人は、実質的に18日が期限となっていた利払いをまだ受けていないことを明らかにした。
■ユーロ圏
ECBカジミール氏、今のサイクルで9月利上げが最後の可能性
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのカジミール・スロバキア中銀総裁は、9月の利上げが今のサイクルでは最後になるかもしれないとの見解を示しつつ、これ以外の利上げの可能性も「排除することはできない」と述べた
英中銀とECB、利上げ継続でスタグフレーション回避を-ルービニ氏
欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(英中央銀行)は「スタグフレーション」を防ぐために利上げを続ける必要があると、著名エコノミストのヌリエル・ルービニ氏が警告した。
■コモディティ
シェブロン豪LNG施設が全面生産再開、先週の障害後-ストは続く
米シェブロンは、障害が先週発生していたオーストラリアの液化天然ガス(LNG)輸出施設からの全面的な生産を再開した。労働組合側は同施設でストライキを続けている。
原油高の勢いは失速へ、OPECプラス以外からの供給拡大で-シティ
米シティグループは原油相場について、減産を続けるサウジアラビアとロシア両国以外からの供給増加によって上昇の勢いは弱まるとの見方を示した。
OPEC以外からの供給が今年は日量180万バレル、来年はさらに同100万バレル増えると予想。カナダ、ブラジル、アルゼンチン、ガイアナ、ノルウェーなどでの増産が見込まれるとしている。
原油相場、バレル100ドル回復が再び視野に-現物プレミアム急拡大
原油先物相場が上昇する中、トレーダーやアナリストの間では1バレル=100ドルを再び付けるかどうかではなく、いつ付けるかを巡る議論が高まっている。
世界中で原油現物の期先物に対するプレミアムが急拡大している。中東やアゼルバイジャン産だけでなく、ロシアから供給される原油でさえもだ。季節的な需要増加を前に、石油精製業者が十分なディーゼル燃料を生産するために奔走している。
石油需要は10年以内にピークを迎える
国際エネルギー機関(IEA)の最新の予測によると、3つの主要エネルギー源である石油、天然ガス、石炭に対する世界需要は、この10年でピークを迎えることになるという。
原油続伸、北海ブレント10カ月ぶり95ドル-100ドルのリスク高まる
アジア時間19日昼の取引で、原油価格が一段高となり、北海原油代表油種ブレント先物相場は、昨年11月以降で初めて1バレル=95ドル台に上昇した。
米FRB「宿敵」原油高に直面-成長圧迫、インフレ加速の両面で脅威
■その他
インドでネット遮断頻発、デジタル経済に逆行
Bard が高性能なモデルにアップデート
マガジンの紹介
平日:日米の株式市場動向、ドル円を中心に為替動向についてニュースをまとめたり、私見を綴っています。
私見が要らなければニュースメモを見るだけでも一通り市場の動向が把握できるかと思います。
土日:週間展望や自分の資産運用について綴っています。
フォローして頂けると励みになります!
サポートを頂くことがありましたら、主に投資資金としてありがたく頂戴しますm(_ _)m