魔女の退院/詩と朗読 poetry night 第52夜
家には魔法がかかっているので
男の前にご飯は湧いて出る
男の散らかした物は
いつの間にかもとの場所に戻る
男が何もしなくとも物事は進んでいくのである
🌿「詩と朗読 poetry night」
第52夜は、「魔女の退院」。
スキマ時間に聴いていただければ幸いです。↓
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「魔女の退院」
ご飯は湧いて出てこないし
洗濯物は消えてなくならない
散らかった物も綿埃も
片づけて掃除をしなければ
永遠にそのままである
家には魔法がかかっているので
男の前にご飯は湧いて出る
男の散らかした物は
いつの間にかもとの場所に戻る
男が何もしなくとも物事は
進んでいくのである
その魔法をかけているのは女だと
気づこうともしないのだが
しかし魔力は使いすぎると尽きるもの
魔法がかけられなくなると
女はいつも病院に入る
そこには魔法使いと沢山の弟子
リズムある魔法が
絶えず飛び交っていて
女は初めて自分の存在を投げ出し
その魔法に身を委ねるのだった
昨日、女は退院した
本調子にはほど遠い、ヨレヨレな魔女
帰ったらやはり
家にかけた魔法の効力は
切れたままだった
冷蔵庫は空っぽ
洗濯カゴはいっぱい
またかけ直さなければ
なけなしの魔力で
いつまで私は
魔法をかけ続けるのだろう
これからずっと?
家と
男に
※写真は拙著「入院が待ち遠しい!?〜モノかき患者の日常生活〜」より