ギターキャビネットのマイキングの始め方
ギターの音作りにおけるマイキングの重要性はどれだけテクノロジーが進化したとしても揺らぐことはありません。どんなプロギタリスト、プロエンジニアであっても、マイキングを疎かにする限り良いギターサウンドを録音物の中で実現することは出来ません。
では良いマイキングとはどんなもので、それを実現出来るのはどういう人なのでしょうか。この記事では、良いマイキングを知り良いギターサウンドを出せるようになるためのヒントと、初めてマイキングに挑戦する時の具体的な始め方について提言します。
更に、下記の動画のような音を録るために僕がどのようにマイキングしているかについても解説します。正しい予備知識を持ってトレーニングすれば、誰でも良い音で録れるようになると思うので、是非皆さんギターのマイク録音にトライしてみて下さい。
結論: 良いギターサウンドをプロデュース出来る人は良いミキシングエンジニアである
身もふたもないことですが、良いギターサウンドを録れる人を身の回りで思い浮かべてみると、その人は必ず良いミキシングが出来ます。つまり、良いミキシングが出来ない(ギターサウンドが最終的にリスナーにどのように届くのかをイメージ出来ない)人は、良い音でギターを録ることが出来ません。
アンプやペダルのセッティング、竿選びはギタリストの責任の範疇ですが、これはギタリスト本人が演奏中に聴く音を作るプロセスです。
これに対し、エンジニアがその音をマイクで拾うのはリスナーが聴く音を作るプロセスです。
なので、録音物におけるギターサウンドを突き詰める限りミキシングを避けて通ることは出来ません。
なぜマイキングが重要なのか
アンプシミュレーターの普及により「音作り」という言葉の中身がスピーカー、マイク選びまでを指すようになってしまったからです。少なくとも宅録の質を上げるためには絶対にマイキングを理解することから逃れられません。
重要: マイキングに不正解は存在しない
いきなり言っていることが矛盾していると感じるかもしれませんが、マイキングに不正解は存在せず、そこにあるのはマイクをどう立てたかとどんな音が拾われたかの因果関係だけです。
なので、マイキングが上手いことを言い換えるとしたらそれは「最終形をイメージし、そこに最短距離で至る音を録れること」と言えます。目指す音が決まっていればそこに近づけるためのマイキングは一意に定まりますが、ビジョン無くマイクを置いてその後をミキシングのフェーズに丸投げする限り楽曲のための録り音になることはありません。
最終形さえイメージ出来ていれば、そこに至るためにもしかしたらグリルにベタ付けでキャップの中心を狙うのが最適かもしれませんし、場合によってキャビネットの背面から狙うべきかもしれません。
重要なのはどういう音に仕上げたいかで、どこにマイクを置くかはそこからの逆算で決まるものです。だからこそどんな音楽でも、どんなアンプでも同じ場所にマイクを立てるということはあり得ません。
ゴールの定め方
ギターサウンドのゴールを定めるためには、ギターの音がかっこいいと感じるミックスの曲と出会うのが重要です。この時点でギタリストが非常に有利であることが分かります。どんなスタイルのギタリストであっても自分の好きな、追い求めるギターサウンドが鳴っている1曲があるのではないでしょうか?
そこに至るために使用機材を真似するのは最も有効な手段ですが、その先の「どう録られたか、どうミックスされたか」まで想いを馳せることもまた重要です。また、どのような編成のアレンジの中でギターがどのような役割を果たしていたかも考える必要があります。
マイクを立ててみる
マイキング上達の第一歩にして最大の障害はまずマイクを置いて録音してみることです。既にエンジニアとしてのキャリアが長い方には想像が難しいかもしれませんが、シミュレーターに慣れたギタリストがギターキャビの前にマイクを置くというのは何かのきっかけがないと踏み出せないと思います。
ギターキャビネットへのマイキングが難しい理由とやりやすい理由をそれぞれ挙げると、まず難しい理由は楽器とメインマイクの距離が非常に近いことです。メインマイクがソースに近いと2つの問題が発生します。
ここから先は
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?