「自分が喋る動画」を撮る時のポイント
カメラの前に座って喋るなんて機会、そう頻繁にあるものではないかもしれませんが、いざやらないといけなくなった時に急にカメラの前に座らされると上手く言葉が出てこないなんてことは往々にしてあると思います。
本記事では何かしらの事情で自分でカメラを回しながら喋らなければならなくなった時に視聴者がストレス無く見られる映像にするために私が気をつけていることをいくつかご紹介します。
動画を撮ることに限らず人前で発言する時に全般的に役に立つ知識も含まれるので、例えば普段の会議での発言等をスマートにやりたい人のヒントにもなるかもしれません。
まずは機材だったりテクニカルな要素を先に挙げて、後で自分自身のスキル、練習で解決する部分を解説します。
マイクは可能な限り口元に近づける
これ以上に重要なことは無いと言い切っていいくらい重要です。いくら流暢に喋ったとしてもマイクが遠ければ部屋の反響やノイズの成分が増えていって不明瞭な音声になってしまい、視聴者にとってストレスになってしまいます。
ノイズを減らす
マイクを近づけた結果音声が明瞭になったとしても、バックグラウンドノイズやリップノイズはケアしないとこれまたストレスを与える音声になってしまいます。
最近はいろんなツールでこれに対処できるようになっています。立場上一番触れる機会の多いiZotopeのRXが私にとっては一番楽ですが、別にWavesのClarityでもSteinbergのSpectraLayersでも何でもいいと思います。
フリッカーに気をつける
いざカメラを通すと、照明は映像の印象に極めて大きなインパクトをもたらします。なので良いライティングをすることが望ましい…のですが、それはそれで非常に知識と訓練がいる分野なので一旦置いておきます。
ここで重要なのは照明とシャッタースピードの関係性です。日本は地域によって家庭用の電源が50Hzだったり60Hzだったりしますが、この周波数とカメラのシャッタースピードが噛み合わないと露骨なフリッカーが発生します。
多少の明るさや感度の設定ミスは後で調整がききますがフリッカーが入ってしまうともうどうにもならないので、撮影を始める前にシャッタースピードを色々試してみてフリッカーが入らない数値にしてから撮るように気をつけると良いでしょう。私も詳しくないので誰かLEDのフリッカーを避ける方法をご存じの方教えて下さい。
というのがテクノロジーでアプローチする部分で、ここからはスキルと根性で対処する部分です。動画の構成を考える部分はまた別の能力の話になるので一旦さて置き、本記事では「喋る」という部分にフォーカスして解説していきます。
練習しまくる
練習すればするほど喋りの動画の完成度は上がっていきます。練習無しに流暢に喋れる人は存在しません。なので、動画の中で喋らなければならない内容がスムーズに喋れるようになるまで、カメラを回さずにひたすら練習して下さい。
2~3回繰り返していると自分の話の流れが口と頭に定着してくるので、次に何を話すんだっけという焦りがなくなっていくのが感じられると思います。
視線のやり場を決めておく
インタビュー的な動画であれば仮想インタビュワーを脳内でカメラ外に座らせてそちらを向いて、解説的なものであればカメラのレンズを見て喋れるように練習すると良いでしょう。自分に向かって、または撮影現場にいる誰かに向かって喋っていることが伝わるようにすると聞きやすくなります。
つっかえたら撮り直す
例えば何十分もノーカットで喋る必要は全くないと思いますが、つっかえた時にそのまま続けて後で編集でジャンプカットしてしまうのではなく、極力1トピックの間はカット無しで喋れるよう頑張って撮り直します。文章の途中で露骨に何度もカットしていることが伝わると視聴者の集中が阻害されるでしょう。
フィラーを入れない
「あー」や「えー」「あのー」といった所謂フィラーを入れないように頑張ります。最初のうちは無意識のうちに出てしまうと思いますが、練習を繰り返せば自然と出なくなっていくと思います。
台本を書くなら話し言葉で書く
台本を丸覚えして喋るのは逆に難しいので大まかな流れを書く程度に留めた方が動画制作は楽だと個人的には思いますが、別映像を差し込みながらそこにナレーションを重ねるような作り方の場合は台本を作ってしまった方が楽な場合もあります。
そんな時の台本は台本を読んでいると感じさせない話し言葉、言い換えると自分が普段の会話の流れの中で使いそうな言い回しで書くのが良いと思います。いかにも台本を読んでいますという感じの棒読みになると視聴者は急に頭に入ってこなくなると思います。
台本をカメラのレンズの位置に表示させるプロンプターのような便利アイテムもありますが、もし棒読みになってしまうのであれば使ってもあまり意味が無いと思います。学生の頃の現国の授業に戻ったつもりで自然に文章を読めるよう練習して下さい。
逆に大筋だけ決めてその場で考えながら喋る場合は、まるで台本を読んでいるかのように喋れるまできっちり練習してからカメラを回すと良いでしょう。
編集点を意識する
長口上はどうしても一発で上手く行かないことがあるので途中で切って編集でつなぐことも多々あります。その場合上手くつなげるポイントを素早く見つけるために、カメラに向かって話ながらある程度自分が直近で何を喋ったか覚えておくと便利です。
「さっきここまで喋ってこんな言い回しだったから、こう喋り始めればつながるはずだ」というのが分かっていると、いちいちカメラストップさせて話の流れを確認する必要がなくなるので、時短に繋がりますしストレスも減ります。
音で分かる言葉を使う
日本語の場合、音読みを組み合わせた熟語は耳で聞いた時に頭の中でぱっと漢字に変換できなかったりするので、なるべく訓読みで話したり、意味の伝わりやすい言い回しを使うようにします。
奏功する → 功を奏する
抑制する → 抑える
可聴域 → 耳で聞こえる帯域
静的な → スタティックな
耳で聞いて直ぐに意味が理解できる言葉を意識的に使うことで、聞きやすい動画を作ることができるでしょう。
断定的でシンプルな言葉を使う
これは動画というより社会人として仕事をするうえでの話し方になるかもしれませんが、例を挙げると
○○しようと思います → ○○します
のように不必要に回りくどい言い方を避けるだけで話が頭に入ってきやすくなります。
まとめ: 気合が重要
「なんだよ、ほぼ気合で時間かけてやるしかないじゃん」と思われるかもしれませんが、実際ほぼ気合で時間をかけてやるしかないのが喋りの動画です。
「わかりやすい話し方」の裏には、必ずと言っていいほどこれらの途方もない努力が隠されています。才能で一朝一夕で身につくものでは決してありません。ただ、ポイントを意識して準備をするだけでぐっと良くなる部分でもあります。
最低限その動画の中で何を喋るのかを決めて、話の流れを体に覚えさせてから撮るようにすれば、それだけで格段に見やすい動画に仕上がるでしょう。