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ライブでアンプシミュレーターを使う

ここ15年ほどの間に、ステージ上でアンプシミュレーターを使うことはそれほど珍しいことでもなくなりました。アンプシミュレーターは便利なもので、FOHに対してラインで完成形の音を送ることができるため世界中どんな国のどんな会場に行っても必ず同じ音を出すことができます。

しかし、弾き心地を考えた時にやはりステージ上でチューブアンプが鳴っている時の心地よさを感じたいというギタリストは当然沢山いて、その要望を満たすための機材であったりセッティングの方法が次々と生み出されています。

本記事では、ステージ上での中音を気持ち良くすることと、FOHに送られる信号の品質を両立するためにアンプシミュレーターをどのように使うのがよいのか、またどの機種がその点で優れているのかを考察していきます。

満たすべき条件は何か

音作りのゴール、満たすべき条件は直前で書いた通り

  • FOHにラインで送られる音の質を下げることなく

  • ステージ上の音をなるべく実機アンプを弾いている状態に近づけること

と言っていいでしょう。そのために何をすべきかを考えていきます。

FOHに送られる音

FOHに送られる音の質を下げないのはある種簡単で、しっかりとアンプ、キャビのシミュレーションで音を作り込んだ上でプロセッサーの出力にグローバルの妙なフィルターが入らないようなルーティングを担保することが重要です。

プロセッサーからはローインピーダンスの強い信号が送られるため、マイクの信号を送る時のようにノイズにシビアにならなくてもいいと思います。ただ、プロセッサーの出力が小さいとゲインステージング的にS/N比が悪化するためFOHの受け側にピークマージンが残る範囲でなるべく大きな信号を送った方が安全だと思います。

ステージの中音

問題はこいつです。いくつか方法は挙げていきますが、ここでなるべく守らなければならないルールがあって、それは

「プリアンプ > パワーアンプ > キャビネット + マイク」
という音作りの要素が二重にかからないようにすること

です。このどれが欠けても、ステージ上で実機アンプを弾いているフィールは得られません。解決法を考えてみましょう。

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