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プライベートスタジオを作りたい人へ
この記事は新しくプライベートスタジオを作ろうと検討している音楽家の方向けに、新しいViViX Studioが出来るまでにあった意思決定を纏めたものです。
出来上がったスタジオの中身についての詳細は下記の記事か6スタさんのYouTube動画、サンレコの2023年1月号のプライベートスタジオ特集をご覧下さい。
自宅スタジオor外スタジオ
まず最初に悩むのがスタジオを自宅の中に作るか外に作るかでした。それぞれのメリットデメリットを挙げると
自宅スタジオのメリット
出勤が0分
起きていれば24時間制作出来る
忘れ物のリスクが無い
家賃が1軒分で済む
自宅スタジオのデメリット
オンオフの切り替えが困難
人を呼びづらい(奏者、インタビュー、打ち合わせetc)
作業空間を広く取りづらい
外スタジオのメリット/デメリットは上記をそのまま逆転させたものになります。
僕の場合はミュージシャン(特にボーカリスト)を呼んで録音する機会がほぼ無いこと、作編曲とギターレコーディング、ミキシングが主業務であることから外スタジオを構えても費用対効果が見合わないと判断し自宅スタジオを選びました。
逆に、ミュージシャンを呼ぶ機会が多い方やチームで制作されている方は自宅以外の場所に制作環境を作った方が良いと思います。
スタジオで何がしたいか/何をやらないかを決める
物件を探すために、スタジオでどんな作業をやってどんな作業をやらないかを決める必要があります。そしてこの「やらないこと」を決めるのがスタジオ作りを前に進める上で非常に重要でした。僕の場合は改めてまとめると
スタジオでやること
スピーカーで音を出しながら作編曲
ギターアンプのマイク録音
5.1chまでのミキシング
動画撮影、配信
スタジオでやらないこと
ミュージシャンを呼んだレコーディング
チームでの制作
クライアントとの打ち合わせ
大体こんな感じです。コンセプトが決まると物件選びが出来ます。
物件探し
今住んでいる家の中に作るのでなければ新たに物件を探すことになります。気にしたポイントは
マンションor戸建て
間取り
施工の可否
でした。
間取りについてはスタジオに充てる部屋の床面積が可能な限り広く天井が高いことを重視しました。先述の通りミキシングが主業務のため、少しでもモニターを正確に行う必要があるからです。マンションと比較すると新築戸建ての方が当然間取りの自由度は高くなりますが、マンションの方が住むということを考えると魅力的な部分も多いです。(24時間ゴミ出しOKとか)
また、スタジオ用の部屋と別の居室が隣接しているかも重要なポイントでした。隣接していれば、例えばケーブル用の穴を空ければ
マシンをスタジオルームの外に逃す
ミュージシャンにスタジオルームに入ってもらって隣室からオペレート
ギターアンプの音作りをスムーズに
といった可能性が広がります。(ちなみにうちは結局ケーブル穴を空けていません)
施工の可否については賃貸では事業用物件でない限り不可能に近いと思います。自宅内にスタジオを作るのであれば物件の購入はほぼマストだと思います。物件の購入前に不動産屋から管理会社に問い合わせてもらいましたが、ここでNGが出れば当然スタジオを作ることは出来ません。また、マンションであれば上下階や隣の住民からの同意が得られなければ施工することは出来ないと思います。
施工会社選定
スタジオ施工をされている会社は色々ありますが、当然得意分野は異なります。僕がスタジオ施工会社に求めるものは
遮音性能が高いこと(D-70くらいは欲しい)
スタジオ内の響きが不自然でないこと
費用負担が大きすぎないこと
見た目に生活感が出ないこと
ギタリスト目線で考えて頂けること
だったのと、以前スタジオデスクを製作していただいて既にお付き合いがあったため最終的にアコースティックエンジニアリングさんにお願いすることになりました。
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図面作成、詳細スペック、内装の検討
やりたいことだけお伝えした後は「そんなに丸投げにするか???」というくらいお任せしてしまいました。僕から敢えてお願いしたことと言えば
ギターアンプは95~100dB SPLくらいで鳴らしたい
元々あった出窓をアンプの収納として活かして欲しい
最下段はHELIOS用に高さを数cm大きめにして欲しい
リアスピーカー設置用に壁の中にケーブルを通したい
マルチカラーのLED間接照明が欲しい
くらいでした。内装については過去の施工事例のカタログを頂いたので自分の好みに近いものをお伝えして、あとは床の材や吸音ボードのカバー、壁紙の色等を事務所に伺ってご相談しました。本当にお世話になりました。
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床はいかにも木材っぽいビニールボードで、正面にはマルチカラーLEDを入れてもらいました。ノイズカットトランスもありますね。奥の巾木の中にはケーブルを通せるようになっていて(これもご提案頂いた仕様)、今はスピーカーケーブルを這わせています。
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電源に関しては気にされる方はとことん気にされる部分だと思いますが、僕は気にしないタイプなのでアコースティックエンジニアリングさんに薦めて頂いた200V > 117V + 100Vに落とせるノイズカットトランスを購入してユニバーサル電源の機器を117Vに集約する程度の対策にとどめています。
コンセントも沢山(9箇所くらい)配置するよう提案して頂いたので電源をとるのに困ることもありません。
また気になるのが電源容量の契約ですが、アウトボードをほとんど持たない制作スタイルということもあり40Aで問題なく運用出来ています。
いざ完成すると不足するアレコレ
スタジオ移転に際し必要に迫られて買い足したアレコレを列挙してみます。
スピーカーケーブル
電源ディストリビュータ(117V用)
電源タップ
スタジオラック
台車
ラインケーブル(結局何本買ったんだ???)
ギタースタンド
アンプスイッチャー
電源ケーブル
エアコン
他にも探したらポロポロ出てくるかもしれませんが、全体的にケーブルや電源等、制作をより快適に行うための環境作りで必要なものが色々ありました。
何が言いたいかというと意外と細々とお金がかかるということです。
ハコが出来上がってからセットアップが終わるまで
勿論スタジオはハコが出来たら完成というわけにはいきません。機材を入れて制作出来る状態になって初めて完成です。
今回はハコが出来るまでをアコースティックエンジニアリングさんにお願いして機材の配置と配線も概ね自力でやりましたが、壁の中を通すワイヤリングやサラウンドの設定、測定、その他諸々良い音で聴けるようにするためのセッティングは全てONZUの井上さんにお願いしました。
正確な音を聴けるようにするためのスピーカーの置き場所、角度の調整等は専門知識や専門機材が必要になってくるので、自分でやるのとプロにお願いするのとでは雲泥の差です。実際、井上さんに設定してもらった環境ではSoundID要らんやろ説があるくらい気持ちよく音が聴けています。
手続きの順番を改めて整理する
賃貸にせよ購入にせよ、もし物件を新たに契約する場合は物件に関する出費が発生するタイミングと施工が終わるタイミングのラグを最小限に留めたいものです。マンションの場合、細かく前後することはあると思いますが下記のような流れで進行すると思います。
物件問い合わせ
内見、採寸
施工可否の問い合わせ
物件申込
施工会社への問い合わせ
物件契約
スタジオの詳細打ち合わせ、物件下見
物件引き渡し
近隣住民への説明
物件管理会社への施工申込
着工
竣工
機材搬入(新規購入分も含む)
セットアップ
アコースティックエンジニアリングに最初の問い合わせを送る時は死ぬほど緊張しました。また、工事は長引くこともあるのであまりギリギリのところに搬入予定を入れてしまうと危ないかもしれません。
ちなみに前のスタジオのバラシは引越の2日前くらいから行い、引っ越してからセットアップが完了するまでが5日ほどかかったので、実質1週間ほどは完全にダウンタイムがありました。
また新しいスタジオの音に慣れるまでに数ヶ月かかったので、引越直後はミックスの仕事は注意深くやる必要がありました。
リフォームの順番
僕のケースのように中古マンションの購入とスタジオ施工を同時に行う場合、居室部のリフォーム(壁紙貼り替え等)とスタジオ部分の施工をどのようなスケジュールで行うか、また責任範囲について不安になると思います。
これは正直ケースバイケースなのではと思ったりもしますが、僕の場合はまずスタジオ部分を先に全て仕上げて頂き、その後に居室部のリフォームをお願いしました。居室部は不動産屋からご紹介頂いたリフォーム業者に依頼したので、トラブルが起きないようにという意図もありました。
なんにせよ、重要なのは不安に思ったら早めに相談することだと思います。
まとめ
というわけで僕のスタジオが完成するまでを振り返ってみました。新しいスタジオに移ってみての感想は「本当に作ってもらってよかった」です。制作環境は良いインスピレーションをもたらしてくれますし、成果物のクオリティにダイレクトに影響を与えます。
数万円や数十万円の機材を買い集めるのも楽しいものですが、ある程度必要なものが集まって来たらスタジオという大きい買い物を視野に入れてみるのも良いのではないかと思います。