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Intel iMac 5K RetinaからMac Studioに乗り換えるまで(準備編)
本記事は、Mid 2019の27インチIntel iMacからM2 MaxのMac Studioに乗り換えるにあたって考えたこと、準備、調査したことを纏めたものです。
移行前に書いたのが大部分なので、移行後に気が変わった部分も含まれることを予めご了承下さい。
実際に移行してみて直面した問題や得られたメリット、未解決の問題などは下記の記事をご参照下さい。
移行した理由
2019年のIntel iMacは十分にスペックが高いため、音楽制作においてスペックが限界を迎えているわけではありません。それでもこのタイミングでの移行に踏み切った理由は
高負荷時の発熱とファンの騒音が酷い
動画編集中のコマ落ちが酷い
OBS配信時やZoom通話中にマシン全体の挙動が不安定になる
Topaz Video AIの機械学習にかかる時間が長過ぎる
というDAWの外の出来事が主な原因でした。
移行前のiMacのスペック
Intel Core i9 8コア 3.6GHz
64GB RAM
2TB SSD
macOS 12 Monterey(元は10.14 Mojave)
移行後のMac Studioのスペック
M2 Max、38コアGPU
96GB RAM
4TB SSD
ディスプレイ探し
最初に直面したのはディスプレイ探しでした。2012年以来3台連続で27インチのiMacを使用しており、直近の2台に至っては5K Retinaということもあって手元にモニターディスプレイがなく、まずはモニター探しから始めました。
Studio Display vs LG 5K UltraFine
全く同じ解像度と文字の読み易さを実現するのであれば同じスペックのものが良かろうということでApple公式のStudio DisplayとLG 5K UltraFineを検討したのですが、いかんせんどちらも価格が平均的な4Kディスプレイの3~5倍程度あり、おいそれと手が出せる代物ではありません。
まずは自分のタスクや使用ツールを整理して、5Kの必要性を再検討しました。
がっつり音楽制作(Nuendo、LUNA、Pro Tools)
ちょっとした動画編集(DaVinci Resolve)
ちょっとした画像(Photoshop)
そして至った結論が5Kはやめておこうでした。
4K vs QHD
次に考えなければならないのが画面解像度です。5Kディスプレイを使用している際の実効(?)解像度は2560x1440(QHD)なので、単純に4Kディスプレイにすると文字が小さくなってしまうリスクがあります。
ではモニターのインチ数を上げてはどうかという発想になりますが、残念ながら私のスタジオデスクは27インチディスプレイを設置することのみを想定して作られたオーダーメイドのためインチアップは出来ません。
4Kディスプレイを選んでスケーリングで画面領域を狭めるとドットバイドットの表示ではなくなって文字が滲んでしまうのではなかろうかという不安もあったため、大人しくQHDのディスプレイを選ぶことに。
最後は見た目
正直ディスプレイのスペック表を見てもどれがいいかさっぱり分からないので
ベゼルが狭い
ベゼルにメーカーロゴやインジケーター、ボタンが無い
ベゼルが黒
高さと傾きが調整できる
という観点でDELLのU2722DEを選びました。公式通販で19時半頃に注文したら翌日の14時頃に届いてびっくりしました。
Native vs Rosetta 2
さて、ここからは移行後のソフトウェア面の問題を挙げていきます。最大の関心事はやはりNative vs Rosetta 2問題でしょう。鬼門になったソフトウェア類は次の通りです。
UAD DSPプラグインとNuendo 12
Vienna Ensemble Pro 7
Nektar Panorama P4
UAD DSPプラグインとNuendo 12
UADのDSPプラグインは当然Apple SiliconにNative対応しています。しかし、UADのDSPプラグインはいずれもVST3非対応です。
多くのユーザーにとってそれは問題ではありませんが、MacでCubase/Nuendoを使っている僕のような人間のみ困った事態になります。何故なら、Mac版のApple Silicon NativeのCubase 12/Nuendo 12はVST2.xに非対応なのです。
ちなみに、UADx(Native版UAD)はVST3対応済です。
ここでとることが出来る対処は次のいずれかです。
Rosetta 2でNuendo 12を使う(Rosetta 2版はVST2.xを使用可能)
Apple Silicon版でNuendo 12を使い、UADxがリリースされていないものは他社の代替プラグインを使う
比較的設計思想の近いStudio Oneに移行する
UAのフォーラムを見る限りVST3への対応予定が無いわけではなさそうですが、目処が立っている様子も無さそうに見えます。個人的な予想(妄想)ですが、順次VST3対応を進めていて既にUADx版がリリースされている = VST3版が存在するという状態なのではないかと推察します。
とりあえずUAD DSPプラグインが無くても作業が出来るように、主要どころの代替プラグイン情報はまとめておきました。
SteinbergがVST2.xに再度対応する未来は0%だと考えるのが無難でしょう。
Vienna Ensemble Pro 7
VSLのフォーラムを数日に1度確認しているのですが、VEProのApple Silicon Native対応進捗スレッドではVSLスタッフとユーザーの対話が盛んに行われています。
2023年3月に「もう少しで対応できます! まずSynchron Playerから対応を始めてVEProも早い段階で対応予定です!」という動画が公開され、その後もApple Silicon対応版に向けた最終準備パッチが公開されたり内部のテストでは機嫌よく動いている旨などが投稿されていますが、2023年6月11日現在でApple Silicon対応版はリリースされていません。
ここでとれる対処法は以下の通りです。
もうしばらくDAWをRosetta版で使う
DAW内完結環境を構築する
AudioGridderに移行する
VEProには処理負荷の分散以外にもプロジェクトの読み替えの高速化等のメリットが大きいため、DAW内完結環境が最適解だとは個人的には思えません。
またそれはそれとして、Apple Silicon対応後もAS非対応のレガシープラグイン、インストゥルメントをDAWの外で動かすためにVEProのRosettaサーバーアプリが活躍することは間違い無さそうです。OSが32bitから64bit環境に移った10年前を思い出しますね。
Nektar Panorama P4
MIDIコントローラーとしてNektar Panorama P4を長年使っているのですが、実はこのキーボード、Cubase/Nuendoの自動バンクセレクトに対応した数少ないのムービングフェーダーということに後から気付きました。電力が少しでも足りなくなると認識が切れるという問題もあるのですが概ね機嫌良く使ってきました。
ところがこのフェーダー等のコントロール部分がApple Silicon非対応なのです。(Logic Proのみ対応済) 正確には、AS Native環境では汎用MIDIコントローラーとして認識されるため本来のDAWとの深い統合は実現出来なくなるとのことです。
こればかりは別の鍵盤やコントロールサーフェスに買い換えたところで解決しないため、
我慢する
RosettaでNuendoを使う
ミックスはLUNA + 何かしら別のコントロールサーフェスを使う
将来的な話をするとNektarもLogic以外のDAWでもApple Siliconでの統合を目指しているでしょうし、Cubase/Nuendoを制御できるSteinberg純正のコントローラとしてCC121の後継機種の開発も進めているとはSteinbergのフォーラムで言及されていました。
また、NAMM 2023で発表されまだ続報のないNektar Panorama CSTであれば諸々の問題を解決してくれそうな気もします。
この件に関してはSSLのUF1がCubase/Nuendoに対応してくれるのがベストだと感じていて、SSL 360°アプリのv1.6で対応予定と公式サイトFAQに記載があります。
外部マシンの要不要
これはApple Siliconとはまた別の話ですが、マシン移行はマシンを一台完結にするか引き続き外部マシンに処理を逃すかを再考するのにちょうどいいタイミングだなと感じます。
外部マシンを使うメリット
マシン移行の手間が減る
メインマシンを落としている間も常時テンプレがロードされた状態に出来る
超大規模テンプレートを作れる
メインマシンの負荷が下がる(発熱が少なく静音)
旧世代OSでしか動かないプラグインが使える
一台完結のメリット
低消費電力
Buffer設定を下げられる(低レイテンシー)
デスクトップ画面切り替えが要らない
ソフトウェアライセンスが1つで済む
最終的には人それぞれですが、僕の場合は自分の環境とタスクの種類を考えると1台完結にするのは難しそうです。