Quad Cortexを一日触って感じた凄み
とにかく軽い
本体重量は1.92kg程度で、楽器屋から紙袋に入れて手で持ち帰れる程度の重量でした。既存のフル機能プロセッサ(5kgオーバーのラックサイズ)と比較するとこれは革命的です。
いきなりWiFi
初回起動時にいきなりファームウェアアップデートを推奨されるのですが、WiFiに接続することで全てワイヤレスで完結します。作ったプリセットの保存や他人のデータをDLするのも全てWiFiです。
秀逸なUI/UXデザイン
大型カラーディスプレイに本体背面の図が表示され、端子をタッチして選択肢その端子のゲインやグラウンドリフトが設定できるようになっているのが極めて快適で、全てのプロセッサーがこうなって欲しいと感じます。
特にInput 1/2はInstrument接続時に入力インピーダンスを「下げられる」ようになっていて、これが非常に嬉しいです。
入力インピーダンスが低ければ低いほど電気的にはよろしくない接続になり、音の面ではハイ落ちが顕著になっていきますが、インピーダンスミスマッチによる音作りはデジタルで再現も復元も出来ないためアナログの世界で調整出来るのは非常に助かります。
またIN 1/2にはファンタム電源があるため、Neural Capture時にRNDIのようなアクティブDIを使うことが出来ます。これも非常に嬉しい。
シグナルチェインの中のブロックの追加や削除、移動も無駄に深く階層を降りること無く指一本で直感的に行なえます。空間系のトレイルバイパスのON/OFFも簡単です。
CPUパワーが許す限り好き放題ルーティング可能
例えばNeural Captureのアンプ+キャビブロックをシグナルチェインの中に複数配置することも可能なので、途中で信号を分岐させてSM57のNeural CaptureとR-121のNeural Captureを置いてそれらを好きなバランスでミックスすることが出来ます。
Neural Captureについて
これは業界のどの会社にもそう簡単に真似されることはありません。
オーディオインターフェース
USBでコンピュータと接続することでオーディオインターフェースとしてIn/Outそれぞれ8ch分のオーディオをやり取りすることが出来ます。
・ダイレクトとプロセス済の音を別chで録る
・グリッドで信号を分岐させて2つのアンプの音を別々に録る
・アンプ、リバーブ、ディレイを別々に録音、なんてことも
・その時のモニタリングはQCからダイレクトで行うのレイテンシー無し
とかなり柔軟な使い方が出来ます。
これから改善されていくであろう部分
データのバックアップや共有は全てiOS/AndroidアプリのCortex Mobileを介して行われます。Neural DSP独自のTwitterのようなSNSがあり、ここでNeural Captureを拾ってきたり友達とプリセットを送りあったり出来ます。
現状はスマホでしか出来ないので若干不便ですが、恐らくそのうちデスクトップ版がリリースされてストレス無く音色のエディットやプリセットの共有等が出来るようになるんじゃないかと予想してます。(サイトにはMacBookっぽい画像があるし)
またNeural Captureにキャビネットの情報が含まれるか否かがアイコンを見ただけでは分からないので、ここも何かしらの改修が加えられるのではないか(加えられるといいな)と思いました。
あとこれは既にアナウンスされていますがNeural DSPの既存のプラグインについてはQuad Cortexの中でロードして使えるようにする予定があるそうです。
細かい話ですがNeural Captureをした時に音量がノーマライズされないため、小さい音で録ってしまうとキャプチャ後のNeural Captureのブロックも音量が小さいままになります。これは改善されると嬉しいところです。
これから改善出来ない部分
プリセットの切り替えで音が途切れるのは回避不能なので、SCENEやSTOMPモードを使うよう推奨されています。
S/PDIFのようなデジタルのI/Oは端子が無いです。ただ、先述の通りオーディオインターフェースには出来ます。
音について
アンプブロックは軽く触った感じ好印象で、キャビネットのセクションもマイキングを変えたら割と現実に近い音の変化を楽しめましたが、詳細なレビューについてはだいぶ時間がかかりそうです。
まとめ
音の面だけでなく、如何に簡単に求める音に辿り着くのか、その操作性やUXが細部まで考え抜かれたプロセッサだなと感じました。
プロフェッショナルであれば「シミュレーターはここまでのことしか出来ない」という天井が一段押し上がったような感覚、初心者にとっては「何もしなくてもこんなに良い音が出る」というスタートラインが跳ね上がったような印象です。
半導体の供給難は当面の間続きそうですし日本の市場に十分な数が供給されるにはしばらく時間がかかりそうですが、「現代のギタープロセッサはここまで進化している」というということを知る意味合いでも見かけたら触ってみることをおすすめします。
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