初めてのベトナム放浪記
day2
※フィクションです
一人の青年のちっぽけな身体と精神力ではとても抱えきれない性欲と行動力を持て余していた私はそのエネルギーを燃料にベトナムまでフライト。外貨両替センターと現地のタクシーにあらかたお金をボられたのち、私は友人とクラブに行った。そのクラブはベトナムホーチミンでは一番有名とされているクラブで、胸の高まりを抑えつつ私たちは中へ。
クラブの中では現地のベトナム人、旅行しにヨーロッパからきた外国人、同じく旅行しに日本からやってきた日本人。誰かしら素敵な女性に声をかけようとするもなかなか勇気と機会が巡って来ず。
クラブに入って二時間くらい経過したころ喫煙所で項垂れていると一人の日本人がそこに。
「日本人ですか」と勇気を持って話しかけた。散々勇気が出ずに一歩が踏み出せていなかったのに、あるとき突然一歩を踏み出せると気があるときはなかっただろうか。私はそのとき完全にその状態であったのである。
神の見えざる手的な。
なんと話しかけたお姉さんは25歳で19歳の私達とは実に6歳差であった。あろうこかそのお姉さん方と仲良くなることができてクラブを移動することに。お姉さん達主導で。
これはベトナムという地で童貞という不名誉の象徴とも言える、錘を下ろすことができるのだと私は確信した。
拝啓母親へ遅ればせながら私はベトナムで童貞を捨てることができました。
ところがなんと、私の気が振れて踊り狂っている間にお姉さん達はどこか私が見えないところまで消えてしまっていた。童貞卒業をすることができたと思ったのに。
そういった落胆は女性およびプレイボーイ各位にはわからないであろう。とにかく私はひどく落ち込んだ。お姉さんたちと楽しく会話できていたのに。向こうも気があるような素振りを見せていたのに。童貞は基本的に自分に自信がない。その中でやっと一歩踏み出せたというのに。これでは、また殻にこもらざるを得ないだろう。私は再び籠るのである。何枚もの皮を重ねて。誰にも破られないような。
有り余る、性欲と行動力を引き換えに怒りと落胆を含んだ私は、わけもわからず現地のお婆さんとディープキスをしてそそくさと帰っていった。この気持ちが悪い年の差ゆえのぎこちない接吻の味は永遠に私の下に残り続けるだろう。
童貞卒業までの道程はまだまだ続く。