Deity of the Dead
金属に触れた手が震える。
恐怖と嫌悪感に抗いながら曲げた人差し指は他人のモノのようにぎこちなく、今にも心がくじけそうになっていた。もしそうなれば、この指をもう一度曲げる自信はなかった。
(しくじれないのに……お願い。止まって)
自分ではどうにもできない震えを抑えるため、水谷理香は教室の黒板に背中を預けた。石膏の冷たさが後頭部に伝わり、視線が天井を仰ぐ。
窓からは陽光が薄く差し込み、光の線が教室内を横切る。それらの光線が埃を浮かび上がらせ、微かな粒子が舞い踊っていた