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人と地域を元気にする地産地消の給食改革!【第3弾=東京都「ふじようちえん」②】

食を通した直感的な体験を重ねる幼児の学び②

【この連載について】
この連載は、総務省地域力創造アドバイザー/食環境ジャーナリストの金丸弘美さんが、地産地消の給食に取り組む日本全国の画期的な事例を取材したルポルタージュです。
第3弾は、食を通したユニークな幼児教育で国内外から注目されている東京都立川市のふじようちえんを取材し、全4回でまとめていきます。
      第1回      第3回      第4回

●給食には園で栽培された四季折々の野菜が登場

 「毎年、この時期の給食にはこんなメニューがというのがでてきます。そうして使えるのは菜っ葉だよなとか、白菜だなというのがある。それを全部とりこんでメニューを作っていく。それは農業担当の中村君、田中君が、もうすぐこれができますと副園長にいって、副園長が厨房とリンクして、指示をしてメニューをだしてもらう。急に多く野菜ができたときなどはメニューをチェンジすることもあります。
 野菜の栽培状況は3日前くらいに伝えます。多くできたときはご家族に、実は、給食内容が、こうなりましたとメニューをメールで連絡しています。うまくできるときはできるし、せっかく作ってもできないときはできないし。失敗も多い。予定していたけど、できないときもあるんですよ。
 保育園、幼稚園もメニューは一緒です」

 給食は「フェニックスフードサービス」への委託で園内にある調理室で行われている。
 普通であれば、委託の場合、メニューを地域の産物を活かしながら考案していくというのは対応が難しいと思われがちだ。ところが、「ふじようちえん」では、最初の段階から十分に話し合いコミュニケーションをとり柔軟に対応してもらうという画期的な取り組みがされている。

給食室

 「メニューは和食が多いです。スパゲティとか焼きそばの日もあるんですけど、結構、煮物とか、魚とか、おうちで食べないようなものがあります。給食の原価は300円。1食の価格は410円になっています。意外に素朴なものほど調味料も含めて原価は高いですよね」(加藤久美子副園長)

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 「幼いときって、わたしたちより味覚が何倍も鋭どい。それを味わい感じるには和食の微妙な味…そいうのが大切だと思いますし、日本人が本来もっている感性でもある。雨の降り方の表現にしても何十ともっている。アメリカだと英語でいえば3つか4つですね。

 それだけ繊細な心をもっていることを大切にしたい。小さい時に、洋食もいいんですけど、和の方が微妙な味わいや四季も文化も伝わる。それから素材の味。サツマイモをおやつに食べるとか、ジャガイモの茹でたばかりのを食べる。そのときに素の味がわかる。そういう原体験を大切にしたい。当然、給食は、みんなお代わりしますね」(加藤積一さん)

●給食か?お弁当か?は自由に選択ができる

 「ふじようちえん」での食事は、毎日、給食か、または弁当をもってくるかのどちらかを選んでもらえるようになっている。アプリで前月の15日の段階でお弁当を持ってくる日だけチェックしてもらうようになっている。1週間まえまでは変更が可能で、欠席の場合は前日でもキャンセルできるシステム。
 お弁当より給食を食べる子が多い。給食利用は9割だ。外国の子どもも50名いる。英語のメニューもだされている。給食の予定や園のスケジュールは携帯メールで親に配信される。
 また全員がお弁当の日というのが月に1回ある。園は、早朝7時から。預かり保育もあり夕方6時半まで運営されている。

給食/子どもたち

 「私が思うに、給食もいいんですけど、やっぱり親が作ったお弁当が素晴らしい。お父さんお母さん工夫してつくったお弁当、蓋をあけるといい匂いがするでしょ。あの匂いに子どもたちが親を感じるんですよ。人というのは離れていれば離れているほど愛おしく感じる。古いけど「会えない時間が愛育てるのさぁ~」です(笑)。匂いというのは、より深くつながる。キャラ弁もすごいですよ。それに、おいしいものばかり入れてくれるから子どもはより嬉しいですよね。だからお弁当の日でないときでも、保護者にお弁当作ってと頼んで作ってもらう子もいます。『今日お弁当なんだ!』と、あたりかまわず言うんですよ。うれしくてね。(加藤積一さん)

給食/子どもたち3

 「ふじようちえん」では、コロナ前までは、毎日、各クラス交替で「ファミリーランチ」をおこなってきた。100名ほどが入れるランチルームがある。そこでテーブルに給食を広げて食べる。おとうさん、おかあさん、おじいちゃん、おばあちゃん。だれでもウエルカム。みんな一緒に食べよう、というもの。

 このプランは年1回の給食参観日から加藤園長が思いついたものだ。親は給食を食べている子どもを観ているだけというのに疑問を感じ、どうせなら一緒に食べて味わってもらったほうが楽しいのではないかということから『ファミリーランチプログラム』と名付け、家族が来て一緒に食べることが始まった。参加の親は、給食の注文は事前にアプリで申し込むようになっている。親はちょっと量が多めに配慮されている。

 園全体で20クラスあるので、ひと月に1回「ファリーランチ」がある。時間は11時30分から13時くらいまでだ。参加率が高く、実家のおじいちゃん、おばあちゃんも来きたり、兄弟がくるところもある。これは親同士のコミュケーションの場にもなるという思わぬ広がりにもなった。

 「ランチルームには、長いテーブルがあり、それをくっつけて超長机にして使っている。このテーブルは20年前に給食棟として新しい建て物を作ったときに、テーブルをどうしたらいいかわからなかった。当時は折り畳みの長机しかなくて、これじゃないなと思っていた。そのときに見たのが『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001年)。魔法学校の長い机があって、これは作れるなぁ、と思って、早速、ホームセンターで材料を買って自作して、先生たちも色を塗ってみんなで作りました。結構、長持ちしています」

 しかし、ランチルームのファミリーランチは新型コロナの影響で、しばらくクローズすることになってしまった。そこで園舎の屋根の上の『屋根の上カレーパーティ』と称して、開催しました。「無印良品」でクラスの家族数分のレジャーシートを買い、消毒をする中、それを敷いて間隔をあけ、事前に座る席を決めておいて実施された。

●食の学びと体験は子どもたちの能力を伸ばすにも大きな力を発揮する

 給食のご飯には玄米も登場する。

 「友人が『寝かせ玄米』の店を蔵前に開いた。これ玄米と小豆と塩を入れて炊く。2、3日おくんです。するとねっとりして、とてもおいしいんです。ただこれは食品衛生法上もあって給食では子どもに出せない。いろいろ相談した。二割を白米、8割玄米。それを一晩漬けて柔らかくして炊けば子どもでも食べれるとわかりました。でやってみようと。試行錯誤ありまたけど、やってみて提供できると確信し、じゃ、これなら胚芽米とかいけちゃうんじゃないとだんだん広がって、五穀米、十穀米、古代米も給食で出すようになりました。

 多くの量を炊くから心配だけどやってみないとわからない。ファミリーランチで玄米カレーがでるんです。お母さんもカレーで玄米を初めて食する場合があるわけですよ。『玄米結構食べれるのね』という話しになる。すると冗談抜きで近くのお店の玄米が売れたりもするという声も聴いたりします。玄米食、体にいいと言われるけど、でも知らない人もいますよね。実際に知ってもらえるきっかきになってくれればいいですね。なかには給食メニューでレシピを教えてくださいといわれるときもあります」

給食/お片付け

 「食は、動物的にだれでも身体に直結している。それが楽しいと食物に興味がわき、理解につながり、身に付き、知識としてもなりたってくる。わかりやすいですよ。人を集めるのになにがいいのと言われたら、やはり難しいロジックよりも、食があったら、まずわかりやすい。直観的にみんな体が動く。子どもたちは食に関して経験値が少ない。だからこそ、こんなして食べられる‼という多くの体験と場を提供したい。例えば梅干し。われわれ大人は当たり前に食べるけど、彼らにとっては食べたことない子がいっぱいいる。そういう体験が大切だと思う」

●大切にしたいふれあいや農家からの美味しい食

 「ふじようちえん」の食のコンセプトは自然で無農薬。そんなことからより自然にということで始まったのが栃木県佐野市「ベジフジ株式会社」との連携があります。。

 「ファーム・トウ・テーブル(農場からテーブルへ)ではないですけど農場と直結したランチということでの試みで2020年の4月から始まった。ベジフジ株式会社は私の友人で栃木県佐野市の農業法人です。そこはいろいろ面白い試みをしている。相談してサラダゼリーというのを作ってもらった。というのは、当時、私がリクエストで社長にパックのゼリーで無添加のがないか?と探してもらった。ところがどこにもない。当然、日持ちしないとしょうがないから、どうしても添加物が入る。なんかいい手がないか。無添加のゼリーを食べたい。そこから始まって開発して、なんとか1年くらいかかったけどできた。甘さをだすのには玉ねぎのぎゅっと凝縮したエキス。それに、みかんとかリンゴとかグレープフルーツとか味が入っている。バットで納品してもらって取り分ける。カップを使わないゼリー。それでサラダゼリーという商品名にした。

 うちに佐野市から毎日配送するのは大変だから週1回でいいと。ただ、せっかく来るんだからほかの園関係の友達にもこれ使ったらいいよといった。これ1品使うだけで自園の給食は無添加の方向に向いて頑張っているって言えるよとね。そういうと幼稚園とか保育園とか何軒かはいってくれたらしいんだね。正直、まだよちよち歩き。実験ですね」

 「ふじようちえん」のメニューや献立表、園のスケジュールなどは、スーマートフォンで配信される。ただ現場では、ふれあいや体験など、子どもたちが五感で学べる場を作ることが、大切にされている。

アプリスケジュール

 「農家レストランに行くと素朴な感じがありますね。そこにいるおばちゃんとかの空気を感じる。あれすごく大切だと思っているんですよ。幼稚園の給食も子どもたちのことを思ってくださる方につくっていただく。やはり心というか愛情というか、農家直結の給食も農家のおばちゃんたちの気持ちが伝わっていけばいいなと、すごく大切なことだと思います。
 作るところとか、いろいろなメニューを考えるところとか、その子どもの顔を思い浮かべてこれいんじゃないとか、今、これ採れているよと言いながら、そういう作るところはアナログが大切と思いますね」

 園内をぐるりとめぐると、柿や唐辛子が吊るしてあったり、干したともろこしが飾ってあったりする。なんと、ゴマも収穫したものも乾燥して胡麻の実の様子まで観察できるようにもなっている。

干し柿

ゴマ4

 「今は大根を吊るしています。これ日本の文化ですよね。あるとき通ったおじいちゃん、おばあちゃんが、『むかしこんな風景があったね』と話している。あっそうか、やっぱりこのへんは、農村地帯だったんだ。この地域は米できない畑地域ですから、大根を干しの風景があったよなと思いながら子どもたちが育つ。この地域を少しでも伝え、歴史やふるさと感を少しでも伝えられたらと思っているんです」

美人大根!!

だいこん堀り

*関連資料
「ふじようちえん」 https://fujikids.jp/
ふじようちえんのひみつ』加藤積一 著(小学館)
「日本モンテッソーリ教育綜合研究所」https://sainou.or.jp/montessori/about-montessori/about.php 
「本との偶然の出会いをWEB上でも P+D MAGAZINE」出口治明の「死ぬまで勉強」(Web記事)https://pdmagazine.jp/trend/shinumadebenkyou-014/
出口版 学問のすすめ ―「考える変人」が日本を救う!』出口治明 著(小学館)

金丸 弘美   総務省地域力創造アドバイザー/内閣官房地域活性化応援隊地域活性化伝道師/食環境ジャーナリストとして、自治体の定住、新規起業支援、就農支援、観光支援、プロモーション事業などを手掛ける。著書に『ゆらしぃ島のスローライフ』(学研)、『田舎力 ヒト・物・カネが集まる5つの法則』(NHK生活人新書)、『里山産業論 「食の戦略」が六次産業を超える』(角川新書)、『田舎の力が 未来をつくる!:ヒト・カネ・コトが持続するローカルからの変革』(合同出版)など多数。
 最新刊に『食にまつわる55の不都合な真実 』(ディスカヴァー携書)、『地域の食をブランドにする!食のテキストを作ろう〈岩波ブックレット〉』(岩波書店)がある。
*ホームページ http://www.banraisya.co.jp/kanamaru/home/index.php




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