(甘味さん譚)暗い家【禍話リライト】
廃墟に泊まり歩くことを趣味にしている、甘味さんの話だ。
ある時甘味さんは、廃墟巡りの知り合いから、住宅地にある「暗い家」と呼ばれる廃墟の話を聞いた。
なんでもそこに行くと、ずいぶん嫌な気持ちになるそうで、その知り合いにその家のことを教えた人からも、行くことは薦められないと言われたそうだ。
「だけどさ、そう言われるとかえって行きたくならない?」
そう言われて、その廃墟行きに誘われたのだが、甘味さんは丁重にお断りしたのだという。
甘味さんはそもそも街中があまり好きではない。
街中はお巡りさんもすぐにくるし、何よりも風情がないからだ。
しかしその知り合いは、結局数人の仲間を集めて、そこに行ったそうだ。
ただ、あまりにその家を知る人たちが「薦められない」「良くない」と言うので、昼に行くことにしたそうだ。
「昼間でもやな感じがしたらやめよう」
そう取り決めて、家に向かった。
行ってみると、その家は拍子抜けするほど普通の外観をしていた。
玄関の鍵は開いており、簡単に侵入することもできる。
屋内にはカーテンがあるにはあるものの、それ以外は家具も何もない。
「へえ」
知り合いたちは一階も二階も回ってみたが、何もない。
「そんなに悪い感じじゃないよな」
そう言いながら、二階から一階に下りてきた時だった。
違和感を覚えた。
一階の雰囲気が暗いのだ。
「さっきより暗くない?」
下りてみると、カーテンが全部閉まっている。
その廃墟の周りは静かで、音もよく聞こえてくる。
だから、もし自分たち以外の人間が家に来たらわかると、知り合いは言う。
しかし、彼らの足音や話し声以外には、歩く音も、玄関の開閉音も、カーテンを閉める音もしなかった、というのだ。
しかし、カーテンは全て、しっかりとしまっている。
そのせいで、一階の雰囲気が暗くなっていたのだ。
「……あれ?」
「これは、だめじゃない?」
知り合いたちは、パニック状態で走って逃げ出したそうだ。
どれくらいパニック状態だったかというと、玄関でわざわざ脱いでいた靴を適当に履いて逃げたので、全員が左右バラバラな靴を履いていたのだそうだ。
「住宅街の廃墟に行くからそんな目に遭うんですよ」
甘味さんは得意げにそう言っていたが、私は「それはちょっと違うんじゃないかな……」と心の中で呟いた。
——————————————————-
この記事は、「猟奇ユニットFEAR飯による禍々しい話を語るツイキャス」、「禍話X 第16夜」の怪談をリライトしたものです。原作は以下のリンク先をご参照ください。
禍話X 第16夜
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/665805270
(40:14頃〜)
※本記事に関して、本リライトの著者は一切の二次創作著作者としての著作権を放棄します。従いましていかなる形態での三次利用の際も、当リライトの著者への連絡や記事へのリンクなどは必要ありません。この記事中の怪談の著作権の一切はツイキャス「禍話」ならびに語り手の「かぁなっき」様に帰属しておりますので、使用にあたっては必ず「禍話簡易まとめwiki」等でルールをご確認ください。