騒ぎの家【禍話リライト】

この話は、家に入ったわけではないので、家の話とは言えないかもしれない。
しかし、間違いなく「やばい家」に関わる話ではある。


高校時代のこと。
あるとき、Iくんは知り合いに肝試しに誘われた。
Iくんは当時、高校生と大学生が混ざっているグループに入って遊んでいたのだが、そこに属している大学一年生の先輩に声をかけられたのだ。

「女の子連れて怖いところ行こうよ。まあ、まずは下見って感じだけど」
「ああ、いいですねえ。じゃあ、トンネルとか墓地とかですかね?」
「いや、事故物件」
「は?」

馬鹿な人だなあ、とIくんは呆れ果てた。

「先輩ねえ、大学生なんだから、捕まった時ごめんなさいじゃ済まないですよ。不法侵入なんですよ?」
「そうそう、高校生のぼくらにはお目こぼしがあっても、先輩はさすがに冗談では許されない歳ですよね?」

Iくんと、一緒に誘われた友人が声を合わせてそう諭すも、先輩は首を捻るばかりで譲らない。

「そうかなあ……」
「そうですよ」
「うーん、せっかくピックアップしたんだけどな」
「何ですか?ピックアップって。どんな家なんですか?」
「それがさ、ずっと一人暮らししていた人が自殺した家なんだ」
「やばいですよ、それ!マジじゃないですか!」
「そうですよ、古戦場とかならまだしも……ひょっとして最近の話ですか?」
「去年」
「うわ、近いなぁ……」
「そこ、どうなってるんですか?」
「まあ、当然そこは空き家で、売れるわけもなくそのままの状態で放置されてるのよ。その家に行こうよ」
「行っちゃだめですよ!法律上ダメなんですから」
「それで、幽霊が出るってことなんですか?」

一応Iくんが先輩に聞いてみたところ、待ってましたとばかりに先輩はその家の詳細を語り始めた。

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その家の人の自殺には、前触れがなかったんだ。
ひとり身だったけど、仕事はうまくいっていたらしい。
人付き合いもよく、勤め先の人たちも兆候はなかったって首を捻っていたんだと。
ネット上の知り合いも青天の霹靂でね。
遺書もなかったんだけどさ……前夜に変なことがあったっていうんだ。

近所の人がその人の家の前を通りかかった時に、宴会でもしているのか、えらく盛り上がってるようすが見えたって。

居間のカーテンを開け放して、窓は開いていないけど、明かりが外に漏れていたらしくてね。
夜なのになんでカーテン開けっ放しなのかなと思って見たら、大勢の人が集まって談笑している様子が見えたっていうのよ。
珍しいな、会社の人でも来たのかな……とか思いながら見るともなしに見ていたんだけど、よく見るとなんか変なんだよ。
良く似た顔の老若男女が、楽しそうに談笑してるっていうんだわ。
その人は、親戚が来てパーティーでもしてるのかな、と無理やり納得して帰ったっていうんだけど……。

その次の日の朝ね、カーテン開けっ放しの居間でその家の人が首をつっていたんだってさ。

カーテンを開け放していたから、わかったらしい。
第一発見者は前日夜にパーティーを目撃した人でね。
昨日のこともあるから、その家の居間の方を見たら、見えちゃったんだって。
そこでその人、はたと気づいたっていうんだわ。
そこらへんの家は全部建売で、おんなじ構造をしてるんだけど、特に防音設備とかはないらしいんだよ。
だから、パーティーしてたら音が漏れるはずなんだけどね。

前日の夜は、全く音が漏れていなかったなって、気づいたんだってさ。

そんなはず、ないのにね。
後で思い返すと、不自然なくらい無音だったんだって。

それだけじゃあないんだ。
亡くなってから分かったことなんだけど、その家の人には、そもそもほとんど親戚なんていないらしい。
ゼロってわけじゃないんだけど、老人が何人かいるだけで、若い子はいなかったんだと。
でも、目撃した人は小さい子供の影が見えたって言ってたわけよ。

隣近所の人からすれば、気ぃ悪い話だよな。
外向きに首をつっていたのもあって、その家のことにはもう誰も触れたくない……みたいな感じになってね。

でね。
今やそこの家は家具なんかは全部運び出されていて、カーテンだけがついているっていう状況らしいんだけど、時々問題の居間のカーテンが開いていることがあるっていうんだわ。
それだけじゃなくて、その家には誰も入っていないはずなのに、開いたカーテンの奥に、かなりの人数がいるときがあるんだと。
暗いからはっきりとはわからないんだけど、人がたくさんいることは間違いないって感じらしいのよ。
そういうのを見かけちゃった人は、もちろんすぐに目を逸らすわけ。
“うわ、気持ち悪い!“って。

だけどさ、怖いだけじゃあないんだよ。
それ見ちゃった人は、必ず体の不調に見舞われるらしいんだ。
頭痛とか、足がつるとかそんなもんらしいんだけど……


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「待ってください」

そこまで聞いたところで、思わずIくんは話に割り込んでしまう。

「そんなところに行ってどうするんですか?!だめじゃないですか!!」
「そうですよ、ほんとでも嘘でも嫌ですよ?!」
「人が死んでるんわけですし……」

Iくんと友人がそう言い募ると、先輩はふふんと鼻で笑って、「まだ続きがあるんだ」と言う。

「……もういいですよ」

Iくんが力無く異を唱えるのも気にすることなく先輩は話を続ける。

「まあ聞けよ。俺の彼女の兄貴がそこに冗談で行ったらしくて」
「彼女さんなんていたんですか?!」
「それくらいいるよ!で、その兄貴が肝試しとか好きなんだと」
「……似たもの同士が集まるんですね……まあ、いいですけど」
「でね、兄貴は昼間に行ったんだけど、別に何もなかったんだって。カーテンも閉じてて。で、『何もなかったね〜』なんて言いながら、カラオケやらゲーセンに寄って、夜に家に帰ろうと思ったら、その兄貴の一人暮らしの部屋、マンションの三階だっていうんだけどさ。電気がついてんのよ」
「はあ、電気が」
「“あれ、おかしいな?明かりなんかつけて出てきていないんだけどな“……そんなこと思いながら良く見ようと思ったらね、ガラガラっと窓が開いたらしいんだよ。で、部屋の中がちらっと見えたんだけど、大勢の人が集まって、家のなかでパーティーしてるみたいでね。タバコ吸いにベランダに出た、みたいな男女が、兄貴にむかって手を振ってきたって言うんだよ。で、兄貴はうわってなって実家に逃げ帰ったんだってさ。そんなことがあったらしいんだよね。で、それ聞いて俺興奮しちゃってさあ。そこ、結構怖いと思うんだよね」
「……先輩、脳、死んでるんですか?」
「なあなあ、怖くね?」
「そりゃ怖いですけど……そこに女の子連れてくってのは、どういうことなんですか?」
「中までは入れないけどさ、そういうとこあるんだって先に説明しといたら、その家に近づいただけで俺たち勇気あるって思われるじゃん?」
「……勇気って他にも証明のしかたありますよ」
「そうかなあ?」
「何が不満なんすか」
「ま、女の子はとりあえずいいよ。とりあえず見に行こうよ。俺も行き方とか調べてるからさ」
「これから、ですか?!」

こうなっては先輩はもう一切引かない。
仕方ないので、Iくんと友人は、先輩についていくことにしたそうだ。
これが夜なら意地でも断っていただろうが、まだ昼間だったので了承したのだという。

先輩の運転する車で問題の家に着いてみると、そこは住宅街のど真ん中の、何の変哲もない場所だった。
バックストーリーを知っていればまだしも、何も知らなければ見過ごしてしまうだろう。
先輩はそれでも妙にワクワクしているような様子で、「ここなんだけど近くに行ってみようか」と言って門に手をかけた。
門は、抵抗もなくスーッと開く。

「門は開くんだよ」

そう言って先輩は嬉しそうにIくんたちの方を振り返る。

「いいですよ。行きませんよ」

開いた門から、チラッと部屋の窓が見えている。
先輩はその大きな窓の部屋を指さして、嬉しそうに言う。

「ほら、あそこ」

その大きな窓は、カーテンが閉まっている。
そして。

「……下に花束があるじゃないですか」

比較的最近立向けられたと思しき花束が、窓の下に置かれている。

「先輩、これ、流石にダメでしょう」
「これダメですよ」

二人はそう言って諌めるが、やはり先輩は納得がいかないように首を捻るばかりだった。

「ダメかなあ?」
「何で不満げなんですか。そりゃダメでしょう」
「ほか開いてないかな?」
「開いてても入りませんよ。ダメですよ」

そう言ってIくんたち二人がガンとして動かない姿勢を示すと、流石の先輩も無理に敷地に入ることを強要することはなかった。
ただ、先輩はあきらめきれないようで、「外をぐるりと回ってくる」と言って、敷地の中に入っていった。
Iくんたちはもちろんついていかず、家から少し離れたところで先輩が戻ってくるのを待った。

「それにしてもマジで馬鹿だな、あの人」
「ああいう人が死ぬんだよ」
「ホラー映画なら最初の犠牲者だな」

そんなことを友人と話しているうちに、先輩が戻ってきた。

「何もなかったなあ」
「何もなくてよかったじゃないですか。帰りましょう」

そう促して車に戻る。

ところが、である。

車に乗り込んだ瞬間、先輩が急に大きな声を出した。

「あ、やべ!携帯落とした!!」
「え?どこに落としたんですか?」
「多分あの家の裏だわ」
「はぁ??なんでそんなとこで携帯出したんですか?」
「メールが来たから確認したんだよ。裏は藪になっていたからなあ。なかなか見つからないかもな」
「そんなとこで携帯出さないでしょ……」

一人で探すのは大変だからどうしても手伝って欲しいと先輩が懇願するので、Iくんも友人も心底呆れ果てながらも、仕方なく一緒に探すことに同意する。

門から入るときに、表札が残っていることにIくんは気づいた。
表札には、「南田」と書かれていたそうだ。

先輩はキョロキョロしつつ家の裏に向かう。
Iくんたちもその後に着いていく。

「どこらへんですか?」
「この辺で鳴ったんだよ」
「そうですか。ドキドキできてよかったですね」
「あ、あったあった!」

先輩はそう言って携帯電話を拾い上げる。

「帰りましょう帰りましょう」

Iくんたちは先輩を促し、そそくさと元来た道を戻り始めた。

その、帰り際のことだった。

何気なくIくんが居間のカーテンの方に目を向けると、先ほどまでびっちりしまっていたはずのカーテンの裾が、若干めくれていたのだという。

Iくんは、あれ、と思った。
先ほどまでは間違いなくしっかりとしまっていたからだ。

……室内のどこかが開いていて、風が入ってきてめくれたのかな?

奇妙には思ったものの、先輩に言ったら騒ぐからやめよう、と判断したIくんは、その場では何も言わなかったそうだ。


帰り道の車中。
先輩がIくんたちに尋ねる。

「どうする?女の子連れてく?」
「行きませんよ!!」

Iくんと友人が即答する。

「だいたい絵的に地味ですしね」
「そうそう、花束はあるけどただの新しめの空き家ですよ」

二人がそう言い募ると、先輩はむすっとなって、黙ってしまったそうだ。

「もっと安全な場所行きましょうよ。トンネルとか」

先輩のご機嫌を取るためにIくんはそう言ってみたりもしたが、先輩は何も答えなかった。

そのまま、無言の状況がしばらく続いていたのだが、そろそろ家の近所だな……という場所に近づいたそのタイミングで、先輩がボソッと一言漏らした。

「さっき、カーテンめくれてたな」
「え?!」

思わず驚いて声が出てしまう。

「気づいてたんすか?!」
「うん。カーテンめくれてたもんなぁ」

妙にしみじみと、先輩が言う。
Iくんも、「ちょっとめくれてましたね」と答える。
もっと驚いたのは友人である。

「ちょい待ち!めくれてたって、何?」
「ちゃんと閉まってたはずなんだけど、ちょっとめくれてたよなぁ」

先輩は友人の戸惑いを一顧だにせず、ぼんやりとそう続ける。
と、そのタイミングで赤信号に引っかかり、車が停まった。

「なあ、これ見てくれよ」

先輩が後部座席にいるIくんと友人の方を振り返り、携帯を差し出してきた。
画面には、カーテンがめくれたところを接写した画像が写っている。

え???

Iくんはすっかり混乱してしまった。
前述した通り、Iくんは家を出るときにはカーテンのことを先輩に言っていない。
先輩も、カーテンの方を気にしている様子はなかった。
ましてや携帯で写真を撮るそぶりも見られなかったのだ。

では、この写真は。
いつ撮影されたのだろうか?

「なあ、めくれてるよなぁ?」

先輩はのんびりした無感情な口調で繰り返す。
Iくんとしては、もうこれ以上この写真を見たくなかったので、「……へえ、怖いですねえ」と答えて、「もうここでいいんで」と言って車を降ろしてもらい、長い道のりを歩いて帰ったそうだ。


3日後。
いつもの溜まり場に顔を出すと、例の肝試し以来久々に顔を合わせる友人がいた。

「よう」
「おう」
「先輩と連絡とってる?」
「いや、ちょっと忙しくて。あれ下見だったろ?結局本番の肝試しもどうなるかわからんし、あの日、最後は先輩もテンション低かったし……」
「実はな」

Iくんは例の写真についての話をそこで初めて友人に説明した。

「マジかよ、そりゃやばいねえ……」

そんな話をしているところに、女友達がひょっこりやってきた。
もちろん彼女は、先輩と共に行った肝試しの下見の経緯など、何も知らない。
Iくんたちも話を中断して、彼女に挨拶する。

「おはよう〜」
「おう」
「久しぶり」

いつもは元気な女の子なのだが、その日の彼女は一瞥してわかるくらいはっきりと沈んだ表情をしていた。

「あれ、どうしたの?」

すると彼女は、ふう、とため息をついてこんなことを言った。

「実はさ、Jさんが死んじゃう夢見てさぁ」

例の肝試しの先輩の名前だ。

Iくんと友人は思わず背筋がゾッとした。

「……え、どんな夢?」

まさかと思いつつ尋ねると、彼女は昨日見たというその夢の内容を語り始めた。


——————————-

変な夢なんだけど、笑わないで聞いてね?
ハッて夢のなかで気づいたら、お父さんが車を運転してて、お母さんが助手席にいて、自分が後部座席にいたんだよね。
あれ、と思って自分の格好を見てみたら、喪服を着てて。
なんだろうと思ってたらお父さんが「着いたぞ」って言うから、外を見たんだけど、知らない家で。
お葬式みたいで、葬儀社の人っぽい人が受付なんかしたりしてて、私、誰の葬式なんだろうって思いながら家に上がったの。
そうしたら、「このたびはありがとうございます」とか言って全然知らないおばさんが出てきて、頭を下げてくるわけ。

「Jも喜びます」

とか言ってて、それで、あ、先輩の名前だって気づいたんだけど、私、先輩のご両親の顔知っててさ。
先輩のお母さん、こんな人だったかな?って思いながら顔を見たんだけど、お母さんらしき人もお父さんらしき人も、全然知らない顔で。
でも、夢っておかしいよね。
そんなはずないのに、まあ、そういうこともあるか……って受け入れちゃってて。

「このたびはご愁傷様です」ってうちの親が言うと、「本当に急なことでねぇ」って涙声でその先輩のお母さんらしき人が答えるわけ。
「若くても心臓が」とかなんとか詳しく死因を話してくるから、夢の中の私も、「ああ、先輩は本当に亡くなったんだ」って受け入れる気持ちになってね。
先輩のお母さんも「顔見て行ってあげて」って言うから、まずは先輩の顔を見ようって思ったわけ。
でもさ、やっぱおかしいんだよね。
普通お通夜だのお葬式だのだったら、座布団があって祭壇があって棺があって……みたいな感じじゃない?
それがね、居間のほうに連れてかれるのよ。
流石に夢のなかでも、居間のほうに行くなぁ、おかしいなぁって思ってて。
どう見ても先輩の家じゃないし、居間に行っても祭壇はないし、座布団もないんだよね。
でも、居間の一角が人だかりになってて。
先輩のお母さんが私に、「すいませんね、みてあげてください」って言ったら、まるでそれが合図みたいにパーって人混みが分かれてーさ。

真ん中に先輩があおむけになってて、何かをつかむように手を伸ばして死んでたんだ。

あ、死んだときそのままの姿勢なんだって、なぜかそう思って。

そんなはずがないじゃない?
だって、お葬式なんだから。
でも、私服を着た先輩が恐ろしいものを見たかのような表情で目を見開いて硬直してるのよ。
びっくりして、思わず後ずさったら、先輩のお父さん面している奴が私の首を掴んで、「もっと見てあげて」って顔をぐっと死体の方に……硬直した先輩の顔にグーっと近づけてくるから、そこで「うわあ!」って叫んで目を覚ましたんだけど、私ボロボロ泣いてるの。
あー、先輩が死んじゃったって思って。
怖いというよりは、悲しい気持ちでね。
30分くらいそうしてたかな?
ああ、でも夢だ夢だって思って、ようやく泣き止んだんだけど、まだなんか気分が落ち込んでて。
変な話だよね、ごめんね。
よく考えれば、家に入るときに見えた表札の名前からして違ったんだよ。
“南田“って書いてあって……。

———————————

「えええ?!!南田?!」

思わずIくんと友人が大きな声を出してしまう。
肝試しに向かったその家は、“南田“家だったからだ。

「電話しろ電話!」

Iくんが先輩に電話をしてみるも、先輩は出ない。

「私もかけてみたけど出なくて。バイトで昼夜逆転してるのかな?」

その日、Iくんたちは何度も先輩に電話をかけてみたのだが、先輩が電話に出ることはなかったそうだ。

というのも。
先輩はその時すでに、ご自宅で亡くなっていたのだ。
後に判明したところによると、その肝試しの下見に行った当日、Iくんたちを降ろした後、自宅で亡くなっていたのだ。
自殺ではない。
ある種のショック死のようなかたちで、心臓麻痺で亡くなっていたというのだ。
伝え聞くところによると、先輩のご遺体の近くには携帯が転がっていて、そこにはカーテンがめくれているだけのアップの画像が映されていたという。
その画像には、どれだけ目を凝らしてもカーテンの隙間の暗闇以外何も写っていないので、最後にこれを見てどんなショックを受けていたんだろう?と皆首を捻っていたそうだ。
結局先輩の死は、不規則な生活をしていたこともあり、事件性は認められず、突然死として処理されたのだという。



「……とまあ、そういうことがあるから出来立てほやほやの廃墟には行かない方がいいんですよ。年数がたって管理する人がいなくなってから行かないと、よくないと思うんです」

この話を私に語ってくれたのは、甘味さんという女性だった。
彼女は廃墟に寝泊まりするという趣味の持ち主なのだが、年数の経った廃墟にしか行かないというポリシーをもっていた。
そのことに興味を持った私が、なんで新しい廃墟に行かないんですか?と尋ねたときに甘味さんに教えてもらったのがこの話である。

「ね?だから廃墟は朽ち果ててから行った方がいいでしょう?」

なぜか得意げに、甘味さんはこの話をそんな言葉で結んだのだった。

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この記事は、「猟奇ユニットFEAR飯による禍々しい話を語るツイキャス」、「禍話X 第10夜」の怪談をリライトしたものです。原作は以下のリンク先をご参照ください。

禍話X 第10夜
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/658377992
(56:20頃〜)

※本記事に関して、本リライトの著者は一切の二次創作著作者としての著作権を放棄します。従いましていかなる形態での三次利用の際も、当リライトの著者への連絡や記事へのリンクなどは必要ありません。この記事中の怪談の著作権の一切はツイキャス「禍話」ならびに語り手の「かぁなっき」様に帰属しておりますので、使用にあたっては必ず「禍話簡易まとめwiki」等でルールをご確認ください。

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