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自民・小野寺氏の「国民の6割は税金を収めていない人」は本当か検証した


結論

 結論から言うと小野寺氏の発言は事実です。所得税に関わる「103万円の壁」の議題での発言ですので所得税の前提で進めますが、子供や高齢者も含めた全国民のうち所得税を納めている人の割合は約4割です。今からその根拠を実際にお見せします。折角なので、年収〇〇万円以上の人口の総人口に占める割合はいくらかも一緒に示します。

準備するもの

 所得税にもいろいろあり、会社で働いて得られる給料を給与所得といいます。ほかに自営業や個人事業主の利益である事業所得、不動産の貸付による不動産所得などがあります。このうち給与所得のみ源泉徴収申告納税の2通りの納税方法があり、ほかは申告納税のみです。
 源泉徴収は「民間給与実態調査の分布」、申告納税は「申告所得税標本調査結果」というデータから参照できます。共に国税庁です。後者のみ2023年分が無かったので、年度を統一して共に2022年分のものを参照しました。

データ読み取り

源泉徴収については、2022年分「民間給与実態調査の分布」によると、源泉徴収は4360万人にあった記述のほか、給与階級別分布を見られます。

申告納税については、2022年分「申告所得税標本調査結果」の(第8表)所得階級別申告納税者数で同様の階級別分布が所得種ごとに見られます。

今回の趣旨は所得税の納税者や特定年収以上の人口割合の調査なので男女や所得種など細かな区分は無視して、また源泉徴収と申告納税の合算値を使います。階級の分け方がそれぞれ異なるため、両方に存在する階級の端を抽出・統合して累積度数分布表を作ります。

さらに総務省統計局「人口推計」で2022年10月1日の日本の総人口12494.7万人であり、各累積度数をこの人口で割って総人口比累積割合(%)を出します。また総人口に労働が禁止されている子供を含むことから、労働可能な分母から見たいという需要に応えるため15歳未満の1450.3万人を除いた人口で同様に割って年少人口を除く累積割合(%)を出します。

結果

以上を実際に行った結果の累積度数分布表がこちらです。

(表)階級別所得人口・割合 (2022年)

所得税納税者の総人口費累積割合が40.12%、つまり約40%であることから小野寺氏の発言は事実と説明できます。

年少人口を除いても大差なく、所得税納税者は約45%。約半数は所得無し。

ほか、立憲民主党の米山隆一氏が11月13日のABEMA Primeで「年収500万円や600万円の人に減税するのはやりすぎ」といった趣旨の発言をしたことが話題ですが、年収500万円以上の収入があるのは総人口の約15%、正規分布で言うm+1σの割合。もはや高収入の入口に立ったとすら言える収入です。こう見ると米山氏の発言にも一理あるかもしれません。

先の表をグラフに描出しました。

(グラフ)階級別所得人口・割合 (2022年)

左軸が割合(%)、右軸が人数(万人)です。総人口比で所得税の納税者は約4割。300万~500万~1000万にかけて急な下り坂が描かれます。

(参考)給与所得の分布

ちなみに「民間給与実態調査の分布」の源泉徴収の給与所得のデータをグラフ化すると以下のようになります。総人口比累積割合は源泉徴収の給与所得のみカウントとし、申告納税での納税の人数は分子に含みません。

(グラフ)給与所得税源泉徴収者 階級別所得人口・割合 (2022年)

最頻値は300万~400万の階級に位置します。年収100万円以下の方が年収900万円以上より人数が多く、年収200万円以下が源泉徴収による給与所得者の約2割を占めます。

総括

自民党・小野寺五典氏の「国民の6割は税金を納めていない人」というのは事実です。また15歳以上の国民を母数にしても約55%は非納税者です。300万円以上の所得がある国民は約30%、また500万円以上は約15%、さらに1000万円以上は約3%に限られます。

小野寺氏の発言には様々な意見が飛び交っていますが、少なくともこの事実、非納税者が無視できない存在、むしろ多数派という現実を周知させただけでも功績であり意義があったと言うべきでないかと思います。

リンク

参照したデータのリンクです。

・国税庁 2022年分「民間給与実態調査の分布」 
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2022/pdf/000.pdf#page=27

・国税庁 2022年分「申告所得税標本調査結果」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/shinkokuhyohon2022/pdf/gaiyo.pdf#page=7

・総務省統計局 2022年10月1日現在「人口推計」
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2022np/index.html

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