「禁止・命令」されると余計にやりたくなっちゃうのは、なぜ?
子どものころ、親や先生から「勉強しなさい!」といわれて、「わかってるよ、うっせーな」、「いまからやろうと思ってたのに…言われたらやりたくない」と、やる気を失くしてしまった経験はありませんか?
親や先生は、子どもの将来のことを思って言っているのですが、それが「命令口調」や「禁止事項」だと、言われた子どものほうは「自分の価値を否定されたよう」に感じてしまいます。
このような心理的作用のことを、アメリカの心理学者ジャック・ブレームは「心理的リアクタンス」と名付けました。
心理的リアクタンスは、個人の性格が、あまのじゃくでひねくれた子とか意地っ張りということではなく、「自分のことは自分で判断したい」という人間の本能として誰にでも備わっているものです。
これを表す面白い実験があります。
アメリカの心理学者ダニエル・ウェグナーが、「シロクマ実験」というのを行いました。
実験内容は、 被験者をA・B・Cの3つのグループにわけて、すべてのグループ全員にシロクマの1日を追ったドキュメント番組を見せます。
映像を見終わったあと、
• Aグループには、シロクマのことを覚えておくように言う。
• Bグループには、シロクマのことを考えても考えなくてもいいと言う。
• Cグループには、シロクマのことだけは絶対に考えないでくださいと言う。
数か月後、被験者に映像について覚えているかを尋ねると、「シロクマのことを覚えておくように」と言われたAグループ、「考えても考えなくてもよい」と言われたBグループは、シロクマについてほとんど記憶しておらず、「絶対に考えないで下さい」と言われたCグループは、シロクマについて最もよく覚えていたというのです。
これは、人間は自分の思考をコントロールしたいと思う時、「実行過程」と「監視過程」の2つが働くと考えらているためです。
「 実行過程」(operating process)とは、実際に思考を行うこと。
「監視過程」(monitoring process)とは、自分の思考をコントロールしたいと思う時に、自分の行動が内容に反してないか監視すること。
上記のシロクマ実験では、「実行過程」によって、シロクマの映像を忘れなきゃ!と意識すること。「監視過程」によって、シロクマの映像を思い出してはいけないとチェックすることに当たります。
ところが、監視過程で「自分がシロクマのことを考えているか」を監視するためには、実行過程においてシロクマについて考える作業をする必要があるのです。
そして、シロクマについて考えるたびに、監視過程はシロクマについて思い出すことになり、考えないようにすればするほど、他のA、Bグループに比べても高い頻度でシロクマのこと思い出すことになったCグループは、シロクマのことが忘れることが難しくなったことが証明されました。
心理的リアクタンスの例
命令をされると反発したくなる心理的リアクタンスは、私たちの日常生活でもたくさん起こっていますよね。
昔ばなしの『つるの恩返し』でも、「部屋をのぞかないでください」と言われているのに、おじぃはのぞいちまいますし。
コンビニのトイレの張り紙は、「トイレを汚さないでください」という命令・警告だとかえって汚されることから、「いつもキレイに利用していただきありがとうございます」という文言に変ったことは有名です。
心理的リアクタンスは恋愛感情にも働きます。
恋愛には、障害があることが、かえって自分の考えにより固執し、恋愛感情が強くなることがわかっています。
「恋愛禁止!」と言われているアイドルは、恋愛したくてたまらんでしょうし、両親や友人から「あの男はダメ」とか「好きになっちゃダメよ!」と言われれば言われるほど、ロミオとジュリエットのように余計に燃え上がってしまうのです。
「私のことは、忘れて・・・」そういわれて、別れた恋人がいたら、たぶん一生忘れられない呪いをかけられたと思った方がいいかもしれません(笑)
だから、この記事を読み終わったら、
みなさん、私のことは絶対に忘れてくださいね‼(笑)
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