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9条以外に改憲すべき理由シリーズ:同性婚篇

導入:改憲の議論を広げる

憲法改正の議論といえば、多くの場合は第9条が注目される。しかし、憲法が社会の基盤を形作るものである以上、改正が検討されるべき条文は他にも存在するのではないだろうか。特に、現行憲法が制定された当時には想定されなかった現代の課題については、その文言や意図が現代の価値観と噛み合わない部分もある。

その一例が、第24条をめぐる同性婚の議論である。現行憲法の文言は、その元となったアメリカのGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)草案の意図を削ぎ落とす形で採用されたため、今日の社会で新たな解釈が求められる事態を生んでいる。本稿では、アメリカ草案の背景を踏まえつつ、同性婚の合法化を憲法改正という観点から考察する。

アメリカ草案の背景と日本憲法への影響

日本国憲法第24条第1項は、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立する」と規定されている。この文言は、アメリカのGHQが作成した英文草案に基づいているが、現行の条文には重要な要素が欠落している。

GHQの英文草案では次のように記されていた。

> Marriage shall rest upon the indisputable legal and social equality of both sexes, founded upon mutual consent instead of parental coercion, and maintained through cooperation instead of male domination.
(婚姻は、両性の法的・社会的平等にもとづいてなされるものとする。そして親による強制ではなく2人の合意に、男性による女性支配ではなく2人の協力に基礎を置く。)

http://emajapan.org/promssm/ssmqaa/qa7

この草案は、戦前の日本において一般的であった「親による強制的な結婚」や「男性が女性を支配する家父長制的な家族観」を否定し、個人の自由と男女平等を家族の基盤として明確にする意図を持っていた。しかし、最終的に採用された日本語憲法では、文言が簡潔化される過程でこれらの具体的な理念が削ぎ落とされ、曖昧さが残る結果となった。

そのため、現行憲法は「両性の合意」のみを明記しており、同性婚を認めるとも禁止するとも解釈できる余地が生まれている。元々の草案が目指した理念からすると、現行憲法はその意図を十分に反映しているとは言い難い。

憲法第24条と第14条の曖昧な関係

現行憲法において、同性婚を支持する主張は主に次の条文に基づいている。

1. 第14条第1項:「法の下の平等」

性別による差別を禁止する条文として、同性カップルに婚姻を認めない現行制度がこの条項に違反するという解釈がある。

2. 第13条:「幸福追求権」

個人の尊厳と幸福追求権を保障する条文として、同性婚を認める必要性が議論される。

3. 第24条第2項:「個人の尊厳と両性の本質的平等」

家族関係における平等を求める条項として、同性婚の根拠に挙げられる。

* * *

しかし、これらの条文を根拠に同性婚を合法化しようとする解釈には、やはり無理がある。特に、第24条が両性(男女)の合意を前提としている以上、同性婚を実現するには現行憲法を大幅に拡張する解釈が必要となり、法的安定性を損なうリスクがある。

同性婚を実現するには憲法改正が必要なのでは?

同性婚を認めるためには、憲法第24条の文言を改正し、「婚姻は、性別にかかわらず二人の合意に基づいて成立する」といった明確な規定を加えることが、最も合理的である。

他国の事例を見ても、同性婚を合法化した国々の多くは憲法や法律を改正する形で対応している。たとえば、アメリカでは2015年に連邦最高裁判所が同性婚を合憲と判断したが、憲法の平等保護条項をその根拠として引用している。また、ドイツでは2017年に法律改正を行い、同性婚を合法化した。日本でも、同性婚を主張するならば、憲法改正というプロセスに合意することが必要不可欠である。

結論:議論の土台を整える憲法改正

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