コメ倉庫のこと
コメ倉庫の話をしましょう。
リモートワーク中心に日夜頑張ってはいるが、本社がないのも限界だなぁと常々思いはじめていた。かと言って、マンションの一室を事務所にするのも抵抗があり、「でっかい空間が欲しい」と、かなり大雑把な希望を町に折折話していた。なぜでかい空間なのか。でかいと色々なことができるだろうと言う、ただただ楽観的な発想なだけで豪語していた。
睦沢町の素敵なところは、こんなボクの乱暴な話にもちゃんと耳を傾けてくれるところだ。
するとちょうどいい話が、農協さんから舞い込んできた。
築半世紀ほどのコメ倉庫。現役引退からもう何年も経つ。自分たちの希望である「でっかい空間」は、見事にクリアしているが、すぐに使える状態ではない。半世紀の劣化はハンパない。外壁も剥がれ落ちた箇所が多く、屋根の隙間は小鳥たちの出入り口で、春にはツバメが倉庫内を飛び交っている。得体の知れない重機やベルトコンベアらしきものが、埃と油まみれで静かに眠っている。何年も滞った空気はカビ臭い。冬は極寒で、夏は温室状態なのは想像がつく。インフラは電気のみで、水道すらない。つまりはトイレもない。過酷な条件を並べたら後を尽きないが、つまりは、、、
こんな倉庫に夢が描けるかどうかって話だ。
何度も社内で議論を交わした。色々考えても仕方がないので、まずは手に入れちゃおうぜ!と、満場一致で落ち着いた。
GO!BO!SO!初の社屋は、どでかいコメ倉庫。
2019年3月。睦沢町に本社を移転した。
さぁ、まずは重機撤去。
そして大掃除。役場の方に農協の方、ご近所さんの全面協力。
5月。漸く倉庫の全貌が見えた。
便利な世の中にいながら、時代錯誤のような環境に身を置いた時、アレがない...コレがあれば...と、ないものねだりが尽きなくなる。現状を受け入れ、現状を楽しむということは、知恵とアイデアが必要で、何事もポジティブに考えられる肝っ玉が大事だ。
とんでもない倉庫を勢いで手中におさめたように言ってはいるが、案外そうでもない。倉庫は古くとも、それを取り巻く環境は格別だからだ。
倉庫裏に目をやれば、睦沢町の象徴ともいえるのどかなパノラマが広がる。一面の田んぼの向こうには瑞沢川が流れ、川沿いには梅の木が並ぶ。ここだけの話、夏のはじまりには蛍が飛び交う。こんな環境、そうそうない。
水もトイレもなく、夏と冬の過酷な環境を想像しつつも、創造性と可能性がこの倉庫を取り巻く環境にはある。それにこの倉庫には、この土地の歴史が刻まれている。だって、米どころの米倉庫なんだから。
ご近所の方々とも色々話した。酒も交わした。昔話もいっぱい聞けた。
でも一番は、こんな勢いだけのGO!BO!SO!に、地元の人たちが少なからず未来を見据えてくれたことだ。
「ずっと閉まったままだった倉庫が、生き返ったんだよ。これからが楽しみだよ。」
そんなご近所さんの言葉が、今でも心に染みたままだ。
新参者だけど、何かお役に立てるような気がした。
こうしてコメ倉庫の新たな物語りがはじまった。
8月。はじめての夏をむかえた。
やっぱり倉庫はとてつもなく暑い。
GO!BO!SO!のTシャツは、いつも汗びっしょりだ...