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スループット会計【後編】

こんにちは、ゴール・システム・コンサルティングです。当社CCSO(チーフ・カスタマーサクセス・オフィサー)渡辺薫による連載をお届けします。前回から、Theorem 1(※後述)の環境において、全体最適を実現するための2つの技術(スループット会計と、5 Focusing Steps)についてお話しています。今回は、スループット会計についての後編です。

TOC(制約理論)や、教育のためのTOC(TOCfE)を学んだり活用している方や、「全体最適」という言葉をよく使う方の参考になれば幸いです!

渡辺薫のこれまでのコラムは、以下のマガジンからご覧いただけます。

また、「スループット会計とは何か?」の基本的な説明については、前編をご覧ください。

【スループット会計による意思決定】

私たちは、より大きな売上・利益を目指して日常的に以下のような意思決定を行っています。

✔ この製品注文を受注する/しない
✔ この製品の販売を継続する/中止する
✔ 製品ごとの目標販売数量の比率の変更
✔ 製品売価の変更 

財務会計によって、こうした意思決定による結果(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書がどう変わるか)を試算しようとすると、(本来であれば)その都度「原価計算の方式(製造費用の個別製品への配賦ルール)の見直し」が必要になります。しかしながら、意思決定の都度、その影響を「原価計算の方式」に織り込むことは現実的ではありません。(現実的には実行不可能といっても良いと思われます)

そのため、財務会計による意思決定のための試算には「リアリティに応じて適切に修正されていない(すなわち正確ではない可能性のある)前提」が含まれる可能性がある、ということになります。

一方、スループット会計では、これらの意思決定によって、生産システム(会社)で、これから「どれだけお金(キャッシュ)を増やすことができるか」をシンプルに試算することが可能になります。また売れ残りの影響(儲かっているはずなのに、キャッシュが少なく、製品在庫がたくさんあるので「ボーナスが現物支給される」みたいなこと)を心配する必要もありません。

これが、全体最適に向けた意思決定に向けてキャッシュフロー経営が有効であることの本質的な理由です。管理会計の手法として「スループット会計」を採用することが、全体の業績向上(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書による評価)に寄与するのかに関する詳細の説明についても、いずれ書いていきたいと思います……だいぶ先のことになりそうです。

【生産システムにおける最適化とスループット会計】 

TOC(スループット会計)の観点からは、生産システムの目的は「利益(=T-OE)」の創造と表現されることになります。ただし、今回対象としている最適化の「環境」「範囲」「選択肢」では、OE(業務費用)は固定費(最適化の行為によっては変動しないもの)とみなすことができるので、目的を「スループットの創造」として考えて良いということになります。すなわち、今回対象としている生産マネジメントの最適化の目的は「より多くのスループットの創造」ということになります。

スループットは、その生産システムが創造した価値のことであり、「円」「ドル」「ユーロ」等の単位で表現される数字です。ですから目的が達成されたかどうかは、数字で明確に評価することができます。
また、スループットは財務会計における損益計算書の中の「売上高」や「経常利益」と同様、「対象期間に、どれだけのスループットを創造したか」を評価する指標です。

生産マネジメントの最適化の目標に関しては、上述のような「より多くのスループットの創造」という表現と「創造するスループットの最大化」という2種類の表現が可能です。前者の場合「従来」と「最適化後」のスループットを比較することで目的を達成できたかどうかが判断できますが、後者を採用すると「最適化によって実現したスループットが、この生産システムにとって本当に最大の値なのか」という非常に困難な問いに答える必要が出てきます。学者にとっては、この問いも重要かもしれませんが、実務家にとっては「より多くのスループットを創造」するという工夫を積み重ねる継続的改善の方が自然な姿と思われますので、本稿では目的の表現として「より多くのスループットの創造」を採用することとします。

「スループット会計」は単独で使用しても、企業のゴールの達成に寄与します。TOCの他の手法を実践する上でも、スループット会計と組み合わせることで「より実践を容易にする」「より高い効果を得る」ことが可能になります。有名な「PQカンパニー」演習は、「スループット会計」と「5 Focusing Steps」の組み合わせで最適な製品の販売ポートフォリオを求めるものです。

次回以降、まず今回対象とする生産システムの最適化の範囲における「5 Focusing Steps」の具体的な使い方について説明していきます。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
次回からの、「5 Focusing Steps」についてのnoteも、どうぞお楽しみに!

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