TOC - 思考プロセスとダイナミックフローマネジメント
こんにちは、ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所です。2021年7月より私たちの会社のCCSO(チーフ・カスタマーサクセス・オフィサー)に就任した渡辺薫による連載コラムの第11回をお届けします。
毎週火曜日更新です。
これまでの連載は、以下のマガジンからご覧いただけます。
私たちはビジネスの現場において様々な「プロセス」を活用しています。最も身近なものとしては「事務プロセス」「製造プロセス」があると思います。この二つのプロセスには以下の共通点があります。
✔ 繰り返し実行されるオペレーションのプロセスである。
✔ あらかじめ設定された目的(ゴール)を達成するためのプロセスである。
✔ 定められたプロセスを定められた通りに実行すれば目的(ゴール)が達成できる。
✔ プロセスの本番実行前に、プロセスを構成する全てのタスクが十分に実行可能であるように「教育・訓練(人的リソース)、開発・設定・調整(設備・機器等のリソース)」が完了している。
一方、これらとは全く異なる性格を持つプロセスがあります。「起業のプロセス」「新事業創生プロセス」「イノベーションのプロセス」等です。これらのプロセスには、以下の共通点があります。
✔ プロジェクトである。
✔ プロセスの中で目的(ゴール)を段階的に明確化していく。
✔ 定められたプロセスを定められた通りに実行しても目的(ゴール)が達成できるとは限らない
✔ プロセスの本番着手の際に、プロセスを構成する全てのタスクの実行が可能なリソースが確保されているとは限らない。
こうしたプロセスは「こうすれば上手く行くマニュアル」としてではなく、「失敗を最小限にする」「効率的に進める」ためのガイドブックとして意図されています。TOCの思考プロセス(Jonahプロセス)も、ここに該当すると思います。容易に理解できるように、こうしたプロセスは、目的の達成のためには「必要だけれども十分ではない(Necessary but not Sufficient)」ということです。別な言いかたをすると、TOCの思考プロセスの習熟によって論理的に考える能力が飛躍的に向上したからといって、それだけで課題解決がうまく行くわけではない、と考えるべきだということです。
ここで、私が日立製作所において「情報システムの超上流工程」「業務改題解決」「新事業創生」などにTOCを活用してきた際に、目的達成のために「論理的に考える」ことを補完するために有効だった方法・考え方を3つ紹介したいと思います。この3つによって「十分(Sufficient)になる」と主張するつもりはありません。私の10年以上におよぶ実践経験において、相当程度有効であったので紹介したい、ということです。
一つ目は「デザインシンキング」です。デザインシンキングは「手段の議論に走りやすいエンジニアに、常に目的を優先して考えてもらうこと」、「よりクリエィティブな発想をすること」等に有効です。さらに目標・目的をクリアに理解・共有すること」にとどまらず、深い共感とともに、ベクトルを合わせて取り組むチーム作りにも貢献します。
二つ目は「モデリング(見える化の手法)」です。必要に応じて複数のモデリング手法を使い分けます。私が主に活用しているのは、PRePモデル(成果物視点&構造化視点)とエクスペリエンステーブル(人間視点&時系列視点)の2種類です。これらは業務やプロダクトに関する現在のリアリティと、将来像を、クリアに表現し共有するための強力なツールになります。多くの場合、個人が認識している業務は「自分に直接関係のある範囲」にとどまっており、チームの全員が業務全体のつながりや目的を十分に把握していることは多くはありません。PRePモデルを使って現状の業務を分析することで、改革の出発点である「現状認識」を明確にすることができます。
PRePモデル:
エクスペリエンステーブル:
三つ目は、既存の業務知識や事例情報の共有です。チームのメンバーはそれぞれ異なる業務知識や事例情報を有しています。しかしながら、同じ会社のメンバーの場合「相手も同じ知識をもっているはず」という前提で話をしてしまい、話しが十分には伝わらないこともあり得ます。またメンバーのもっている知識を総合することで、考えるための材料を増やすこともできます。ということで早期にメンバーが有している「業務知識や事例情報」を共有することも、効率的にプロセスを進めるうえで、きわめて有効です。
ここまでの内容は、ダイナミックフローマネジメントの中の「アクティベーションフロー」「ナレッジフロー」の一側面でもあります。組織の中で、こうした手法やナレッジを習得し活用していくための必要なマネジメントについては、今後の連載の中でも詳しく書いていきたいと思います。
最後に……信じにくいかもしれませんが、TOCのロジカルシンキングとデザインシンキングの組み合わせは最高です。実際に日立製作所では、この組み合わせで大きな成果を上げています。ぜひ、お試しください!
※7月28日(水)15時より、GSC創立20周年記念対談企画(&渡辺薫CCSO就任記念)「TOC - 改めてフローについて考えてみる」と題しまして、当記事の執筆者である渡辺薫と、GSC創業者&CEOの村上悟が対談を行います。ぜひお気軽にご参加ください。参加申込は、以下のページから承っております(参加無料・オンライン開催)。
渡辺 薫 (わたなべ かおる)
ゴール・システム・コンサルティング株式会社
チーフ・カスタマーサクセス・オフィサー(CCSO)
プロフィール
ハイテク企業でR&D、経営企画、マーケティング等を経験したのち、90年代のデジタルマーケティングの黎明期にはエバンジェリスト&コンサルタントとして活動。その後、外資系ITサービス企業等でITサービスのマーケティング、コンサルティング等に従事し、2010年日立製作所に入社。超上流工程のコンサルティング手法の開発と指導にあたるとともに、日立グループ内でのTOC活用に尽力。2018年からは日立製作所社会イノベーション事業推進本部エグゼクティブSIBストラテジストとして、日立グループのデジタルトランスフォーメーションの戦略策定・実行のサポートと人財育成に注力し2021年3月に退任。
TOCICO認定Jonah(思考プロセス)
TOCICIOからThe TOC Company of the Year を受賞(2018年)
TOCICO理事(2018年~)
日本TOC推進協議会顧問(2018年から2021まで理事長を務める)
(TOCICO=Theory of Constraints International Certificate Organization)
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