「コンサルティング」という職業を「科学的」という観点から考える
こんにちは、ゴールシステムコンサルティングの村上悟です。
今回はnote連載の２回目として、私が考える「コンサルティング」という仕事を「科学的」という観点からお話してみたいと思います。
我が社は２００２年の創業以来２０年あまりにわたってコンサルティング・サービスを提供してきました。その基本的な考えは「Total Solution Provider Applying Theory of Constraints」というものです。すなわちお客様の経営課題を解決するトータルソリューションを提供するコンサルティングファームというのが私たちの立ち位置です。ですからＴＯＣという考え方や手法はひとつの「ツール」であり、決してTOCを布教しているわけではありません。
そして、我々にとってのコンサルティング・サービスは、クライアントに対して中立公正な第三者であり、クライアントが意思決定の主体となり最終的な実行可否の判断をクライアントに委ねる事を基本としています。その上で、
１．自分たちが推奨する手法について、反証可能性を常に担保するために論理的かつ客観的な説明を行う。（アカウンタビリティー）
２．ある手法の適用に際して、クライアントサイドにどのような条件が具備されるか明確にし、現状の適合度を正しく判断し勧告する。（コンサルタンシー）
というのが我が社のファームとしての基本倫理です。
もしもこの二つがどちらも欠落しているとするならば、コンサルタント業としては決定的に失格なのだと思います。この状態が長く続くと、誤解したコンサルタントが沢山生まれ、さらに失敗するという、負の連鎖が起こっても仕方がないと感じます。上記の「基本倫理」はそういった事への自戒の念も含めて生まれたものです。
私たちコンサルタントはお客様に改革や改善の成果をお届けするために、様々な手法や考え方（コンセプト）を用いコンサルティング業務を進めています。そういった考え方（コンセプト）や手法には、実は必ず「原点」や「参照先」があります。もちろんＴＯＣも例外ではなく、ゴールドラット博士もその論文「巨人の肩の上に立って」で、自ら開発したＴＯＣが大野耐一らが築き上げたＴＰＳ（トヨタ生産方式）の方法論を徹底的に研究したものであること明らかにしています。手法や考え方（コンセプト）は総じて、洋の東西を問わず、行ったり来たりを繰り返しています。例えばデミング博士が日本に教えた、ＳＱＣ（統計的品質管理）は、日本でＴＱＣ（統合的品質管理）に進化し、その後アメリカに里帰りして、シックスシグマへと進化を遂げました。大野耐一らのトヨタ生産方式は、ＴＯＣのみならずリーン生産方式やリーン開発として今でも進化を続けています。
手法や考え方（コンセプト）は、基本となる原理原則を継承しつつも、環境変化に対応してより使いやすく進化してゆくものなのです。実は２００１年に出版した拙著「ＴＯＣ入門(日本能率協会マネジメントセンター)」はＴＯＣの技術体系を、ＭＲＰや個別原価計算、直接原価計算など、ゴールドラット博士がＴＯＣを開発するにあたって参考とした手法を紐解きながらＴＯＣを解説しています。
そして、２０２０年に出版した「不確実な時代に勝ち残るものづくりの強化書（クロスメディア・パブリッシング）」では、フローマネジメント発展の歴史を検証しながら、今日を生きる私たちがその歴史をどう受け継ぐべきかを検討し、実践してゆくべき考え方を私の経験の中から具体的な方法論として「ダイナミック・フロー・マネジメント」という手法体系として紹介しています。
自分たちが信ずる手法を、環境変化に合わせて進化させることはコンサルタント自身の生命線であり、私たちはその進化を止めてはなりません。しかし、あくまで「手法」は1つの形であり、企業や組織や個人が自らの目的やゴールを達成するための手段であるというスタンスを貫きたいと私は思うのです。
その意味で、我々がやってはいけないことは、ゴールドラット博士がその生涯をかけて追求したことと、実現できたことをごちゃごちゃに論じる事ではないでしょうか。ＴＯＣを科学たらしめんとした志は引き継ぐべきであっても、そういった姿勢こそがＴＯＣを巡る現状を科学と程遠い状態に貶めていると思うのです。
次回はそういった意味で、我々コンサルタントのスタンスとして重要な、「疑うこと」と「知ること」そして、「信じること」を考えてみたいと思います。
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