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100年変わらないものづくりの基本
前回までは流れ(フロー)を重視するパラダイムを築き上げた巨人の歴史を紹介してきました。今週はこのパラダイムを実現するための仕事の進め方について考えてみましょう。ものづくりの業務を管理統制してゆく仕組み。これらは学問の領域でいえば、オペレーション・コントロール(生産統制業務)と言われる分野になります。
※これまでの連載は、以下の村上マガジンからご覧いただけます。
一般的にオペレーション・コントロールとは工業製品を作り上げるために、作業をする「人」や、加工をする「機械設備」を組み合わせて、「部品」を生産したり調達したりして、実際に生産する作業の計画を立て、実行して製品を作り上げるための管理技術の総称です。分業によるものづくりを行うためには、オペレーション・コントロールの技術が不可欠であり、こういった技術を学ぶために、欧米のほとんどの大学のMBAプログラムでは、オペレーション・コントロールを含めた、オペレーション・マネジメント が必修科目となっています。
このオペレーション・マネジメントといわれる学問領域の大きな目的は「普通の人々が力を合わせて大きな仕事を成し遂げること」すなわち、私たちがこれまで磨き上げてきた、分業そのものの技術です。普通の人間が1人でできる事というのは限られています。しかし、他の人と力を合わせれば、素晴らしい仕事ができる。それがオペレーション・マネジメントの存在意義です。
ものづくりの現場のみならず、コンビニのバックヤードや、サービス業の店頭、金融機関の店舗など、仕事の形態や内容は違っても、オペレーションの優劣で結果は大きく左右される、こう考えると、オペレーション・マネジメントとは「仕事の仕組みを作る技術」そのもの、だから欧米の大学では積極的にオペレーション・マネジメントを学んでいるのです。しかし残念ながら、日本では「オペレーション・マネジメント」の定義すらあいまいで、専門家も少ないのが現状です。
このようなオペレーションマネジメントが必要とされる背景には、工場に限らず、分業を前提とした業務は「従属関係に縛られた」巨大なネットワーク型の特性がある事に起因します。この従属関係は物理的な作業などの順序性のみならず原材料調達や設計業務など企業のありとあらゆる業務と繋がっています。
現実の業務では、工程や作業の順序依存性(従属性)と作業時間が様々な要因によってばらつくという変動性の両方が組み合わされると、これらの遅れは、いつどのように発生するかは正確には予測できず、工場の生産システムに大きな混乱をもたらします。実際、現場のマネージャーが日常的に行なっている管理の実態は、日常的に発生する混乱をどうにか鎮めようとしているということなのです。
実はこういったネットワーク型の業務は遅れだけが伝播して、早期完了はほとんど伝播しないという厄介な特性を持っています。この現象はネットワークが直線的な場合でも、複数の事象が合流する場合でも起こります。どうしてそうなるのでしょうか?
複数工程が合流する場合を考えてみましょう。例えばABCという3つの工程が並行し、D工程で最終組立作業が行なわれる場合、A工程は予定より3時間早く終わり、Bは2時間遅くなり、Cは予定通りだったとすると、ABC全部が終わらないと着手できないD工程は、A工程が早く終了したことは何ら関係なく、B工程の2時間の遅れだけが伝わります。
いくつかの作業が縦につながっている直線的な場合はどうでしょうか?
工程が予定より時間がかかったとすれば、当然遅れは次の工程に伝播します。問題は、予定より早く終了した場合です。早く終了すれば、次の工程には早く渡すことが出来ます。しかし問題は次の工程がそのまま着手できるかなのです。
例えばA-D工程がそれぞれぎりぎりの負荷で作業をしていたとしましょう。確率分布は遅れ進みそれぞれ50%です。最初のA-B工程を考えてみると、A工程が予定より早く完了しB工程に渡せる確率は50%ですが、B工程がその仕事に速くかかれる確率は50%です。こう考えると、B工程完了時点で予定より進んでいる可能性は確率的に考えれば50%×50%=25%という事になります。さらにC工程まで進むと進みが伝播した確率は12.5%まで低下しD工程ではさらに6.25%まで低下します。
ここまで説明してきたように、こういった分業を前提とした業務ネットワークは、様々な揺らぎの結果として生じる「早期完了」は伝播せず、「遅れ」はほとんどそのまま伝播するという厄介な特性をもっているのです。
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