制約を科学する④第2部-2(TOCスループット計算で“儲かる”製品を判断する)
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CPM(Constraint Per Minute:ボトルネックの分あたり利益)を使った利益最大化計画
売価の見積もりにおける、従来の考え方とTOCの考え方
ここからはCPM値(※)を使った利益最大化のための戦略について考えていきましょう。従来から売価の見積計算に使われる加工工数は、全ての作業工程を通過するのにかかった作業時間の合計に、単位時間あたりの人件費(いわゆるチャージ)を掛けた数字を使う事が一般的に行われています。つまり総加工時間が長ければ、算定される売価は高くなり、短ければ売価は安くなるという事になります。
これに対してTOCでは制約(ネック工程)に着目し、スループットを決定している工程はボトルネック工程であると考えます。従って設定する売価も制約(ボトルネック)の時間を基準として設定すべきであると考えるわけです。この二つの考え方を対比して分析する事によって、従来パラダイムでの売価設定とTOCパラダイムでの売価設定を上手に活用しながら、ライバルに対して競争優位を確立してゆく事ができます。
従来の考え方とTOCの考え方を比較する「スループット分析」
実際の分析では、下表のようなフォーマットを用意してそれぞれの現状値を記入します。
この表の中を詳しく見ながら理解していきましょう。まずF列が「総加工時間の分あたり利益」、従来の考え方です。そして、G列がCPM「ボトルネック工程の分あたり利益」です。こちらがTOCスループット計算の考え方です。この2つを比較して、売価の見直しとプロダクトミックス、つまり、どの製品を幾つずつ作ると利益が最大化するかのシミュレーションをするのです。
この表の実際の数値を見てみましょう。総加工時間を基準にしているF列を見比べると、製品Cが一番「分あたり利益」が大きいです。一方、ボトルネック工程を基準にしているG列を見比べると、一番「分あたり利益」が大きいのは製品Bになっています。G列を基準にすると、F列で見比べた時には一番「分あたり利益」が大きかった製品Cは3番目になっているので、判断が大きく変わってくることになります。
図表で「スループット分析」を一目瞭然にする
さらにわかりやすくするために、「総加工時間での分当たり利益」と「ボトルネックの時間での分あたり利益(CPM)」の分布をプロットし、下図のような散布図にまとめて分析を行います。横軸が総加工時間の分あたり利益を示しています。そして、縦軸がボトルネック工程の分あたり利益(CPM値)を示しています。
このグラフを右側から順番に見ていくとわかるように、従来の総加工時間ベースで考えれば、儲かる製品はC→B→D→Aの順番です。そして、グラフを上から順番に見るTOCのボトルネック工程ベースで考えれば、儲かる製品は、B→A→C→Dの順番になります。
CPM値に注目することで、ボトルネック工程の生産能力が限られているようであれば、まずは一番儲かる製品BをH列の販売数量、つまり、需要がある分3,000個作る。まだ作れるのだったら次に選ぶのは製品Aの2,514個…という風に、シンプルに意思決定していくことができるのです。
このようにCPM値でのスループット分析は、各工程の加工時間を順々に積み上げていく従来の財務会計の考え方とは大きく異なりますので、各製品の収益性認識が変わってしまうこともあります。すなわち、これまで儲かっていると思っていた製品が実は儲かっていなかった、あるいはその逆のパターンのケースも大いに発生しうるということになります。
このスループット分析では、制約工程は「Constraints=利益を決定している鍵」と考え、最大活用する方法を視覚的に「見える化」して分析します。技術的にも投資的にも利益を決定しているコントロール・ポイントとしてふさわしい工程を徹底活用し、スループット最大化の検討を行います。
CPMを使ったポートフォリオ分析での戦略的意思決定
このグラフは下図のようにポートフォリオ的に活用すると、さらに良く理解する事ができます。
ポートフォリオ分析と合わせて、先ほどのスループット分析も再掲しますので、見比べながら理解してみてください。
このように分析を行うことによって、製造業が本当の意味で販売しているものは時間であり、特に制約工程での収益性比較が重要であるということが理解できるのです。
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